セッションはSCEAの担当者による北米の現状報告から始まりました。それによると
・インディデベロッパーは価格と発売日を自由に設定できる
・ライセンス費用は無料
・審査はオンライン上で完結
・開発キットのローン対応
・PlayStation Blogでのダイレクトマーケティング
・ミドルウェアの無償提供
・デジタル配信でESRBレーティングを無料で取得でき、EU圏に向けてPEGIレーティングも申請できる
が実施中です。これに伴い、すでに14タイトルが配信済みで、100以上のタイトルが開発中です。
あわせて同社はプレスリリースで「GameMaker:Studio」(YoYo Games)、「MonoGame」(SCE)の無償提供を発表しました。あわせて「Unity」(ユニティ・テクノロジーズ)のPS4向けEarly Access Versionも、2014年4月より提供が開始されます。SCEワールドワイド・スタジオが開発した「Authoring Tools Framework」も、GitHubのウェブサイト上で無料提供されます。このフレームワークはグラフィック描画ツールの「PhyreEngine」などと組み合わせて使用することも可能です。文字通り、一昔前からすれば夢のような状況が到来したのです。
もっとも、プレスリリースの内容を鵜呑みにすると痛い目に遭うというのは、多くのゲーム開発者が学んだ「真理」でしょう。そこで後半では
・アメリカ西部開拓時代を舞台にしたアクションゲーム『Secret Ponchos』(Switchblade Monkeys Entertainment)
・日本のアニメ風演出が楽しいシューティング『宇宙戦士ガラク』(17-BIT)
・2Dドットビジュアルの対戦型アクションゲーム『TowerFall』(Sickhead Games)
の面々が壇上に上がり、実際にこれらのミドルウェアを用いてどうだったか、教訓をシェアしました。
『Secret Ponchos』の開発ではPhyreEngineが使用されました。PhyreEngineはオープンソースで提供されているため、ライティング用ミドルウェアの「Enlighten」や、自社で追加実装したレンダリング機能などと組み合わせるのに都合が良かったとのこと。ソースコードをC#からC++にコンバートするのもスムーズに行えました。アニメーションツールで作り直しが発生したものもありましたが、総じて負荷は少なかったとのこと。なによりSCEAのサポートチームが非常に親切で、驚いたそうです。
『宇宙戦士ガラク』はUnity上で開発されていましたが、当時はまだUnity for PS4はクロースドβ版でした。そのため隔週でバージョンアップしていき、そのたびに新機能が実装されるような状況だったそうです。フレームレートも当初は最大15FPSで、シェーダーもまともに動きませんでしたが、最終的に最大60FPS、最低でも20FPSが確保されるまでになりました。AOT(Ahead-of-Time)コンパイルやシェーダーで苦労した点もありましたが、SCEAのサポートも手伝って完成にこぎつけたとのこと。
最後に『TowerFall』のPS4向け移植の事例について紹介されました。同作はもともとXNA上で、C#で開発されたタイトルで、すでにOuyaとPC向けにリリース済み。これをPS4向けに移植する上で、MonoEngineが使用されました。本ツールはもともと、.NETの資産をクロスプラットフォームで動かすためのオープンソースプロジェクトで、PS4対応でSCEの協力を得たとのこと。移植にはプログラマー2人で8週間が費やされました。移植作業でバグは少なく、パフォーマンスも良好だったそうです。
これらの事例でも国内のインディにとっては、『TowerFall』の事例が参考になりそうです。PC向けのゲーム開発でXNAが多く使用されてきたため、MonoEngineをSCEがサポートすることで、移植の敷居が下がるからです。SCEジャパンアジアの担当者によると、日本語サポートなども精力的に進めていきたいとのことで、期待が持てそうです。
なお、Q&Aではアメリカのインディは北米だけでなく、ワールドワイドに向けた配信もクリック一つでできるそうです(実際に『Secret Ponchos』は国内のPS公式サイトでも配信予定となっています)。もっとも、日本ではアメリカほど環境が整備されているとはいえません。PlayStationMobileとの関係なども気になるところです。しかしPS4でもPS Vitaでも、作りたいハードで自由に作れるようになるのが望ましいはず。SCEの展開に期待しましょう。
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