本勉強会には、開発者や研究者とともにSCEのスタッフが参加、インディーゲームの新たなプラットフォームとして期待される「PlayStation Mobileの現状と可能性」について報告がなされました。SCEからは登壇者は3名。第1事業部ソフトウェア開発部の西野元章氏は、PlayStation Mobile(以下PSM)に関する技術的なヒントについて説明しました。
元コナミの西野氏は『メタルギアソリッド3』、『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』などを手がけ、コミックマーケットでもサークル参加を4回果たすなど、個人でもゲーム開発を行なっています。西野氏は会場の参加者にもコミックマーケットの参加経験を質問するなど、個人開発者の目線に立った技術紹介を行いました。
最初に解説されたポイントは、PSMで開発する際の「鍵」の作成や管理についてです。PSMでは、パブリッシャーライセンス購入時に発行される「パブリッシャー鍵」とアプリケーションのIDに紐づく「アプリ鍵」が存在します。これらを統合開発環境であるPSM Studioからコマンドを実行するだけで、作成できるようにSDKを更新しました。また鍵が有効かどうかの状態をひと目でわかるように、鍵作成と管理の利便性も向上しました。
次に、開発者からのよくある質問である「パフォーマンスが思ったほど良くない」という点に対して解説がなされました。まずは、Stopwatchクラスを利用してどこの処理に手間取っているのかボトルネックを探し、重い処理がCPU処理なのか描画処理なのかを見極めることが重要だと、西野氏は説明しました。また、実機でのパフォーマンス正確に試すには、アプリをReleaseモードでビルドすること、PSM StudioからではなくDevAssistantメニューからアプリを立ち上げることが必要。さらにパフォーマンス向上のために、「最適化を有効にする」のオプションをチェックすることも有効です。
描画の最適化としては、DrawArray、SetTexture、SetVerticesの呼び出し回数を減らす、テクスチャ一体化ツールを利用するなどといった具体的なノウハウが紹介されました。また、現時点では圧縮テクスチャフォーマットが対応していないため、Vitaではテクスチャローディングに時間がかかる点が説明されました。ローディングを軽減するためには、プロパティの「署名と暗号化」のチェックを外し、平文の形でデータを読み込むことも必要だそうです。また、メモリ使用設定については、現在設定できるメモリ量は96MB、SystemMemoryからダンプでログを追跡してメモリ使用量を把握するといったヒントが提示されました。
またアプリ内課金を実装する場合は、セーブデータを改変されないように暗号化する必要があります。セーブデータの暗号化の具体的な方法は様々ありますが、ユーザーアカウントごとのユニークな値を振り当てるなどの方法が説明されました。
現在もSDKの更新は続いており、スレッドが正しく動作しない、Android端末のサスペンドへの対応といった点は現在、修正中とのこと。あらたに実装する機能としては、描画を最適化して大量のスプライトを手軽に表示できるGameEngin2Dといった高機能なライブラリが紹介されました。開発者からの要望が多い2Dゲーム制作を素早く簡単に行えるようなライブラリを開発すると共に、手軽にアプリ内課金を実装できるようにテンプレートを検討しているそうです。
さらにPlayStationのネットワークをいかしたランキング機能、C#以外のプラグラミング言語のサポート、Maya以外の3Dツールのサポートなども検討しているそうです。またUnityで開発を行なっている方は、そのままコンテンツをPSMのストアで販売可能だそうです。西野氏は、今後とも同人・インディー開発者を積極的に支援し、「最もゲームが作りやすいSDKを目指す」ためにPSMの開発に尽力すると意気込みを語り、報告は終了しました。
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