『洞窟物語』の天谷大輔氏に続き、日本のインディーゲーム開発者でGDCスピーカー第二号となった『ラ・ムラーナ』の楢村匠氏。アクションアドベンチャーゲーム『ラ・ムラーナ』を世に送り出したNIGOROのリーダーです。GDC最終日の3月29日に、講演の感想やGDCの印象、ゲーム開発者としての生き方などについて、幅広く話を伺いました。講演レポート記事とあわせてご高覧ください。―――アメリカははじめてですか? ―――アメリカの印象は? ―――日本でいうと渋谷みたいな規模ですから。でもホントは車があった方がいいんですよね。 ―――講演も非常に盛況だったようですね。 ―――手描きのプレゼンスライドが良い味を出していました。 ―――GDC2012で講演された稲船敬二さん も、同じようなスタイルでしたよ。 ―――ただ、そういうのが温かみがあっていいんじゃないでしょうか。 http://nyamyam.com/ )の東江さんと、台湾で開催されたゲームカンファレンス「2012 台北遊戲App 開發者論壇」で講演をご一緒したんです。その時、プレゼン資料に文字やデータが多いとみんなそっちに注目しちゃうから、何か印象的な一言かイメージをどかんと置く方がいいとアドバイスを受けまして。だったら手描きで用意すれば楽ができるし、早いしって。言いたいことは、ちゃんと伝わったと思います。―――講演終了後にサインをねだられたり、しませんでしたか? ―――みんな高い出展料を払って、世界中から集まって来ていますよね。パッションやエネルギーがすごくて、みんな熱気がすごいというか。 ―――自然と交流が生まれた。 http://www.playism.jp/ )に相談してみたら? なんて教えて上げたりして。―――PC向けインディゲームの配信サイトですね。良い感じの二人三脚です。 ―――なまじ空気を読もうとすると失敗します。 ―――エキスポのインディーコーナーは見られましたか? ―――毎年、すごく混雑するんですよ。受賞した開発者と直接、話ができるので。みんな、あやかりたいのかな? ―――IGFとゲームディベロッパーズチョイスアワード(GDCA)はどうでしたか? ―――まったくそうですね。まさにAll or Nothingの世界ですし、そこがアメリカ人の気質に合うんでしょうね。IGFでアワードを取ると、パブリッシャーがつくなどして、商業的な成功がある程度保証されるんです。だから翌年のGDCAで、デビュースタジオ部門をとることが多いんですよ。 ―――自分はGDC取材が今年で11回目ですが、当時のIGF受賞作品はダサいシェアウェアという感じで、ホントにしょぼかったんです。それが継続される中で、ぐぐっとクオリティが向上しました。最近ではそれが一周して、チップチューン的なドット絵のゲームが流行の兆しを見せています。世界のインディーズのスピードの速さを感じます。 ―――来年IGFにチャレンジしませんか? ―――実際、みんな必死に賞を取りに来ています。GDCAで大旋風を起こした『風ノ旅ビト』の受賞も感動的でしたが、IGFは文字通り生活がかかっていますからね。ちなみに、GDCのインディペンデントゲームサミットは受講されましたか? ―――2年前にIGFの学生部門を受賞した、一人称視点のパズルアドベンチャー『FRACT』(http://fractgame.com/)の作者による講演がありました。もともとウェブデザイナー出身で、大学でゲーム開発を学び、卒業制作が受賞したんです。 ―――講演ではそれから2年間、どのように製品版を作ったか、苦心談が語られました。予定がずるずる遅れる中で、赤ちゃんが生まれたりして、大変だったようです。最後に質問で「で、どうやって2年間、生計を立てていたの?」と聞かれて「それまでの貯金と、親への借金」と応えていました。ちなみに『FRACT』は、ようやくSteamのGreenLight(ユーザーコミュニティが投稿されたゲームを見て、実際にSteamでプレイしたいゲームを選出する仕組み。開発者は開発途中のゲームを投稿して、ユーザーの反応を見ながら改良できる)にアップロードされたところです。 ―――ホントにそうですね。その中の数少ない成功例がGDC PLAYなどに出展していて、その中でさらに一握りのアワードがとれる人がいるわけです。残酷な話ですが、ある意味でそれはフェアな競争です。 ―――会場で「インディーズとして、ゲームを作って生活していくぞ」という思いをさらに強くされたわけですね。そもそも、いつその思いを自覚されましたか? ―――なかなか大変だった。 ―――なはは。 ―――日本でも状況は変わっていきますか? ―――純粋に趣味の延長で作っていた頃と、生活を前提に作るようになった時とで、何かクリエイティブに変化はありましたか? ―――インディーズは一見すると自由なようでいて、実は自由じゃない部分が多い。そこはフリーランスと同じですね。 ―――なるほど。 ―――耳が痛いゲーム開発者も多そうです。 ―――大前提として、何か尖っているところが必要ですよね。 ―――それをわかりやすい言葉で、プロデュースといいます。 ―――その意味でも、今回はいい刺激になりましたね。 ―――今回は何かインスピレーションはありましたか? ―――なるほど。 ―――クリエイターって、そういったいろんな刺激を受けて、創造性の糧にされていくのかなあ、なんて勝手に思ったりしています。 ―――ちなみに毎年来ていると、だんだん知り合いが増えてきますね。 ―――英語の方はどうですか? せっかくGDCで仲良くなっても、英語のメールを書くのが嫌がって、自然消滅という人も少なくありません。 ―――自分の乏しい経験でいうと、英語が上手い人よりも、作っているゲームがおもしろい人の方が尊敬されます。 ―――来年もぜひGDCに来ないと。というのも1年に1回くらいは対面で会わないと、次第にコミュニティは縮小していくんです。GDC以外にも世界にはさまざまなインディーズのイベントがあります。 ―――ちなみに『ラ・ムラーナ』では、日本のファンと比べて、海外のファンの多さはどれくらいですか? ―――そういう市場は大手メーカーからは見えない、サイレント市場ですよね。でも、そうしたレトロゲームファンや、チップチューンゲームが好きな人たちって確実にいます。そういった潜在的な市場を探し出すアンテナ役というか、レーダーというか、そういうのがもしかしたらインディーズの役割なのかな、なんて感じました。 ―――では、最後に『ラ・ムラーナ』のファンに一言お願いします。 ―――ありがとうございました。これからも楽しいゲーム、ブラッディなゲームを期待しています。 
 
《小野憲史》 
 
  
  
 
  
    
    
      この記事が気に入ったらフォローしよう
      
      インサイドの最新の話題をお届けします