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「PSYCHO-PASS サイコパス」本広克行総監督インタビュー前編 ― 「踊る大捜査線」の監督が挑む

新たな大型アニメシリーズの放送が始まる。数字に支配された未来を舞台にする『PSYCHO-PASS サイコパス』だ。多くの人を驚かせたのは大ヒット作『踊る大捜査線』シリーズの監督本広克行が総監督を務めることでないだろうか。

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『PSYCHO-PASS サイコパス』
本広克行 総監督インタビュー 前編

『踊る大捜査線』の監督が挑む 
SF指数マックスの大型アニメシリーズ


10月11日、フジテレビ“ノイタミナ”にて、新たな大型アニメシリーズの放送が始まる。数字に支配された未来を舞台にする『PSYCHO-PASS サイコパス』だ。
早くから注目されてきたシリーズだが、その詳細は8月以降に徐々に明かされてきた。そして9月13日には、遂に制作スタッフの全貌が明かされた。監督に劇場版『BLOOD-C The Last Dark』の塩谷直義、脚本に『魔法少女まどか☆マギカ』の虚淵玄(ニトロプラス)、すでに発表とされているキャラクター原案の天野明、アニメ制作のプロダクション I.Gとビッグネームが並ぶ。
しかし、何より多くの人を驚かせたのは大ヒット作『踊る大捜査線』シリーズの監督本広克行が総監督を務めることでないだろうか。実写のヒットメーカーが挑む『PSYCHO-PASS サイコパス』は、これまでのアニメと何が違うのか?本広克行総監督のインタビューから追ってみた。
[インタビュー取材・構成:数土直志]


『PSYCHO-PASS サイコパス』
2012年10月よりフジテレビ“ノイタミナ”にて毎週木曜放送予定
ほか各局でも放送予定
http://psycho-pass.com/
http://facebook.com/psychopasstv


■「踊る大捜査線」の本広克行が、なぜ、いまアニメなのか?

―― アニメ!アニメ!(以下AA)
まず、多くの人が最初に考えることだと思います。なぜ本広克行監督が、いまあえてアニメなのでしょうか?

―― 本広克行 総監督(以下本広) 
もともとアニメ好きなんです。学生時代にビデオ屋さんでバイトしていた時にものすごい本数、毎日5、6本の作品を観ていました。すると観るのに疲れてくるのですが、行き着いた結果が「アニメは観やすい」です。
その時にいろいろなアニメを観て、刷り込まれたのかもしれません。実写ドラマの監督になり映画を撮る時に、アニメのテイストやカット割り、話の流れなんかが演出のなかに自然と入っていると思います。
『踊る大捜査線』では、『機動警察パトレイバー』や、『新世紀エヴァンゲリオン』のテイストが 随所に出ています。
僕の1作目の映画『7月7日、晴れ』は、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』にどこか似ているんですよ。次の『友子の場合』も『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』を意識しています。アニメにはすごく影響を受けていると思います。

―― AA
今回の作品企画が生まれたきっかけは、どういったものだったのですか?

―― 本広 
3年ぐらい前にプロダクションI.Gの和田プロデューサーと現代版『パトレイバー』をアニメーションで作ろうと意気投合し、そこからまずブレストをしました。
どういうことが出来るかを話し、そこに塩谷直義監督が入ってくださって、少しずつアニメになって行きました。そのあとに虚淵(玄)さんが参加することでコンセプトが固まっていきました。

―― AA
ご自身のなかで、自分の好きだったアニメを作れるといった喜びはあるのですか?

―― 本広 
今、自分はアニメを作っているんだな、という喜びがあります。脚本を作ったり、キャラクターのイメージを作ったり、何より塩谷監督と演出論を戦わせるのが楽しいです。

―― AA
3年間一緒に作ってきて、いま世の中に出てくるという感じでしょうか?

―― 本広 
そうですね。ただ2年ぐらいはほとんど企画ブレストです。
試行錯誤もありながら、その後、虚淵さんが入ってくれて、“PSYCHO-PASS”というコンセプトが固まりました。数字に支配された世の中で、そのなかに生きる近未来の警察官たちの話です。
コンセプトが固まってからはシノプシスを作って、全体の構成を作ってと、どんどん進んでいきました。


■ SF指数は高い 数字に支配されている世界での葛藤

AA
作品にあたって、当初のテーマやコンセプトがあると思います。それはどういったものでしょうか?

―― 本広 
もともとは、パトレイバーの進化型です。けれどもそれは全部忘れて、もっとSF指数を上げました。
数字に全て支配されている世界、でもそれがストレスではなくて、むしろユートピアとなっている。そんな社会の警察ものです。
まだ罪を犯していないけど、犯す可能性のある人たちを潜在的な犯人として数値だけで判断して捕まえる。その矛盾に刑事たちが悩むのが面白いなと思います。

―― AA
数値の役割がかなり大きい?

―― 本広
いまの時代も数字にかなり支配されていますよね。ファミレスに行ってもカロリー値が全部書いてあって、「やっぱりカロリーを高くないものにしよう」とその数値でメニューを変えたりします。
体重計に乗ると内脂肪率が出てきます。よくわからない数字だけど、やばいらしいとなったら朝ウォーキングしようとなります。それは確実に数字に支配されていて、それがもっと先に進んでいくのではないか。
まずその世界自体が面白そうだし、葛藤が生まれるのは間違いないはずです。

―― AA
いま葛藤というお話だったのですが、管理社会という図式を考えるとそれに対する批判みたいなものが思い浮かびます。けれどもここでは、それは批判ではなくて葛藤なのですか?

―― 本広 
SFでよく描かれてきた管理社会とはだいぶ違います。まず、主人公たちはその世界で生きているんです。そして組織だから、このなかで生きていかなければいけないわけです。
でも新人で入ってきた朱(あかね)という女の子は「おかしいんじゃないか」と言います。新人だからです。
ただ、新人も組織に馴染むと言わなくなってきますよね。それはいまの社会もまったく一緒です。だからすごく等身大でもあるんです。
全体の設定はフィリップ・K・ディックのSF設定に寄せている感じです。絵面とかは『ブレードランナー』を相当意識しています。そこには哲学みたいなものも入ってくるだろうし、相当面白い設定で共感もしやすいと思います。それは実写ではできない部分です。


■ 実写で出来ないこと、アニメで出来ないこと

―― AA
ちょうどお伺いしたかったのですが、いままで実写で撮って来られましたが、実写で出来なかったことで、アニメだから出来るものがあると思います。もうひとつはアニメには出来ないこともあるかもしれません。実写とアニメの違いはどうお考えですか?

―― 本広 
僕は最近それをすごく感じているんです。まずアニメだからで出来るのは、世界観を馴染ませやすいですよね。CGの世界に生身の人間を置くとやはり浮いているんです。
ハリウッド映画では『バイオハザード』がうまくいっています。ただお金がかかりすぎてしまいます。ハリウッド大作の予算がないと、チープになると思っていました。アニメなら、そこは世界を全部作れます。
実写が得意でアニメが不得意なのは役者の表情ですね。微妙な表情は実写だと役者から伝わるんです。アニメーションだと相当うまいアニメーターの人でも苦労されます。

―― AA
今回は警察ものということで多くの人には総監督の代表作である『踊る大捜査線』が頭のなかに浮かぶと思います。
『PSYCHO-PASS サイコパス』は『踊る大捜査線』の進化形態になるのか、それとも全く別なのか、どうでしょうか?

―― 本広 
「パトレイバーの未来形」が企画の出発点でもあるし、結果的に、『踊る大捜査線』の要素が凝縮して入っているところがあります。
「正義とはなんだろう?」といった部分とか『PSYCHO-PASS サイコパス』も群像ものですし。みんながちゃんと役割を持っている。そうした意味で、『踊る大捜査線』が好きな人も入り込みやすいだろうと思います。


後編「新しいオリジナルは、いろんなものがミックスされて生まれる」に続く

『PSYCHO-PASS サイコパス』本広克行 総監督インタビュー前編 『踊る大捜査線』の監督が挑む

《animeanime》
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