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【E3 2012】『バーンアウト』シリーズの血筋が加わった新生『ニードフォースピード』の魅力とは?

長く続いた人気フランチャイズは、どこかでマンネリの危機を迎えます。作り手としてはカンフル剤のつもりで内容を変えたくなるものですが、それが原因でファンを失望させてしまうこともしばしば。

ソニー PS3
長く続いた人気フランチャイズは、どこかでマンネリの危機を迎えます。作り手としてはカンフル剤のつもりで内容を変えたくなるものですが、それが原因でファンを失望させてしまうこともしばしば。シリーズの良さと革新性の折り合いをいかにつけるかは、全ての長寿シリーズが抱えるジレンマでしょう。

EAの人気レースゲーム『ニード・フォー・スピード』も例外ではありません。大陸横断レースという題材に加えて、ドライバーが『ミラーズエッジ』ばりに「自分の足で走る」要素を加えた前作『ザ・ラン』は、トータルの売上本数が前々作『ホット・パースート』の468万本から313万本にダウン(参照:vgchartz.com)。期待を裏切る結果となってしまいました(それだけ売れれば大したモノという考え方もありますが)。

なんて背景があったかは不明ですが、開発スタジオがEA Blackboxから、再びクライテリオンゲームズに戻った本作『モスト ウォンテッド』。同社は美麗なグラフィックと共に、意図的にクラッシュを巻き起こしながら遊ぶ異色レースゲーム『バーンアウト』シリーズで有名です。ゲーム内容もマルチプレイを中心に据えた、実にクライテリオンゲームズらしい作りとなりました。

01:エグゼクティブ・プロデューサーのマッド・ウェブスター氏
02:ゲームのコンセプトは4つで、オープンワールドがキモだ

本作のコンセプトは以下の4つ。▽ルール無用のレース(いつでもどこでも好きなときに、好きなようにレースが始められる)▽オープンワールドでのチェイス(あらゆるコーナーに警察やライバルカーとのアクションが潜んでいる)▽ノンストップなマルチプレイヤー体験(ロビーは存在せず、シームレスにマルチプレイがスタートし、何百ものリワードやイベントを備えたプレイリストがある)▽オートログ機能(シングルだけでなく、マルチプレイでも自動的に行動が記録され、リストが更新されていく)ーーです。

ゲームの目的はただ一つ。街中をぐるぐるとドライブしながら、時にはライバルカーとさまざまなレースを行い、時にはパトカーと追いつ追われつの鬼ごっこを繰り広げながら、スピードポイントを蓄積し、「モスト ウォンテッド」(=指名手配)リストのNo.1に名を連ねること。このヤンチャな部分が実に『ニード・フォー・スピード』って感じです。街中には車のカラーを変更したり、別の車に乗り換えて警察の追求をかわすスペシャル地点も存在し、こうした場所を探索するのも遊びの要素となっています。

ちなみに本シリーズには2005年にEAカナダ開発で、同じく『モスト・ウォンテッド』というサブタイトルのゲームが存在します。この時は主人公やヒロイン、ライバルといったキャラクター性やストーリー性がありました。しかし本作においては、こうした要素は皆無! クライテリオンゲームズでエグゼクティブ・プロデューサーを勤めたマッド・ウェブスター氏曰く「これは俺たちのゲームで、そんなモンは不要なんだ。ただ面白ければ良いんだ」とのことで、いやー、この割り切り感が漢ですね!

■従来の「レース」の概念をぶち破る過激なレースアクション

また『バーンアウト』の直系らしく、いかにも無駄にクラッシュやテイクダウンが発生するんですよ。一方で街灯なんかノーダメージでなぎ倒しながら進んでいけます。抜け道・脇道も多数存在。しかも登場する車は『バーンアウト』と違って、ポルシェ911Sカレラだの、マセラッティMCストラダーレだの、すべて実車ライセンス。道なき道を走り回りながら、超高級スポーツカーをボコボコにできるという、倒錯した遊び方も受け入れてくれる度量の広さは本作ならではでしょう。

03:スピードポイントをためてリストNo.1をめざせ
04:登場する車はすべて実車で、派手にクラッシュする

クロースドブースではメディアを招いてのプレゼンに加えて、8名のマルチプレイ体験が楽しめました。マップ上に表示される目的地に向かって車を走らせ、全員が集結すると自動的にレースが始まる仕組みになっています。

しかも「全員がスタートグリッドに整列して合図と共にスタート」なんてお行儀の良い内容ではなく、始まり方は実にアバウト。肝心のレース内容も▽ハイウェイを猛スピードで疾走してジャンプの飛距離を競う▽対向車を巧みにかわしながら、複数の地点を往復し、最高時速を競う。ちょっとでも気を抜けばクラッシュ▽2チームに分かれての公道レースで、ライバルカーに体当たりして蹴散らすのも自由自在ーーというワイルドなものばかりで、肩の力を抜いて楽しめました。

実は筆者が宿泊しているホテルはLAダウンタウンの北部に位置するチャイナタウンの入り口にありまして、あんまり治安が良くないんですよね。この原稿を書いている最中も、パトカーのサイレンが遠くで鳴り響き、犯罪都市アメリカの一端が感じられます。そんなお国柄だからこそ生まれた本シリーズ。これからも決して四季折々の峠道をストイックに走り込んでタイムを刻んだり、ヨーロピアンなサーキットで最速の称号を手にするなんて方向には、決して進化しないことでしょう(したらビックリですが)。本作もまた、そのDNAを受け継いだ最新作に仕上がっているのではないでしょうか。

『ニードフォースピード モスト ウォンテッド』は、北米でPS3・Xbox360・PC・VITAそしてiOSとAndroid向けに、10月20日に発売です。

05−10:美麗なグラフィックはシリーズの伝統。これがすべてボコボコにできるという、現実には決してあり得ない内容がゲームならではだ。
《小野憲史》
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