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【グリーカンファレンス2012】田中良和社長が語る10億ユーザーへの戦略とグローバル統一プラットフォームの具体策

■世界10億人のユーザー獲得に向けて語られたビジョン

ゲームビジネス 開発
■世界10億人のユーザー獲得に向けて語られたビジョン

「グリー プラットフォームカンファレンス2012」が3月23日に開催され、「グリープラットフォームの国際化」をテーマに、さまざまな議論が展開されました。オープニングスピーチではグリーの田中良和社長が登壇し、同社の▽グローバル化▽国内パートナーシップ▽利用環境改善――の3点について説明。約1000名が収容可能なメイン会場は9割方が埋まり、同社の勢いを強く印象づけました。

グリー代表取締役社長 田中良和氏


田中社長は冒頭で「過去半年から1年間で、最大の変化はスマートフォンの世界的な普及だ」と切り出しました。特にブラジルなど新興国市場での普及がめざましく、2012年は年間6億台の販売が見込まれているそうです。またチップの性能ベースでみると、2013年に家庭用ゲーム機のスペックをスマートフォンが追い抜くという報告もあり、まさにスマートフォンが世界統一端末に成長している現状が示されました。

この地球規模のスマホの成長を取り込むために、田中社長はグローバル戦略の要となる、新しい「グリー プラットフォーム」の提供を4月-6月期に開始すると、改めて言明しました。これは従来のグリーと、昨年4月に買収された「OpenFeint」を統一した、スマホ・ソーシャル向けのワンプラットフォームのこと。同社では、これによりソーシャルゲームのシームレスな全世界配信が可能になるとしています。

新興国を中心にスマホ市場が拡大アメリカスタジオで2作をリリースApp Storeで4位に入る大ヒット


それに伴い全世界8箇所で海外法人を展開しており、うち5箇所でゲーム開発を進行中。3月16日には米国スタジオから『Zombie Jombie』『Alien Family』の2タイトルもリリースされました。このうち前者はゾンビをコレクションして戦うカードバトル形式のソーシャルゲームで、アメリカのAppStoreで4位にランクインを達成。「国産ゲームの開発ノウハウが海外でも通用できた」と胸を張りました。今後は国産開発のタイトルも順次ローンチしていく予定とのことです。

また端末のスペック向上に伴い、家庭用ゲーム機レベルに迫る品質のネイティブアプリゲームを開発中であることも示されました。リアル系レースゲーム『GREEレース(仮)』と、ペット系ゲーム『ともだち☆ドッグス』です。このほか出版社とのタイアップにおいても、エンターブレインから出版されている『ファミ通GREE』が6月末より月刊化されると紹介。「ソーシャルゲームの開発者を一般読者に紹介するなど、若い人が憧れるような産業にしていきたい」と語りました。

レベルファイブと提携を発表E3にもブース出展を行う利用環境向上について言及


このほか▽グローバル決済体制の確立のためにPaypalと提携▽昨年度のTGSに続いて、今年度は新たにE3にブース出展▽レベルファイブをはじめ、国内の有力ゲームメーカーとのパートナーシップ提携ーーなど、田中社長はさまざまな施策を矢継ぎ早に紹介。これらはいずれも「世界10億人が使うサービスを作る」ためです。「今までコンソール機が入り込めなかったり、価格の問題などで遊ぶのを諦めていたりした人たちにも、スマートフォンでゲームを提供していきたい」と説明が続きます。

最後に田中社長は国内の利用環境向上に対しても、▽利用環境向上委員会の設置▽未成年ユーザーへの利用制限▽利用状況通知サービス▽コンテンツチェック体制の強化▽RMTへの対策▽プラットフォーム事業者6社による連絡協議会の設置ーーという6項目を挙げて、真剣かつ迅速に取り組んでいく姿勢を示しました。その上で、中にはパートナー企業にも費用が発生する事柄があるかもしれないが、業界の健全な発展のために幅広い協力をお願いしたいと呼びかけました。

■SDKの提供やアプリ料率の値下げなどを発表

続いて壇上に登壇したのは、同社の執行役員・マーケティング事業本部長の小竹讃久氏です。小竹氏は「プラットフォーム統一に関する戦略・施策のご案内」と題して講演し、グローバル展開に向けた新たなSDKの配布時期や、ビジネススキームの変更などについて説明しました。

グリー・マーケティング事業本部長の小竹讃久氏


近年積極的に世界規模のM&Aを繰り返し、いまや全世界で1.9億人にまで成長したグリー プラットフォーム。しかし小竹氏はこの数字を10億人にまで拡大するために、今まで以上に国内外のパートナー企業との連携が必要だと語ります。

その上でソーシャルゲームならではの特徴として「先行者利益が得られやすいビジネス」であることを説明。本カンファレンスの前日に開催された「グリー プラットフォームアワード2011」でも、受賞作品には初期からサービスを開始されたタイトルが目立つと分析しました。そして本格的な海外展開を迎えるこの時期だからこそ、一社でも多くのパートナー企業にゲームを開発して欲しいと呼びかけました。

南米と欧州でスマホが拡大SDKを順次投入していく料率の値下げも発表


そのために必要な施策がプラットフォームホルダーとしてのグローバルサポートです。まず小竹氏は海外向けネイティブアプリと、国内外向けウェブビューアプリ用SDKのサポートを4-6月期に開始すると説明し、下記SDKを上げました。なお今回は時期が明確にされませんでしたが、Unity、AirのAndroid向けSDKも順次投入予定とのことです。

・グリープラットフォーム Android SDK 3.0
・グリープラットフォーム iOS SDK 3.0
・ウェブビューApp SDK for Android SDK 3.0
・ウェブビューApp SDK for iOS SDK 3.0
・グリープラットフォーム iOS for Unity
・グリープラットフォーム iOS for Air

このほかネイティブのアプリ料率も、これまでiOSは60.9%、Androidは59.6%と両者でで差がありましたが、グローバル共通でネイティブアプリは59.5%に統一されること。これまで日本限定だった配信先が世界153カ国に拡大すること。そして現在は配信前に行われているアプリの事前審査が、今後は原則として事後審査に変更されることが発表されました。他に個人認証についても「簡易ユーザー認証」「フリーメール認証」「SMS/IVR認証」と、手軽さと堅牢性で3段階の方式が整備される方針だと示しました。

3レベルの認証を構築予定海外展開の支援を進めていく特に2点で会場に広く協力を要請


またソーシャルゲームの海外展開を行う上で、国内勢にとって大きな壁となるのがプロモーションです。この点については米アプリ紹介メディア最大手のFreeAppADay.comを運営するICS Media Inc.,とグローバルパートナーシップ契約を締結し、独占紹介枠を確保したと語りました。今後、両社は戦略パートナーとして市場拡大を目指すとしています。

これ以外にもグリーでは「ローカライズ」「ホスティング」「デバッグ」「ユーザーサポート」の各分野で、開発会社の海外展開を支援していく姿勢を表明しました。ホスティングではマイクロソフトやAmazon、ユーザーサポートではISAOなど、国内外の有力企業が名を連ねています。これらの施策は中小ディベロッパーにとって海外展開の鍵を握る大きな要素だけに、注目していきたいところです。

最後に小竹氏は利用環境向上に向けた取り組みについて再度取り上げました。特に「コンテンツのチェック体制」と「RMT対策」については早急に力を入れていきたいと抱負を語り、改めて会場に協力を呼びかけました。
《小野憲史》
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