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「いつの間にか狭くなってきたから、もっと広げたい」CEDEC2012の所信表明、そしてIGDA日本

ゲーム業界で情報共有をいかに進めて、業界全体のレベルアップをはかるか・・・。この命題に1999年から取り組んでいるのがCEDEC(コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス)です。今年は運営委員長の新任をはじめ、新しい節目の年となりました。

その他 全般
CEDEC運営委員会の面々(左から委員長の斎藤直宏氏、副委員長の庄司卓氏、鶴谷武親氏)
  • CEDEC運営委員会の面々(左から委員長の斎藤直宏氏、副委員長の庄司卓氏、鶴谷武親氏)
  • 委員長の斎藤直宏氏(バンダイナムコゲームス)
  • 副委員長の庄司卓氏(セガ)
  • 副委員長の鶴谷武親氏(ポリゴンマジック)
  • IGDA日本の小野憲史(筆者)
  • ずらりと並んだ過去のCEDECプログラム1
  • ずらりと並んだ過去のCEDECプログラム2
  • ずらりと並んだ過去のCEDECプログラム3
ゲーム業界で情報共有をいかに進めて、業界全体のレベルアップをはかるか・・・。この命題に1999年から取り組んでいるのがCEDEC(コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス)です。今年は運営委員長の新任をはじめ、新しい節目の年となりました。

一方でゲーム開発者コミュニティの育成を通して、業界発展に寄与している団体がIGDA(国際ゲーム開発者協会)です。その日本支部の代表に昨秋から新任したのが、筆者こと小野憲史。IGDA日本はこれまでも、さまざまな形でCEDECに協力してきましたが、改めてどのような協力関係が築けるのか。3月19日の公募締め切りを前に、さまざまな角度で話を伺いました。

■三者三様ならぬ、四者四様の自己紹介

―――よろしくお願いします。IGDA日本代表でもある筆者がインタビュー形式で対談するという変則的な内容ですが、ざっくばらんに進めていきたいと思います。それではまず、新委員長から自己紹介からお願いします。

斎藤:はい、バンダイナムコゲームスの斎藤直宏です。昨年まで吉岡直人氏の下で運営委員会の副委員長を務めていて、今年から委員長に新任しました。CEDECが終わると、50歳になります。もともとJCGLというCGプロダクションに入社して、CGシステムの開発をしていました。JCGLは約3年で解散したのですが、旧ナムコと取引があった関係で、多くの仲間と共に、自分もナムコに移籍したんです。当時ナムコはポリゴナイザーという3Dゲーム基板を開発していて、3DCGができる人材を欲していたと思います。僕も最初はゲームではなく、CG映像を作る部署にいました。

―――最初にゲームの仕事をされたのはいつからですか?

斎藤:「国際花と緑の博覧会」(1990年)で出展された『ギャラクシアン3』の背景CG映像制作からです。その後も映像制作でゲームに関わっていましたが、次第に社内で映像プロジェクトが縮小するにつれて、ゲーム用のモデリングシステム開発をしたり、『鉄拳3』を家庭用に移植するためにモーション圧縮技術の開発をしたりと、ゲームプロジェクトへの技術支援を行ってきました。そのためゲームのプロジェクトに直接所属経験はありません。

―――CEDECにはいつから参加されているのですか?

斎藤:2002年くらいから受講者として参加していますね。東大でデジタルゲーム学会(Digra)の国際大会が開催された2007年にはパネルディスカッションに参加しました。運営委員会に入ったのが2008年からですね。

―――同じ質問を副委員長のお二方にもお願いします。

庄司:セガの庄司卓です。1987年に入社して、今年の3月末でセガ一筋25年になります。斎藤さんの一歳下で、今年で49歳になります。バブル前の大量入社の時代にプログラマーとして入社して、コンシューマの方に配属となり、主にセガ・マーク3、マスターシステムでゲームを作っていました。当時はZ80というCPU向けにアセンブラでコードを書いていて、ちょうど今のソーシャルゲームと同じように、数人のチームで、数ヶ月でゲームを作っていましたね。担当はキャラクター系のアクションゲームが多くて、メガドライブの『アイラブミッキーマウス ふしぎのお城大冒険』・・・。

―――名作アクションゲームですね!

庄司:いや、それをベースにマスターシステムで開発された海外向けタイトル『Castle of Illusion Starring Mickey Mouse』に携わりました。他にゲームギアで『Land of Illusion Starring Mickey Mouse』(日本語版:『ミッキーマウスの魔法のクリスタル』)を作ったり、欧州ではミッキーマウス並みに有名な、フランスの人気コミック「アステリックス」を用いたキャラクターゲーム『Asterix』を作ったり。海外ではメガドライブの影に隠れていましたが、マスターシステムも非常に良く売れていましたので。自分の主戦場も海外市場でした。

―――現在はどのようなセクションですか?

庄司:7年目でテクニカルサポートの側に回りまして、最初はセガサターン、次にドリームキャストで技術情報やSDKのリリース管理などを行いました。セガがプラットフォーム事業を終了した後も、バックエンドで技術支援を行っています。CEDECには2008年から運営委員として関わっています。

―――では最後にお願いします。

鶴谷:同じく副委員長の鶴谷武親です。ポリゴンマジックで経営者を務めています。46歳で、三人の中ではちょっとだけ若いですね。お二方が勤める企業とは違って、弊社はコンシューマやアーケードのディベロッパーとなります。もっとも最近ではスマートフォンやソーシャルゲームのパブリッシングも行っていますが。28歳で起業して、そこから経営畑を歩んできました。経営や人材育成などが専門になりますね。

―――御社が関わられたタイトルで一押しのモノは何ですか?

鶴谷:ちょっと古いんですが『とんでもクライシス』(PS1/徳間書店)です。カジュアルなリズムゲームの先駆けで、今遊んでも面白いと思います。CEDECの運営には2011年から携わりまして、庄司さんの下でビジネス&マネジメントのセッションプロデューサーを務めました。

―――庄司さん、鶴谷さんの仕事の切り分けは何ですか?

庄司:自分はセッションプログラムの責任者ですね。公募審査や時間割などです。

鶴谷:私はスポンサーセッションや広報などの対外的な分野になります。

なるほど、ありがとうございました。

斎藤:ちなみに、小野さんは自己紹介をされないんですか?

―――自分ですか? そうですね。今年41歳で、1994年に大学卒業後、マイクロマガジン社という出版社に入り、「ゲーム批評」という専門誌の編集者になりました。2000年に退社後はフリーランスでゲーム業界を中心に取材・執筆活動をしています。IGDA日本に直接関係するようになったきっかけは、2003年に前代表の新清士に誘われて、GDCに行ったことですね。そこで、こうしたカンファレンスが日本でも必要だ。ついてはCEDECを盛り上げていこう、という流れになりました。

斎藤:講師としても参加されていますね。

―――はい、IGDA日本がCEDECにラウンドテーブルの企画協力を行うようになって、僕もモデレータを2004年から行わせていただくようになりました。2009年にはグローカリゼーション部会の共同世話人となり、2011年の10月から代表に新任しています。もともと雑誌にもコミュニティ的な要素があるので、形は変わってもゲーム開発者コミュニティの育成と運営に関わり続けているという感じでしょうか。

■CEDECは企業的でIGDA日本は草の根的?

斎藤:一番大きく違うのは、IGDAは通年で活動されていますが、CEDECは年に1回ということですね。

―――そうですね。CEDECは年に1回の「お祭り」であり、日本最大のゲームカンファレンスです。それを中核に据えたときに、IGDA日本や他のゲーム開発者コミュニティが、どのように位置づけられていくのか。そんな話はこれまでもよく議論していました。

斎藤:まさにCEDECは「ハレの舞台」かもしれませんが、みなさんが普段活動している仕事の話や、技術の交流ができればいいと思っています。そこに参加することで、さまざまな刺激を受けたり、次のチャレンジに対して背中を押してくれる存在になったらいいなと。逆にIGDAはより日常に近いところで活動をしていますよね。だから個々のスキルを上げていこうとか、情報を共有しようとか、そうした目的意識はすごく似ていると思います。

―――一方でCEDECは業界団体のCESAが行っていることもあって、企業色が強いイメージがありますね。IGDAは開発者個人のコミュニティで、より草の根的です。同じ目的に向かって、両方からアプローチしている感じがあります。

斎藤:CESAが主催して、お金を出しているのは事実ですが、私は、あまりそうした意識はないんですよ。企業主催ではなく、開発者が主となるカンファレンスです。CEDECを作っているのは、スピーカーであり、参加者であるという認識なんです。

庄司:自分が運営委員会に入ったときは、横浜パシフィコでの開催が決まって、CEDECが急拡大している時期だったので、運営委員会には大手もいれば中小企業もいて、みな意識の高い人ばかりでしたから、それほど企業色が濃いとは思わなかったですね。ただ、自分も含めて、みんな企業を代表して来ているんですよ。そのため自分たちが何か行動をおこすことで、企業の側を動かせるという意識が、少なくとも自分にはあります。そのため自分もセガの社内で、公募を出せといつもハッパをかけているんですよ。またCESAの理事会を兼務している大手企業の経営陣も、CEDECの強化で一致しています。

―――なるほど、それは心強いですね。

庄司:ただ、そうなると大手企業の方が社員数が多いので、公募案件も採択数も、結果的に大手企業の割合が増えるんです。そのため、外から見ると大手企業中心の、企業色が強いカンファレンスに見えるかもしれません。もっとも、それは本意ではないんですよ。実際に「公募を出してください」と号令がかかったことで、はじめて公募に出して良かったのかと、安心した開発者も少なくなかったですし。

―――鶴谷さんは外部と内部でギャップはありましたか?

鶴谷:それほどなかったですね。ただ自分の立場としては、バランスや俯瞰性を常に意識しています。開発者は何かをミクロで掘り下げて良いと思うんです。でも、どこかに日本のゲーム産業とは、といったマクロな視点も必要だと思います。そのためセッションも、技術的なものからビジネス&マネジメントなどまで、幅広いジャンルに渡っています。この多様性がCEDECの持つ特徴の一つかなあと思っています。逆にIGDAさんなどは、より現場に近い、ミクロな視点の議論が多いのではないでしょうか。

―――運営委員会の平均年齢はどれくらいですか?

庄司:今年はメンバーが一部入れ替わって、平均年齢が下がったんですよ。ただ、それでも30代後半でしょうか。去年までは確実に40歳以上でしたが。

―――僕より少し下の世代ということは、いわゆる「ファミッ子」世代ですね。ファミコンに夢中になった子供たちが成長して、開発者になって、ついにCEDECで運営の中核を担うまでになってきた。つまりゲーム会社の中間管理職が中心になって運営しているカンファレンスというわけですね。

斎藤:まあ、そういう側面は確かにあると思います。現場のこともわかるし、経営者の話もわかるようになってきた。いろんな意味で幅の広いカンファレンスですね。

■CEDECなのにデジタルでなくてもいい?
《小野憲史》
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