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クリエイターの負荷を軽くする「自動生成」技術、将来の方向性は? 〜IGDA日本ゲームAI連続セミナー

IGDA日本は、12月15日、ゲームAI連続セミナーの最終回「次世代ゲームにおける自動生成技術」を開催しました。ゲームAIといえば通常、NPCをどう動かすかの問題で、今回の「自動生成(プロシージャル)」はAIと違う分野と思われそうですが、自動生成は「作り手の方法論をモデル化して実装すること。自然の摂理やアーティストの感性をモデル化すること」(IGDA日本 長久勝氏)であり、NPCを動かすAIではありませんが、これもまた非常に重要なAIといえます。

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クリエイターの負荷を軽くする「自動生成」技術、将来の方向性は? 〜IGDA日本ゲームAI連続セミナー
  • クリエイターの負荷を軽くする「自動生成」技術、将来の方向性は? 〜IGDA日本ゲームAI連続セミナー
IGDA日本は、12月15日、ゲームAI連続セミナーの最終回「次世代ゲームにおける自動生成技術」を開催しました。ゲームAIといえば通常、NPCをどう動かすかの問題で、今回の「自動生成(プロシージャル)」はAIと違う分野と思われそうですが、自動生成は「作り手の方法論をモデル化して実装すること。自然の摂理やアーティストの感性をモデル化すること」(IGDA日本 長久勝氏)であり、NPCを動かすAIではありませんが、これもまた非常に重要なAIといえます。

プロシージャルコンテンツは、アルゴリズムにもとづいて自動的に作成されるもので、テクスチャ画像や3Dモデル(木や草、キャラクタなど)、ダンジョンや都市といったマップ類、キャラクタアニメーション、会話・シナリオにいたるまでさまざまなものが含まれます。



講師の三宅陽一郎氏(フロムソフトウェア)は、ダンジョンやグラフィック、AI、会話・シナリオなどさまざまなゲーム構成要素へのプロシージャル技術の適用例を示しながら、プロシージャルにとって大切なこととして、

 ・多様性(→コンテンツにバリエーションを与える)
 ・意外性(→毎回違うというだけでなく、おっと思わせる)
 ・クオリティ(→自動生成では企画者が練り込んだものよりは劣る。しかしモデル/アルゴリズム向上で近いものを目指すことはできる)

の3点を挙げました。

ゲームにおけるプロシージャルとしては、『エイジオブエンパイア3』での地形生成や、SpeedTreeのように木の3Dモデルを自動生成するソリューションとして提供されているものなどさまざまありますが、プロシージャルなコンテンツとしてもっともゲーマーになじみがあるのは「不思議のダンジョン」系ゲームで広く知られるようになった「自動生成ダンジョン」でしょう。もともとは1981年に登場した『rogue(ローグ)』という名のUNIX用ゲームが備えていたシステムで、最近ではオンラインRPGのインスタンスダンジョンなどにも仕組みが採用されています。

また、ウィル・ライトが開発中の『Spore(スポア)』はコンテンツのほとんどをユーザのインタラクションから生成したプロシージャルコンテンツとして展開することで注目を集めています。『Spore』では、ユーザはゲーム中に登場する生物やその生息圏となる惑星などさまざまなものを編集・作成してオンラインで他のユーザとやりとりできますが、プロシージャルコンテンツのためデータがきわめて小さく、スムーズにやりとりできるとみられています。

プロシージャルコンテンツは、少ないデータ、アルゴリズム、多くのCPU時間を使用してコンテンツを生成する技術で、固定コンテンツ(事前に作成した多くのデータを、ロード時間をかけて読み込む)とはまったく逆の特徴があります。最近のゲームでは(おもにグラフィック面で)大量のコンテンツを作成することが求められてきましたが、『Spore』や『Crysis』のようにプロシージャルによる解決をはかるケースも出てきています。2006年のIndependent Games Festivalで大賞をとった『DARWINIA(ダーウィニア)』はプログラマ2人+グラフィックデザイナー0名という体制で、プロシージャルグラフィックのみでゲームが作られました。これは極端なケースかもしれませんが、グラフィックに関してはプロシージャルの採用はかなり現実的な選択肢になっているといえるでしょう。

三宅氏は講演で「これまでゲームにおけるリアリティ追求の流れの中で、3Dやネットワーク、物理、AIなどが導入されてきた。そこに生成・変化・消滅を加えるのがプロシージャルで、ゲーム世界を裏側から動かす力になる」と述べ、プロシージャルの可能性を示しました。季節の変化や天候の変化がさまざまな見た目や挙動の変化をもたらすような、そういったダイナミックな要素を含むゲームを作ろうとしたときには、プロシージャル技術の導入が不可欠なのかもしれません。
《伊藤雅俊》
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