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【ゲームニュース一週間】見せる権利と見たくない権利

皆既日食の観測が盛り上がった今週は、様々な規制に関する記事が話題を集めました。

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皆既日食の観測が盛り上がった今週は、様々な規制に関する記事が話題を集めました。

海外ゲームサイトGamesradarは任天堂ハードにおける規制を特集しました。

米国の任天堂ハードでは移植やローカライズに当たって様々な変更が加えられています。
『Duke Nukem 3D』ではストリップクラブがバーガー屋に。『スーパーパンチアウト!!』のウォッカ・ドランケンスキーはソーダ・ポピンスキーに。『ゼルダの伝説 時のオカリナ』では盾のデザインがイスラム教圏を考慮して変更。また『ファイナルファイト』ではニューハーフの敵キャラが男性になり、血しぶきが削除され、「OH! MY GOD」というセリフが「OH! MY CAR」になり、「BAR」の看板が「CLUB」になるなどしています。この特集に寄せられたコメントの多くは変更を嘆くものとなっています。

シカゴ交通局(CTA)はバスや電車にM(17歳以上)やAO(成人)指定されたゲームの広告を出すことを禁止する規則を制定しましたが、ゲーム業界団体ESA(Entertainment Software Association)は表現の自由の侵害であるとして告訴しています。ESAは表現の自由を尊重せよといいますが、シカゴ交通局は現時点ではコメントを発表していません。

これらのケースからは、見たいものを見る権利・見せたいものを見せる権利、そして見たくないものを見ない権利がゲームの周囲に存在することが伺えます。

細かく変更を加える任天堂は見たくない権利を重視。
変更前のゲームを見たいと希望するゲーマーは見る権利を重視。
電車やバスに高レーティングゲームの広告を出したいESAは見せる権利を重視といったところでしょうか。

これらの権利はどれが尊重されるべきなのでしょうか。見せる権利・見る権利が暴走すれば、見たくない権利とぶつかることになります。見たくない権利が優先されれば、見る権利・見せる権利が損なわれます。

極論すればこんな感じでしょうか。見せる権利・見る権利のみが優先されるなら、ゲーム内でどんな行きすぎた表現があろうと歯止めをきかせられなくなる可能性があります。見たくない権利に重きを置くのであれば、ゲームの表現は限りなく制約され続けることになるでしょう(いずれも、あくまで極論です)。

宗教的な面に大らかで暴力表現に厳しい日本ゲーム界、過激な暴力表現が見られ宗教的な面に配慮する海外ゲーム界、見せる権利・見る権利と見たくない権利は場所によっても変化します。それ故に問題は複雑です。全てのゲームがフィットネスや学習ものになればこうした問題は無くなるでしょうか。恐らく、答えは否でしょう。作品が増えていくことで、フィットネスや学習ものの中でも過激な表現が出だすことでしょう。表現に関する議論をする必要がないゲーム界というのは、完全に停滞したゲーム界なのかも知れません。どの権利の擁護者も、少しずつ譲っていくしかないのかも知れませんし、いずれの権利の暴走も、過度の萎縮も起こるべきではないでしょう。そう考えると、現在の状況というのはまだ健全なのかも知れません。議論が起こるということは、野放しでもなく萎縮もしていないということなのですから。
《水口真》
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