8月7日に発売された「マーベル」×ソニー・インタラクティブエンタテインメント×アークシステムワークスの対戦格闘ゲーム『MARVEL Tōkon: Fighting Souls』。
「マーベル」の人気キャラクターが入り混じって戦う夢のようなゲームについて、このたび開発者であるアークシステムワークス・プロデューサーの山中丈嗣氏と、同じくアークシステムワークス・ゲームディレクター兼リードバトルデザイナーの関根一利氏にインタビューする機会をいただきました。
4vs4にこだわった理由や、お気に入りのキャラクターについてなど、幅広いお話を伺っています。

4vs4に込めた「チームアップ」へのこだわり
――4vs4の格闘ゲームは、業界でもかなり珍しい部類かと思います。1vs1や3vs3も検討されたとのことですが、最終的に4vs4でなければ実現できないと考えた遊びとは何だったのでしょうか?
関根氏:まず4vs4にした理由で言うと、やはり「マーベル」という世界観を表現するにあたって、今まで以上に「チームアップ」という要素を強めて表現したかったというのがあります。
また、組み合わせがかなり多くなるので、チームごとの戦術を奥深く掘り下げられるようになりました。やり込めばやり込むほど、可変性のあるシステムが発展していくので、ここが本作の最も独特な部分になるのではないかと思っています。

――かなり要素の多い格ゲーのように感じられますが、初心者はまずどこから手を付けて、どんな練習をしたら良いですか?
関根氏:起動するとまずスタートアップバトルがありまして、その後にキャラクターレッスンの前半や、エピソードモードなどのCPU戦を遊んでもらうのがいいのかなと思います。
本作には、クイックスキルやリンクアタックがあります。ワンボタンで出せる必殺技や、ボタンを連打することで出せる連続技も用意しています。
まず入り口として、技の出し方やモーション、演出などを、だいたいすべて見られるように設計しているので、最初はその辺りの使い方を身につけてもらい、もっと深く遊びたくなったときに、キャラクターレッスン後半の課題に挑戦してもらえれば嬉しいです。

より詳しく知りたくなったときには「バトルガイド」というモードもあります。そこでは、システムの細かな解説を入れています。
ただ、まず一番言いたいのは、「1キャラクターの練習だけでも十分に成立する」ということです。まずは1人のキャラクターを遊んでください。複数人を同時に練習しなくてもいいというのが、一番大事なところだと思っています。

――攻略動画や情報を発信していく予定はありますか?
山中氏:現時点で具体的に申し上げられることはありませんが、そういった要望が多いようであれば、公式でやってもいいのかなと。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)さんと協議しながら進めていければと思います。
関根氏:現状では、内容は英語なのですが、YouTube上で全キャラクター分の「キャラクターガイド」を展開しています。必殺技や通常技の性能を、だいたい一覧できるようになっているので、そちらを見ていただけると、雰囲気は概ね分かるかと思います。
――群雄割拠の対戦型ゲーム業界において、本作がヒットする秘策はどこにあると思いますか?
山中氏:秘密の策というものはありません。「マーベル」という巨大なIPがあり、我々は……少し手前味噌ではありますが、格闘ゲームの開発をずっと続けてきた会社で、国際的にも評価をいただいています。
そこに、SIEさんのPlayStationというブランドと販売力が合わさり、それぞれが持ち味をしっかりと発揮していくことで、最大の結果につながるだろうと考えていました。単純に、それぞれのよいところをしっかりと出していこうということです。
――『Marvel's Spider-Man』の開発会社でもあるInsomniac Gamesからも開発中の本作についてフィードバックを受けたとのことですが、実際に本作へ反映された意見はありますか?
山中氏:Insomniac Gamesさんには、かなり初期の頃にプレイしていただきました。まだキャラクターもそれほど完成していない時期です。
SIEさんやマーベルさん以外の社外の方で、初めてプレイしていただいたのが、おそらくInsomniac Gamesさんだったかなと。単純にファーストインプレッションをいただくこと自体が、我々にとって非常にうれしかったですし、必要な時期でもありました。
特に覚えているのがマジックのキャラクターデザインについてでして、彼女は欧米の方から見ても非常にウケが良くて。ストームもそうでした。
彼女のデザインについては、我々も自信を持っていましたが、それまで外部の方に見せたことがなかったんです。初めてお見せした際に、「素敵ですね」「格好いい」「クールだ」という反応をいただけたことが、大変嬉しかったですね。「自信が確信に変わる」という言葉がありますが、まさにそれで。自分たちがやってきたことは正しかったと思えました。

フィードバックについては「このキャラクターはこうだよね」という細かなものよりも、ゲームデザイン全体を見て「4vs4だと、このようなゲームになるんですね。すごくワクワクします」といった反応が中心でした。
ほかには、「スパイダーマン」についてもご意見をいただきました。当然ですが、彼らのほうがスパイダーマンについてはずっとお詳しいので。
当時はまだスパイダーマンを作っていませんでしたが、「スパイダーマンを作るなら、アクションのこの部分に、こういった特徴をつけると、よりカッコよくなる」といった議論をさせていただきました。そこで、どうすればもっとクモらしい動きになるのかといったことを質問させていただきました。

関根氏:ほかにも『アストロボット』のTeam ASOBIさんや、『ゴッド・オブ・ウォー』のSanta Monica Studioさんにも遊んでいただきまして。キャラクターデザインや表現方法などについて意見をいただき、参考になるものもありました。
例えば、キャラクターセレクトの際に、各キャラクターの特徴をできるだけ分かりやすくしてほしいという意見などです。一緒にお仕事ができたことがとても楽しかったですね。
デッドプールのパロディネタはどう決めた?
――「デンジャー」のような、意外性のあるキャラクターを今後も追加していきたいと考えていますか? メジャーキャラクターとマニアックなキャラクターの比率は、どのように考えているのでしょうか?
山中氏:比率を具体的に決めているわけではありません。ロスターの20キャラクターに関しては、まず「マーベル」のゲームとして「このキャラクターは出さなければいけないよね」というキャラクターの枠を揃えたうえで、格闘ゲームとしてのバトルスタイルのバリエーションをしっかりと出すことが大事だと考えました。
そのうえで、サプライズ枠も設けています。「このキャラクターはなかなか来ないだろう」と、本当に驚いてもらえるような枠のことですね。それがデンジャーでした。

関根氏:今回のロスターに登場したキャラクターでは、カーネイジもかなりのサプライズだったと思います。メジャーかマニアックかということが、そのままサプライズになるわけではないかなと。基本的には、どのような状況であっても、皆さんにいろいろなサプライズをお届けしたいと考えています。

――Year 1最初の追加キャラクターとして、通常のサイクロップスではなく、いきなり「フェニックス・サイクロップス」を選んだのはなぜでしょうか?
山中氏:X-MENをロスターの中に入れることは、かなり前から決まっていました。サイクロップスも、もともとX-MENのリーダーという設定を持つキャラクターです。人気も知名度も高いので、私も当然、サイクロップスは入れるのだろうと考えていました。
社内には、世界観やキャラクターの設計を考えるスタッフが何人かいます。私も含まれていますが、特に「マーベル」に詳しいスタッフから、X-MENのチームを選定していくなかで「このキャラクターはどうしても外したくない」という意見が出ました。例えばストームやウルヴァリンですね。
一方、サイクロップスについては、「今までゲームに登場していなかったタイプのサイクロップスを出したい」というアイデアがありました。そこでスタッフから「今回はフェニックスのほうでいかないか。やってみたい」という話が出たんです。
当然、フェニックスの状態でサイクロップスを出すとなると、X-MENのリーダーを務めることはできません。ただ、人気のあるキャラクターですし、早めに出したいということで、Year 1の最初のキャラクターをフェニックス・サイクロップスに務めてもらう流れになりました。
――早速、パロディネタ満載のデッドプールがSNSでは盛り上がっています。パロディの選定はどのようにして決めましたか? 『モータルコンバット』のような格ゲーネタから、「宇宙忍者ゴームズ」の悪魔博士を思わせるものまで、ネタが満載でした。
関根氏:これはデッドプールが勝手にやっていることなので……企業秘密ということで(笑)。少しだけお話しますと、今回は「デッドプールが格闘ゲームの雑誌を第四の壁の外から手に入れた」という設定が入っています。
たとえば、「ポリゴンマン(初代PlayStationのマスコットキャラクター。『プレイステーション オールスター・バトルロイヤル』のボス)」については、SIEさんといろいろとお話をして登場してもらいました。そのほかにも、「デッドプールならどういうことをするんだろう?」と考えながら選定していった感じです。
もっと細かいお話は、デッドプールから「ちょっと内緒だよ」と言われていますので、このあたりで……(笑)。

――個人的にお気に入りのキャラクターを教えてください。
山中氏:今回作ってみて、「このキャラクターはうまくいった、成功したな」と思っているのは、ペニー・パーカーです。
今回、「日本から世界へ」というキャッチフレーズで本作を開発しました。我々アークシステムワークスが得意としている、いい意味で日本らしいキャラクターとして、キャラクターデザイン、モーションやしぐさ、ボイスまで作り込んだキャラクターです。
さらに、ペニー・パーカーにはキャラクターソングも入っています。それらを総合して、海外へ売り出していくキャラクターとして、かなり高い完成度のキャラクターにできたと思っています。

関根氏:自分はバトルを担当しているので、基本的には「全部好きです」と言います(笑)。ただ、キャラクター表現で言えば、ヴィランチームやサムライ・アウトライダーズは楽しく作れました。もちろん、前半に作ったキャラクターも楽しかったです。
まっさらな状態から作ったキャラクターもいれば、過去に他作品で登場しているキャラクターもいます。「マーベル」は非常に歴史の長いIPなので、それぞれのキャラクターに対するイメージが、皆さんのなかにある程度できていると思います。
そのキャラクターのアイデンティティーを守りつつ、今までとは違う表現をする。例えば「マグニートー」は、我々なりの表現方法で格好よく作れたので良かったなと。あとはデッドプールは、言わずもがなという感じですね(笑)。

PC版のパフォーマンス問題を受けて……
――PC版についてパフォーマンスやオンラインプレイに関するフィードバックも寄せられています。現時点で、特に優先して改善したいと考えている点を教えてください。
山中氏:まず、PC版に関して、さまざまな問題でご不便、ご心配をおかけしていることは、本当に申し訳なく思っています。パフォーマンスが出ず、60FPSを維持できない。ドロップフレームが発生し、それに起因してロールバックフレームが増大し、対戦中にカクつくといった症状が起きています。
格闘ゲームで対戦を楽しむという部分が十分にできていないことについては、最優先で改善する取り組みを行っています。発売後すぐの8月10日に、1回目の緊急パッチを配信しました。そこで、クリティカルな部分については、CPU負荷を下げることで改善しました。
ただ、最低スペックや推奨スペックぎりぎりの方については、まだ余裕がない状況で……。そこで、8月21日に、2回目の緊急修正パッチを配信しました。CPU負荷という意味では、当社のほかの格闘ゲームタイトルと同等か、それ以上に軽くなっていると我々は認識しています。
一旦、CPU負荷についてはかなり落ち着いたと考えています。SNSなどの状況を見ても、「かなり軽く動くようになった」という声が大部分を占めていますので、ここで一度、状況を注視したいと思っています。もちろん引き続き、問題を指摘する声があれば、分析や調査を行い、改善に取り組んでいくことは、必ずお約束したいです。

――最後に、ユーザーの皆さんへメッセージをお願いします。
関根氏:現在も、次のフェニックス・サイクロップスに向けて、絶賛開発中です。
本作は、これまで実施したベータなどを通して皆さんのフィードバックを集め、それをできる限り我々のビジョンとうまく合わせ、より良いゲームにしようと鋭意開発しています。今後もDiscordなどで、いろいろとフィードバックを送っていただけると、開発の役に立ちます。これからもよろしくお願いします。
山中氏:『MARVEL Tōkon: Fighting Souls』は、我々が目指していた以上に間口が広く、同時にコアな格闘ゲーマーにとっても、奥深く、やりがいのある作品にできたと自負しています。自分の実力や、練習した成果が如実に表れる作りになっています。
繰り返しになりますが、本作は4キャラクターによるチームバトルです。しかし、まずは1キャラクター、本当に好きなキャラクターを練習していただければ、ストーリーモードを含むシングルプレイヤーモードも、対戦も楽しめる作りになっています。
マーベルのキャラクターが好きな方には、「格闘ゲームは難しい」という先入観を少し捨てていただき、ぜひ手に取って遊んでいただきたいと思っています。

4vs4という大胆なシステムから、アークシステムワークスならではのキャラクター表現まで、両社の持ち味が随所に詰め込まれた『MARVEL Tōkon: Fighting Souls』。
今後はフェニックス・サイクロップスを皮切りに、新たなキャラクターやサプライズも続々と待ち受けていそうです。日本から世界へ飛び出した“「マーベル」×SIE×アークシステムワークス”の格闘ゲームが、これからどのように進化していくのか注目していきましょう。
『MARVEL Tōkon: Fighting Souls』は、PC(Steam)/PS5にて発売中です。
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