カプコンが手掛けるハッキングSFアドベンチャー『プラグマタ』の発売まで、残りおよそ1か月! そんな本作のリリースに先駆け、今回は、本作のディレクターを務めるチョウ・ヨンヒ氏と、プロデューサーの大山直人氏、お二人へのインタビューが実施されました。
本稿では、ニューヨーク風の街のデザインをはじめ、戦闘やハッキングを通じた、本作の“単調になりやすさ”を解消するための工夫などにも迫ったインタビューをお届けます。

また、Game*Sparkでは体験版のさらに先の範囲、ニューヨーク風の都市「大規模出力試験場」を先行体験した本作のプレイレポートも掲載中です。
本インタビューではその内容を踏まえた問いもあるので、ぜひあわせてご確認ください。
ユーザーからのフィードバックも受け開発された戦闘バランス
――本作は既に体験版も配信されています。体験版やTGSでの展示などを通じて、ユーザーからどういった反応やフィードバックを受け取りましたか?
大山直人氏:基本的には、とてもポジティブに受け入れていただいている印象です。体験版を早めに出すことでユーザーが肌に合うかを判断できるほか、さまざまなフィードバックを予想していましたが、ネガティブなものは想像より少なく、期待の声や「楽しかった!」という感想が多くを占めていますね。
一方の懸念点やネガティブなフィードバックとして多く挙げられていたのは、「体験版以降の範囲でも、パズルに飽きずに長く遊べるのか」という部分でした。さまざまな遊びや工夫を詰め込んでいるので、ぜひユーザーの皆さんにも安心して製品版を楽しんでいただければと思います。
――体験版が配信された際、「このゲームでは“引き撃ち”がメインになってしまうのではないか」という懸念があったのですが、実際にプレイしてみるとそんなことはなく、懸念も払拭されました。パズルとシューターを組み立てるにあたって、開発ではどういった部分に難しさがありましたか。
チョウ・ヨンヒ氏:一番苦労したのは、2つの要素を組み合わせるにあたり別々のゲームにするのではなく、ひとつのゲームにミックスするということでした。戦闘のなかで2つの要素を自発的に、そして戦略的に使いこなすためには、両方の機能やバランスが重要です。
もし銃撃のダメージが高すぎたり、ハッキングの効果が強すぎたりしてしまうと、どちらか片方だけしか使わなくなるような状況が生まれてしまいます。どちらの要素もほどよく、5割ずつ使って敵を倒していくことを目指していたので、バランスを取ることには苦労しましたね。

――バランスはかなり良かった印象があります。戦闘では「あと少しで倒せそうだけれど、パズルもしないと……」と、駆け引きが楽しめました。
大山氏:今回、皆さんには体験版の範囲より一歩進んだ本編部分をプレイしていただきました。
敵の数やバリエーション、こちらの使える武器やノードなど、選択肢と状況が増えることによって、マルチタスク的に頭をフル回転させながら戦闘を進める楽しさを体験いただけたと思っています。
ヨンヒ氏:ハッキングという要素自体が本作における大事なポイントであり、オリジナリティでもあるのですが、そのポイントを作り手側がユーザーに「やらせる」設計にはしたくないのです。なるべくユーザーが自発的に、ハッキングを使いたくなるよう調整するのにも時間がかかりました。
大山氏:少し慣れてきたあたりで新たな選択肢が増え、それで戦略の幅が広がって……と、ゲームが進行するにつれ新しいことが起きることで、「飽きずに楽しく続けられる」という部分は強く意識して設計しています。

――今回の試遊は簡単すぎず難しすぎず、ギリギリの難易度で楽しむことができました。難易度を変更する設定や、難易度バランスの調整で苦労した部分はありますか。
ヨンヒ氏:開発チームが継続的にプレイしているとだんだん感覚が麻痺していき、当初は初心者が絶対クリアできないほどの“死にゲー”になっていました。外部の人にテストプレイしてもらい、バランスの良い難易度に調整した結果が現在の状態です。
自分や開発チームを含め、「今の難易度では満足できない」というコアなユーザーへ向けたさらなる難易度も用意しています。
大山氏:コアゲーマー向けの難易度も用意しつつ、定期的に初めてプレイする人を招いてチェックすることで、カジュアルとスタンダードのバランスを維持させました。初めて触る方はカジュアルの方でストーリーをメインに楽しめると思いますし、一般的なゲーマーは、ノーマルモードでギリギリの戦闘を体験できます。
もしやられてしまっても、シェルターでの強化システムを使ってみてください。探索でリソースを集めて強化し、再び立ち向かうというサイクルで、自然に進行できるような設計になっています。
ヨンヒ氏:今回の体験版についても、開発チームとしては「本当にこんな難易度でいいのかな……?」という感じで配信しましたが、皆さんの「丁度いい」というフィードバックを受けて安堵しましたね。


――今回の試遊では超大型のボスが登場しましたが、あのようなサイズ感のボスは今後も登場するのでしょうか。
大山氏:基本的に、各ステージの最後にはユニークなボスが待ち受けているという構成で設計をしています。体験版のなかにも「セクターガード」と戦える場面がありますが、ボスのサイズ感はまばらです。
それぞれビジュアル的にもインパクトがありつつ、戦闘面でもユニークな仕組みを取り入れているので、各ステージごとのボス戦を楽しんでいただけると思います。
ヨンヒ氏:詳しい部分はネタバレになってしまうのであまり言えませんが、基本的にはステージの背景を考慮して、そのステージに似合いそうな特徴の敵を配置しています。

――近距離武器と近距離用のモジュールを組み合わせたり、逆に遠距離から戦ったりと、カスタマイズ要素も面白いと感じました。一方で、ディアナの能力をカスタマイズすることは可能なのでしょうか。
ヨンヒ氏:カスタムモジュールのなかにはハッキングに関するものもあるので、そういった部分はディアナ自身のカスタマイズといえます。ゲーム後半になると、組み合わせ方によってはハッキング主体や遠距離武器特化など、プレイヤーごとに異なる戦闘スタイルが確立されていくでしょう。
大山氏:先程もハッキングとシューティングのバランスについての話題がありましたが、序盤は“5割ずつ”のバランスを保ちつつ、後半はプレイヤーの好みに応じて調整できる設計になっています。ハッキングのみでのクリアも十分想定されており、実際に体験版をハッキングだけでクリアしたプレイヤーも存在します。

――「チャージピアッサー」や「マルチハック」など、新しい武器やハッキングノードも確認できました。カスタマイズ面で言うと、お二人はどういった戦い方がお気に入りですか?
大山氏:僕はハッキング寄りの戦い方が好きで、連続したハッキングでダメージを蓄積させながら、マルチハックなどで隙を作り出し、強力な武器で一気に敵を倒す戦法です。状況に応じて何が一番楽しいかを考えはしますが、わりとハッキングに頼りがちなプレイをしている気がします。
ヨンヒ氏:私は真逆の戦い方です。本作はアクションゲーム寄りなので、アクション要素を活かした戦い方をしている気がしますが……。後半ではハッキングも多く使っているかもしれません。
今回の試遊では弱った敵にトドメを刺せる「クリティカルダウンノード」が登場して、これとマルチハックを組み合わせることで周囲の敵すべてをダウンさせられます。そこから、連続の近接攻撃で敵を倒すといった遊び方も楽しいですよ。

立体的空間を“探索して見つける楽しみ”を持つマップデザイン
――試遊では、空中での機動力がアップする要素が印象的でした。立体的なマップをデザインしていくうえでの苦労や、注意したポイントなどがあれば教えてください。
ヨンヒ氏:ステージクリア型のゲームは“1本道感”が強くなりがちで、本作ではゲームシステムの都合上、移動して敵を倒すだけの単調な繰り返しになるとすぐに飽きられてしまいます。
そのため、マップを楽しめる探索要素や、立体的な空間を活かした「自分で発見する楽しみを感じられるマップ」デザインに苦労しました。
大山氏:立体的な構造は複雑で迷いやすくなるため、レベルデザインの動線は手を入れて作っています。例えば、今回のニューヨーク風のステージでは6つのロックを解除しにいくことから始まりますが、鍵となるビーコンからは空中に向かって赤い柱のようなものが伸びています。
上を見上げるとなんとなく次の目的地がわかる仕組みを取り入れつつ、迷った場合にはディアナのスキャン機能で道を教えてくれるような、フォロー機能も搭載しました。


――ステージでは縦に連なっているタクシーなど、現実世界では見られない表現が非常に魅力的に感じました。今後も植物園のようなロケーションが登場するようですが、自然のものを含めて3Dプリンターの生成物を使った“歪さ”をどのようにデザインに組み込んでいるのでしょうか。
ヨンヒ氏:“歪さ”は普段見慣れない形状であるため、プレイヤーが「ゲーム的に何か意味がある!」と勘違いしやすいという課題があります。ただの背景であることを理解してもらえるよう、調整するのが難しい部分でした。
3Dプリンターで再現した地球のどこか、という表現はしつつも、そのままでは一般的な風景と大差がないため、ユニークさを出すために歪さを取り入れています。
大山氏:AIが作り上げた違和感のある世界というステージのコンセプトのもとで、タクシーが地面にめり込んでいたり、壁からバスが出ていたりといった要素を配置しました。
AIが作ったと設定していますが、実際は全て人間が手作業で制作しており、AIらしさを演出する違和感の仕込み方に、多くの時間と工夫を費やしましたね。

――今回、ニューヨーク風の都市を探索するなかで「タイムズスクエアっぽいな」と感じたり、“RESIDENT DEVIL”と遊び心のあるポスターを発見したりと、探索をすごく楽しめました。このマップをデザインする上で、意識したポイントはありますか。
ヨンヒ氏:誰もが知るニューヨークをそのまま再現しても面白みに欠けてしまい、かといって完全なSFの施設にすると平凡なものになってしまうため、AIが3Dプリントで作り出したという設定を活かし、意図的にいびつな要素を加えました。
逆さになった道路や途中で切れたタクシーなど、リアルなニューヨークではない違和感を表現しています。一方で、プレイヤーが知っている地球の文化や要素も残すことで、共感度と面白さの両立を図りました。
――“RESIDENT DEVIL”のポスターやお店の名前、看板、掲示物など、イースターエッグ的な要素や小ネタは他のマップにも用意されているのでしょうか。
ヨンヒ氏:私個人としては、イースターエッグが大好きです。“RESIDENT DEVIL”をはじめ、チームからネタを集めてさまざまな隠し要素を仕込んでいます。

――ニューヨークのほかにも、ソウルやマドリードといった地名がゲーム内の読み物コンテンツから確認できましたが、これはニューヨーク以外のマップも登場するということですか?
ヨンヒ氏:ニューヨーク風とは言っても、実はその中にはさまざまな文化が混じっています。他のステージは都市ではなく、地球の別の場所を再現したものになっているんです。


主役となるヒューとディアナ、2人のキャラクターのバディ感。そして物語のテーマとは
――今回の試遊では同時に複数の敵を相手にするなど、忙しい場面も多くありました。そんななかでもディアナの声がヒントとなり、冷静に対処するギリギリの戦いを楽しめましたが、このディアナの発言は意図的にデザインしているのでしょうか。
ヨンヒ氏:今まであまり見たことがないタイプの戦闘システムなので、人によっては慣れることに壁を感じるかもしれません。しかし、探索やマップの理解など、戦闘システムとそれ以外の部分どちらもすぐに慣れるような設計をしています。
大山氏:ヒューとディアナ、2人のキャラクターの“バディ感”と言いますか、お互いに協力して進んでいくことがこのゲームのコンセプトでもあるので、ヒントによってプレイヤー自身がアクションを起こせるようにする部分は大事にしています。
あまりディアナの指示がくどくなりすぎても、プレイヤーにとっては窮屈に感じてしまうかもしれないので、程よい塩梅を目指して調整しましたね。
――こういった指示やアドバイスをしてくれるキャラクターは他の作品でもよく見られるものの、比較的鬱陶しがれてしまう傾向にある気がします。しかし、ディアナのアドバイスは全く苦に感じませんでした。
ヨンヒ氏:ディアナの喋る量やトーンなどは開発チームの中でも多くのフィードバックと議論がありました。当初は「喋りすぎて鬱陶しい」「削りすぎると今度は存在感が薄れる」などの意見もあり、数々の調整を重ねた結果、今のディアナの存在感に着地しています。

――探索中でもヒューとの掛け合いなどが多くありました。どれくらいのボイス量が収録されているのでしょうか。
ヨンヒ氏:本当はもっと入れたいくらいでした。ゲームプレイのテンポ的に、泣く泣くカットした部分などがあります。
大山氏:とはいえ、それでもかなりのボイスが収録されています。ボイスは11言語に対応しており、他のカプコンタイトルと比べても対応言語の幅が広いです。

――本作の物語が持つテーマを一言で表すとしたら、どういった表現をしますか。
ヨンヒ氏:テーマを表すとすると、「何を、どこまでを基準に“人間”と呼べるのか」という問いですね。アンドロイドのディアナと人間のヒューが初めて出会い、互いに何を感じるかを描いています。
重要なのは、何で作られたか、どこで生まれたかではなく、どういう存在なのか、何を考えているのかという点です。
大山氏:先程のセリフ量が多いという話にも関連しますが、2人の会話を通じて、ディアナはヒューから普遍的な愛情などを学んでいく姿が描かれています。

――本日はありがとうございました。
Game*Sparkでは、本インタビューにおける新要素が詳細にわかるプレイレポートも同時に掲載中。インタビューを読んで気になった内容をさらに知れるかもしれないので、『プラグマタ』発売が待ち切れない方はあわせてチェックしてみてくださいね。
『プラグマタ』は、4月17日にPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売予定。ニンテンドースイッチ2版は4月24日発売となります。
¥6,484
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
¥7,295
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
















