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“モンハンをRPGにしたらこうなった”から“RPGとして自立する”へ―『モンスターハンターストーリーズ』が切り開く新たなターン制RPGの地平

『モンスターハンター』のスピンオフとして始まったRPGが、広くプレイヤーを納得させる強力なターン制RPGへ歩み出そうとするまで。

ゲーム Nintendo Switch 2
“モンハンをRPGにしたらこうなった”から“RPGとして自立する”へ―『モンスターハンターストーリーズ』が切り開く新たなターン制RPGの地平
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今年のゲーム全体を振り返って思うのは、いくつかのタイトルの人気や高評価から「ターン制RPGがまた注目を集めつつあるのではないか?」ということです。

そんなターン制RPGを、来年以降も盛り上げる存在になり得そうなのが、僕が見る限り『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』(以下、モンハンストーリーズ3)だと思っています。勘に近い話で恐縮ですが、何か新しい領域を切り開こうとしています。

少し時間が経ちましたが、東京ゲームショウ2025(以下、TGS2025)で試遊してみて「過去のシリーズから一新させる」という気迫を感じましたし、開発チームのインタビューでも「ここから『モンスターハンター』シリーズのスピンオフではなく、自立したRPGにする」という気合が見受けられました。





特にお話を聞いていた時、ディレクターである大黒健二氏の自信が気になっていました。ゲーム全体の体験をハンドリングしている大黒氏が何か確信を掴んでいるということは、このタイトルには何かあるのではないか?

そんな『モンハンストーリーズ3』のリリースに先駆け、過去の『モンスターハンターストーリーズ』シリーズが初めてXboxに登場。Game*Sparkではそれを記念して、メールインタビューを行う機会がありました。

せっかくなので、『モンハンストーリーズ3』ディレクターでありシリーズに関わってきた大黒氏にお話を伺えないかと編集部と相談し、Xbox版プロデューサーの秋良氏と共にシリーズを振り返るお話をいただきました。人気アクションのスピンオフがひとつの強いターン制RPGへ成長するまでを伺い、最新作の完成度に強い自信を見せた背景に迫ります。

『モンハンストーリーズ』シリーズがもっとも大事にしていること

――先日のTGS2025にて、大黒さんや辻本さんへのインタビューを行ったとき、書かなかったんですけども大黒健二さんがかなり『モンハンストーリーズ3』の出来に自信を持っている発言が心に残っているんです。キャリアが長い大黒氏が、ディレクターとして開発の確信を掴んでいる表情が印象的でした。

あらためまして今回『モンスターハンターストーリーズ』シリーズが今回Xbox版にも展開されることもあり、シリーズ全体を振り返る機会にもなっているかと思います。当初は『モンスターハンター』シリーズのスピンオフから始まっていますし、どういうふうにシリーズを成長させていったのかを伺えますか。

大黒健二氏(以下、大黒氏):シリーズとして抑えるべきポイントは次の通りです。

  • RPGでも『モンスターハンター』であること。モンハンらしさを感じられること

  • モンスター育成が楽しく、モンスターが好きになれるゲーム

  • 丁寧な作りの王道JRPG

また、ターゲットという視点では「アクションが苦手、でもモンハンが好きな人」に加えて「ストーリーズをモンハン世界の入り口にしてほしい」という想いがありました。特に初代『モンスターハンターストーリーズ』ではモンハンが好きな親が子供と遊べたらすごく素敵だな、という想いがありました。そういう意図で低年齢層まで遊べるよう意識しました。

1作目が2016年と10年近く経過しており、プレイヤー自身も年齢を重ねています。また、前作を遊んでくれたプレイヤーの統計からも幅広い年齢層のお客様に遊んでもらえていることがわかりました。あえて少年向けに特化するのではなく、より多くの方に遊んでもらえるよう、時代とシリーズにあったターゲットを検討した結果が最新作の『モンハンストーリーズ3』の方向性になっています。

――あらためて『モンハンストーリーズ3』に向けての方向性の切り替えが分かったという感じですか。

大黒:『モンハンストーリーズ3』を作るにあたり、ポイントを見直しました。RPGでもモンハンであることとモンスターが好きになる育成は残すべきポイントでした。ですが3つ目の「王道」は変えたい、崩そうと考えました。そこで今作のビジョンとして「未知の体験にあふれたゲームにしたい」ということを掲げました。

“未知の体験”とは、ゲームなら当たり前と受け取るかもしれません。ゲームを進めながら徐々に学び、できることが増えていくような設計は正しい。オーソドックスが悪いわけではありません。前作まではモンハンのRPG化ということで、ユーザーに理解していただくことを重視しました。今作はオーソドックスでは足りないと判断して、これまでのゲーム性に未知の体験を加味していこうと。このさじ加減が今作の非常に大事なバランスと考えています。

前作までを振り返ると、王道つまり「予測ができる展開は完成度が高くても感動は薄れる」と思いました。(※モンハンというゲームは、次はどんなモンスターが登場するかを先に明示して準備含めて楽しませる、非常に稀なゲームデザインをしている)

RPGは何よりも予期しない展開こそワクワクするもので、例えばシナリオは王道であればあるほど予測しやすくなる。王道から大きく外さないが予想できない展開、もしくは予想できても伏線回収の段階では焦らす、ということを考えました。

ゲームデザインも同様で、チャレンジしたくなる寄り道の先には予期しない展開を用意し、レベルを上げたら勝てるというJRPGの法則を少し崩して遊べることを意識しました。

質問意図から外れているかもしれませんが、モンハンブランドの中でのストーリーズとしての立ち位置は変わりませんが、ユーザーへの認知が浸透し、私たち開発陣も経験を積み重ねました。

そういった経緯や状況を踏まえまして、過去二作が「モンハンをRPGにしたらこうなった。つまりモンハンの要素をRPGに組み込む形」だったのが、今作は「RPGとして自立する」を目指せるようになったと思います。やや傲慢な言い方をしますと、自分たちが作りたいRPGを考え、それをモンハンの世界観で表現する、という感覚です。

そもそも『モンハンストーリーズ』をターン制RPGにしようとした理由とは?

――そもそもの質問ですが、『モンハンストーリーズ』のゲームデザインをターン制RPGにしようと判断した理由はなんでしょうか。

大黒:『モンハンストーリーズ』シリーズは、アクションの『モンスターハンター』シリーズではない、新たな柱として育てていきたいシリーズとして立ち上がりました。アクションが苦手な方やRPGが好きな方に遊んでいただきたいことが、ターン制コマンドRPG方式にしている大きな理由です。

ただ『モンハンストーリーズ3』の開発初期は継続すべきか、変えるべきか悩みました。昨今ではアクションRPGが流行っているし、受けがいいことは理解しています。ですが、モンハンブランドとして、本流はアクションを極める。ストーリーズは物語と収集育成の楽しさが強み、という位置づけを再確認できました。

またお客様からは「モンハンをRPGとして上手くアレンジしている」という声も聞いていて、そこも私たちにとって大きな後押しになります。

――初代『モンハンストーリーズ』が携帯機のリリースで、低年齢層を意識していたデザインなのもあり、やはり当時はモンスターを仲間にして集めていくような、他のRPGタイトルを意識していたのでしょうか。

大黒:はい。ただ「収集」よりは「モンスターに乗って冒険したい」が本当のゼロイチでした。当時を振り返ると「狩りが楽しいゲームなのに、仲間にしてライドするなんて企画はNGだろう」と思って提案しました(今では本流モンハンでもライドができるようになり、そこは小さな功績かなと思って自惚れています)。

辻本良三プロデューサーは試していたわけではないはずですが、この提案がドンピシャだったようで、そこからは自信をもって、モンスターにライドするゲーム=モンスター育成が楽しく、モンスターが好きになれるゲームを作り始めることができました。

――カプコンはアクションの印象が強い企業ですが、RPGでも『ブレス オブ ファイア』シリーズなど、強いタイトルを作ってきた歴史がありますよね。ターン制RPGを開発する知見も、実はかなり高い企業でもあると感じているのですが、実際のところいかがでしょうか。

大黒:あくまで個人的な見解になりますが、私はそうではないと思っています。もちろんユーザーとしてRPGを遊び、RPGが好きな開発メンバーは多いです。ですが「開発する」となると別問題です。パラメータ設計や触り心地を作り上げる知見はゲームデザイナーだけでなくプログラマーもアーティストも強いと思います。

ただ、RPGはなによりゲーム進行とシナリオが全ての土台になります。そういった作り方の優先意識や設計の知見は足りていなかったと思っています。

――2010年代の当時、昔ながらのターン制RPGは激減していた印象があります。歴史あるRPGシリーズタイトルでもターン制をやめてアクションに方向転換するケースが多かったです。そのなかで『モンスターハンター』というアクションがメインのシリーズに対して、スピンオフの『モンハンストーリーズ』はターン制RPGを選ぶという逆転が興味深かったですね。

アクションを得意とするカプコンが、『モンハンストーリーズ』シリーズではバトルに徹底してアクション要素を含めないですよね。たとえば攻撃が当たる瞬間にボタンを押して、追加ダメージを与えるようなターン制RPGは多いじゃないですか。

『モンハンストーリーズ3』はTGS2025での試遊のみの判断で恐縮ですが、本作もアクション要素を入れず、ターン制の戦略を重視しています。素人目線ですが、アクション性を入れないことを徹底している理由もあるのでしょうか。

大黒:大きな理由は、前述の『モンスターハンター』ブランド内の位置づけがしっかり定まっていることです。

個人的に意識していることは、本流『モンスターハンター』シリーズはアクションとしての強み、独自性が突出しています。バトルにおいてちょっとしたアクション要素を入れたとしても「それなら本流の方が面白い」になると思います。

最初のポイントでも伝えましたように「RPGでもモンハンであること。モンハンらしさを感じられること」が大切です。アクションを加味しない方法で「モンハンらしいバトル」を表現することがストーリーズのこだわりかもしれません。

とはいえ、弊社の強みであるアクションの手触りも活かさないともったいない。そこでフィールドプレイを劇的に変えよう、ということを決めました。 フィールドに干渉できるアクション、ついつい何かしたくなる気持ちになれるような要素を加えたいと考えて、開発内で「アスレチックライド」というキーワードを掲げ、RPGでもフィールド移動が楽しいゲーム体験を加えました。

「もっとRPGにしようぜ」と考えた理由についての質問

――あらためまして、開発チームの皆さんにとってのRPGって何なのかを伺えますか。先の『モンハンストーリーズ3』についてのインタビューで印象深かったのは、辻本プロデューサーが「もっとRPGにしていこう」という言葉なんです。逆にシリーズの1~2では、「低年齢層に気軽に遊んでもらうための、モンスターと冒険するRPG」だったと思うんです。プレイヤー層に合わせてか、世界観の掘り下げは控えめになっていたというか。

大黒:開発チームの皆さんにとっては答えにくいので、あくまで個人的な見解でお答えすること承知ください。『ドラゴンクエスト』シリーズや『ファイナルファンタジー』シリーズに代表される、JRPGの影響を受けていると思います。

モチベーションのベースとなる「ストーリー」、「魅力的なキャラクター・アニメ風味」という見た目の印象、誰でもじっくり時間をかければクリアできる「ターン制バトル・レベルアップをベースとした成長育成」のゲームシステムがRPGのイメージです。もちろん、それができていると言っているわけではありません。ユーザーにどのような評価をいただけるかはいつも緊張しています。

本作は「RPGとして自立し、その中でモンハンの世界観を最大限有効活用する」ことを意識して作っています。ストーリー・キャラクター・ゲームシステムの全てをレベルアップどころか、クラスチェンジしたような感覚です。

より大人向けに感じられるグラフィックやストーリーと設定、戦略性を増したバトルシステム、RPGなのにフィールド移動が楽しいゲーム体験は、私たちが作りたいRPGとは何かを考えた結果から生まれています。各タイトルでこんなに違いがあるシリーズは珍しいと思います。見た目やストーリーはもちろんですが、遊びの軸となるフィールド、バトル、育成の遊び心地も進化してきています。

――確かに、こうしてシリーズを振り返ってみると思ったよりも方向が違います。

大黒:1と2では「モンハンをRPGとして上手くアレンジしている」ところを感じてもらえると思います。そして積み重ねてきたものを「RPGとしてしっかり表現できた」のが『モンハンストーリーズ3』です。

私の自信の根拠でもありますが、開発初期のビジョンをチームメンバーそれぞれが“レベルアップ”して作り上げてくれました。その成果として開発チーム内でも本当に楽しんで遊んでいる姿を目にします。「〇〇の攻略法は…」「このビルドすごい」「え、それ知らなかった」というような会話が飛び交う光景が見られる。長く開発していますがここまで素敵な光景は経験したことがない。

――こうしたシリーズの開発を踏まえて、カプコンがRPGを見直していくかのようで、これからの『モンハンストーリーズ3』も気になっています。

大黒:『モンハンストーリーズ3』は、RPGとしての遊びの幅や驚きをたくさん用意しています。ユーザーの皆さんそれぞれに好みは違いますが、きっと刺さるポイントがあると思います。

――最後に、これから『モンハンストーリーズ』シリーズをXboxでプレイするRPGファンに向けて、あらためてRPGとしてのシリーズの見どころを教えてください。

大黒:まずは初代『モンハンストーリーズ』と『2』に触れていただき、2026年3月13日に発売される『モンハンストーリーズ3』を待っていただけるとうれしいです。何よりも励みになるのが、皆さんの応援や賛否含めた感想といった「声」です。『モンハンストーリーズ』とモンハンブランドをこれからもサポートよろしくお願いします!

秋良:『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』の発売を控え、Xboxユーザーの皆様に過去作をお届けできることを大変嬉しく思っています。シリーズ3作品はそれぞれ独立した物語ですので、どこから始めてもお楽しみいただけますが、シリーズを通して遊んでいただければより一層楽しめると思っています。

『3』はチーム一丸となって終盤開発を進めておりますので、発売までの期間、是非『モンスターハンターストーリーズ』『モンスターハンターストーリーズ2 ~破滅の翼~』もお楽しみいただけますと幸いです。


《葛西 祝》
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