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『MOTHER2』発売31周年記念、英語圏『EarthBound』ファンの活動紹介―子供から大人になっても

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『MOTHER2』発売31周年記念、英語圏『EarthBound』ファンの活動紹介―子供から大人になっても
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8月27日といえば、『MOTHER2 ギーグの逆襲』の発売日です。1994年8月27日のリリースから31年を経てなお多数のグッズが新規展開される本作ですが、かつては決してそんなタイトルではありませんでした。

当時のファンだった筆者はサウンドトラックはもちろん、攻略本に漫画小説と書籍の数々を揃えるに飽き足らず、糸井重里氏の著作を読み、鈴木慶一氏の音源を聴き、やがて英語圏の『EarthBound(アースバウンド)』ファンダムに迷いこみます。そして、『MOTHER2』が海外では『EarthBound』という名で発売されていたことを知り、熱心なファン活動を眺めることになりました。

本記事では、著者が巡り会ってきた『EarthBound』のファン活動をご紹介いたします。

はじめは、2005年の「Bound Together」でした。筆者が知ったきっかけは定かではありませんが、本作はゲーム音楽リミックスサイトであるOverClocked ReMixVGMixに、カバーバンドのThe OneUpsらが協力した『EarthBound』のリミックスプロジェクトです。

VGMixの創設者で後に『シャンティ』シリーズや『ショベルナイト』の作曲家となるJake Kaufman氏など、著名アレンジャーが数多く参加した本作の企画意図は、当時のリミックスシーンにおいて高い評価を受けていなかった『EarthBound』への愛を示すためでした。『EarthBound』は残念ながら大ヒットとは至らなかったものの、熱狂的なファンを生み出し、草の根的な活動が続いていきます。

『MOTHER3』英語版の嘆願運動

さて、翌年2006年4月20日といえば、『MOTHER3』の発売日です。

後に2014年のE3では、Nintendo Digital Eventのオープニングで、当時のNintendo of America社長「レジー」ことレジナルド・フィサメィ氏が、『MOTHER3』を要望するファンをファイアボールで焼くというネタを扱っていましたが、長く続く英語版『MOTHER3』嘆願運動が本格化するのも、この頃からです。

活動の主体となったのはStarmen.Netで、1999年にReid Youngt氏とClyde Mandelin氏が創設した世界最大の『EarthBound』ファンコミュニティです。過去にも『MOTHER3』発売に向けて3万件もの署名活動などを行ってきたサイトですが、2007年にEB Siegeと銘打って米任天堂の窓口への電話、手紙、直接の面会など、様々な方法で『MOTHER3』英語版の販売へ向けて働きかけました。

そのキャンペーンの一環として作られたのが「EarthBound Anthology」です。任天堂およびゲームメディアに対しファンベースの強固さを示すべく寄付金をもとに制作された本で、ファン活動の経緯や手製のアート、実写『EarthBound』の映像やアレンジアルバムなどが含まれていました。

少部数ながら日本語版も作られ、贈られた先のひとつが日本のMOTHERシリーズファンサイトMOTHER Partyでした。筆者が本件を知ったのはその紹介記事経由です。また、Starmen.Net創設者のReid氏がこのときのメンバーと作った会社が、ゲームグッズでおなじみのFangamerです。

Starmen.Netでは『EarthBound』のロムをハックし、他言語のファン翻訳やハックロムが作られていました。その成果が「PK Hack」と名付けられたツールです。

これを用いて2008年にホラー風に改造した『EarthBound Halloween Hack』を作り、Starmen.Netで公開したのが後に『UNDERTALE』を生むToby Fox氏であり、数多くのアレンジ曲に混じって使われた自作曲のひとつが「Megalovania」ですが、これは完全に余談です。肝心なのは、当時そこにはファン翻訳を作るコミュニティが存在したということです。

そして2008年、1年半をかけて作られた『MOTHER3』英語版のファン翻訳パッチが公開されます。リードの翻訳者である、もう1人のStarmen.Net創設者・Clyde氏は『EarthBound』愛が高じて一時期は日本で暮らし、日本語を学び、プロの日英翻訳者となっていました。

本パッチはゲーム史上最も有名なファン翻訳パッチと思われるので紙幅を費やしませんが、Clyde氏はこの後Legends of Localizationというゲームの翻訳を検証するサイトを立ち上げます。ここから『ゼルダの伝説』や『UNDERTALE』、そしてもちろん『EarthBound』を題材とした書籍が作られ、ゲーム翻訳業界における参考書の一つとなっています。

ドキュメンタリー映画「EarthBound USA」

この後も大小さまざまな活動が続きますが、その集大成が2014年にFangamerがKickstarterで行ったキャンペーンYou Are Now EarthBoundです。リターンは、ここまで培われたグッズ製作ノウハウが総動員され、OverClocked ReMixによるアレンジアルバムも収録された『EarthBound』グッズ集でした。

前述した「Legends of Localization Book 2: EarthBound」もプレッジ対象であり、筆者がはじめて本格的にゲーム翻訳に触れたきっかけです。

本キャンペーンでは『EarthBound』ファン活動の記録を残すべく、ドキュメンタリー映画「EarthBound USA」の製作も発表されました。

その後、紆余曲折あり公開されたのは10年の月日を経た2023年となりましたが、『MOTHER2』発売時や『MOTHER3』の発表時、延期時の日本でのニュース映像なども含まれており、糸井重里氏へのインタビューで終わる内容は、遠くから活動を眺めていただけの筆者にとっても感極まるものがあります。

本語字幕にも対応しており、ネット配信でも視聴可能なため、ここまでの内容に興味のある方は見る価値があるでしょう。

2020年に「ほぼ日MOTHERプロジェクト」が始まってからは数多くの『MOTHER』シリーズグッズが作られており、隔世の感があります。無論、日本でもファンコミュニティの活動は脈々と続いているのですが、筆者は「Bound Together」を契機に海外ファンダムを細々と眺めてきて、「EarthBound USA」の公開で一区切りついた思いがあります。

何の因果か自分もファン翻訳からゲーム翻訳者となり、訳したゲームのグッズがFangamerで取り扱われているのを見ると、奇妙な縁を感じる今日この頃です。


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