『ニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classics』は、ニンテンドースイッチ2専用の配信サービスです。このサービスに収録されているゲームをプレイしてみると、「20年以上前にこんな高クオリティの作品があったのか!?」と改めて実感せずにいられません。

その中のひとつ、『ゼルダの伝説 風のタクト』(以下『風のタクト』)は2002年12月に発売された作品。今から23年も前のゲームです。しかし、現代の視点から見ても古さはまったく感じさせず、2020年代の小学生も十分に遊べるのでは!? と思わせてくれます。
それは当時賛否両論あったアニメ風のグラフィックだけでなく、その見た目を覆すような複雑かつ爽快な攻撃アクション、そして発売当時の子供たちの「概念レベル」に沿った丁寧なチュートリアルが大きな役割を果たしています。
「親から子に伝えたいゲーム」は数多くありますが、『風のタクト』はその最筆頭の作品と言えるのではないでしょうか。
◆アナログスティックが十字キーの役割を奪った瞬間
いわゆる「3Dゼルダ」の歴史は、1998年11月にNintendo 64向けソフトとして発売された『ゼルダの伝説 時のオカリナ』から始まりました。
このNintendo 64は、コントローラーにアナログスティックが搭載された機種。それを生かした三人称視点の3D作品が、90年代後半には大きな注目を集めていました。それが21世紀に入ると、アナログスティックは十字キーが担っていた仕事を(敢えて悪い表現を使えば)完全に奪ってしまうようになります。
ゲームキューブのコントローラーには、2種類のアナログスティックが搭載されています。左側のスティックでキャラを動かし、右側のスティックで視点カメラを周回させるという仕組みです。十字キーは補助的な操作機構になり、ここからゲームの形が大きく変容していきます。
『風のタクト』は、「左右の親指でアナログスティックを動かし続ける」ことを前提にしたゼルダ作品です。

左スティックの前後左右でキャラを移動させつつ、たとえば右スティックを左に倒すとカメラ(プレイヤーの視界)が右方向に回ります。下に倒すと上を向く、という仕組みです。このあたり、現代のTPV操作とは真逆ですが、ともかく「キャラを動かすと同時にカメラも動かす」という操作が『風のタクト』では求められます。
そのため、ゲーム序盤に「操作に慣れるための練習ステージ」が登場します。
◆やや厳しめのチュートリアルステージ
『風のタクト』の主人公(名前を変えることが可能)は、プロロ島という平和な孤島に住む少年です。彼にはアリルという妹がいますが、とあるきっかけでアリルは島に飛来してきた大怪島ジークロックにさらわれてしまいます。

主人公はアリルを救出するため、島に来訪していた海賊船の船長テトラと共に航海へ出ます。この時、主人公は海賊船の中で先輩海賊ニコから合格するのに最低1年はかかるという海賊の試験を言い渡されます。
それは、床からせり上がった足場と足場を飛び越えて宝箱のある部屋まで行く試験です。途中でロープにぶら下がって大ジャンプ! というアクションも行う必要があります。そして、これが結構難しい! 20年前の子供たちは、ここにかなり難儀したはずです。

今の子供たちはアナログスティックの操作に慣れているため、「何だ結構簡単じゃん!」と言いながら難なくクリアしてしまうかもしれませんが、それは言わば「概念レベル」の格差の表れ。20年前の子供には「それぞれ役割の異なる2本のアナログスティックを同時に操作する」という概念が、まだ備わっていませんでした。

しかし、『風のタクト』はそうした操作ができなければそもそも攻略できない作品。クリアが必須でいささか難易度の高いチュートリアルステージが設けられているのは、そのような背景があったからではないでしょうか。
◆「作りの丁寧さ」は色褪せず
ですが、一度この操作に慣れてしまうと、緑の服の主人公は縦横無尽に画面内を躍動します。
剣を持った主人公は、横斬りや縦斬りだけでなく、刺突、ジャンプ斬り、そして回転斬りも披露します。このアクションの多彩さは3Dならではの描写です。

迫り来るモンスターの目を盗むため、樽の中に身を隠すアクションや狭い足場をつたって移動するアクション、泳ぐアクション等々、豊富な種類の動きを駆使しながら主人公はダンジョンを攻略していきます。
グラフィックのクオリティは現代に比較すると何段も劣ってしまう……はずなのですが、アニメのような画風が奏功して「粗さ」というものを殆ど感じさせません。ランタン片手にダンジョンを見回るモンスターの動作は、ディズニーアニメを連想させます。

とにかく目立つのは、「作りの丁寧さ」です。冒頭に書いた通り、『風のタクト』のアニメ風タッチはそれまでのゼルダシリーズを覆す造形で、当初は賛否両論ありました。しかし、結果的にはシリーズに新たな息吹を与えることになります。この作品が、「デジタルの世紀」21世紀に相応しい新しいゼルダを完成させたのです。
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