イシイジロウ氏、北島行徳氏など名作ADVを手掛けてきたクリエイターによる新作渋谷実写アドベンチャーゲーム『シブヤスクランブルストーリーズ』。7月13日の記者会見では正式制作が決定したほか、新キャストも発表されました。

本記事では、『街 ~運命の交差点~』で牛尾政美と馬部甚太郎を演じた松田優さんと、『428 ~封鎖された渋谷で~』で杖の男(建野京三)を演じた工藤俊作さん、磯千晶を演じた右手愛美さんへのインタビューをお届けします。
――自己紹介をお願いします。
工藤俊作さん(以下、工藤):『428』で建野京三を演じた工藤俊作です。
松田優さん(以下、松田):『街』で牛尾と馬部の2役を演じた松田優です。
右手愛美さん(以下、右手):『428』で磯千晶を演じた右手愛美です。いまは愛知県に住んでいて、テレビタレント・キャスター業をメインにやっています。
――出演が決まった経緯や、いまの心境を教えて下さい。
工藤:イシイさんからメールで直接お話をいただきました。私は普段ゲームはやらないのですが、景品で貰った『428』をプレイして、「これは伝説になるな」と確信したのを覚えています。発売後やはり伝説になって、ファンの皆さんから「建野さんですよね」と声もかけられます。
右手:磯千晶を演じたのは19歳ころだったのですが、ちょっとドジっ子、人見知り、引っ込み思案という性格から、メガネでツインテール、ピンクのフリフリでドットなファッションまで、彼女のキャラは本来の自分とは正反対でした。
いま私は37歳になったのですが、千晶らしい性格を自分の中に発見したりしていて、千晶のファッションはすごく好きです♡『428』には自分の中に眠る趣味に気づかせてもらいました。今回は馴染の顔がたくさんいるということで、以前の役を感じさせるようなキャラが演じられるのかなと思うとすごくワクワクしています。
松田:『街』も根強いファンの方々が、未だに応援してくれてます。僕もゲームはやりませんが、情熱を持って応援してくださる方がいるということで……還暦過ぎましたが、大暴れしようかと。ヤクザ役ですかね!(笑)
――皆さんゲームへの出演歴は『街』『428』以外あまりないと思いますが、今回の出演にあたって躊躇はありませんでしたか。
工藤:どういう形態でやるのかを納得できれば、まったく抵抗はないです。
右手:いま息子が2人いて、小学1年生の長男がすごいゲーマーなんです。今回このお仕事が決まったとき、つい自慢しちゃったんですよ。「ママ、昔『428』ってゲームに出てたんだよ」って(笑)。そしたらすごく目を輝かせて「やりたいやりたい!」というのでPS4版を買って、いま夫と長男が進めています。
ただ、私は電話越しに喋るシーンが多かったので、「これママなんだけど……!!」とちょっと歯がゆいですね(笑)。でも、また新しくゲームに出られるということで、息子たちにもちょっと胸を張れるのが嬉しいです。
――過去作当時、楽しかったことや苦労したことがあれば教えて下さい。
松田:『街』ではヤクザの牛尾と気の弱い馬部という2役を演じたんですが、ストーリー的に風貌はまったく一緒だったんですよ。演じている最中、僕自身もごっちゃになっちゃって……大変でした(笑)。
あと、『街』は止まった画を撮影しているので、乱闘シーンでどう止めるかが難しかったですね。片足上げているシーンとかで照明がやけに時間かけたりして、「早く撮ってよ!!」というようなことがよくありましたね(笑)。それと撮影が進むにつれ、ちゃんと動いて演じたいのに止まらなきゃいけないのがストレスに感じる時もありました。
しかも、当時は超大きくて今ほど性能も高くないカメラだったので、ブレると台無しで、デジタルじゃないからその場でチェックできないとか色々大変でしたが、心に残る楽しい撮影でしたね。
右手:私がモデルデビューしたのは13歳のころでしたが、その頃ですらデジカメじゃなかったので、『428』の撮影環境がデジタルだったのは本当にギリギリだったのかもしれませんね。
私はそんな年齢だったので、当時はまだ舞台1つに出演したくらいで、表立ったお芝居は『428』がほぼ初めてといっていいくらいのものでした。撮影されること自体は慣れていたのですが、現場に行ってみるとセリフを喋る必要があって……それがすごく驚きでした。千晶が紙を食べちゃうシーンがあったと思いますが、あれもほんとにやったんですよ。
大変なことはありましたが、そこでお芝居の楽しさに触れられました。というか、愛知県出身なので、渋谷に到着するだけでもまずウキウキしてましたね(笑)。
工藤:アルファルドと戦うシーンは楽しかったな。風の強い夜に撮影しましたね。アルファルド役のティギー・ウィリアムズさんは当時中学生になったばかりで、彼女がセーラー服を着て現場に来たときびっくりしましたよ!
――皆さんは過去作のキャラにどんな思い入れがありますか。
右手:先ほども言ったのですが、私はあまり人見知りしないし、元気で明るいキャラだと思っていたので、その真逆である千晶を演じたことで、たくさん考えることがありましたね。普段自分ならやらないような行動をやっちゃったりとか……渋谷の地面ってなんか触っちゃいけないような気がするじゃないですか!? でも、千晶を演じているときは地面を触っていじいじしてたり……。キャラが濃いので、私の中でも忘れられない役になっていて、いま大人になった千晶を想像してワクワクしました。
松田:牛尾/馬部を演じた当時はちょうど32,3歳くらいで、かなり尖っていたんです(笑)。自分の中に「こうだ!」という価値観があって、現場でちょっと喧嘩になったり。牛尾は当時の自分そのままで、馬部は気の弱い男だったのですが、それが逆に楽しんで演じられました。もしかして馬部の弱い部分と牛尾の強い部分を足したら俺になるのかも?と不思議な感覚を覚えました。
――まだ本格的な制作前だと思いますが、いま演じてみたい役はどんな役ですか。
工藤:小山(卓治)※さんのお株を奪うわけじゃないですが、ライブハウスでギターを弾いてるような役がいいですね。それか、宇宙飛行士(笑)。それはBAD ENDかな?
※小山卓治さん:『428』で大沢賢治役を演じたシンガーソングライター。『シブヤスクランブルストーリーズ』への出演も決定済み。
右手:私は奇抜なファッションが好きなので、それが着れたら楽しそうだな~。普段は愛知でタレント業をやっていて、お芝居をするのが久々なので、どんな役でも楽しみです。ムキムキマッチョの役をやれって言われたら頑張って筋トレします!!(笑)
あ、極悪人もやってみたいですね。いま子育て中なので「どれだけいい人になって、どれだけいい子に育てられるか」を常に意識しながら生活しているので、悪は排除しなきゃいけないと思っているんですよ(笑)。やはり日常から離れた役を演じられるのは役者ならではですよね。
――現代の渋谷の街をどう感じていますか。
工藤:僕は田舎者なので、もうめったに来ないです。で、来てみるとめちゃくちゃ迷います(笑)。モヤイ像が移転したりして、アイコン的なものですらも変わり続けてますからね。
右手:当時の私は地図を見ずに渋谷を歩けることがカッコいいと思ってたのですが、東京を離れて4年、もう完全にわからなくなりました(笑)。離れる直前まではベビーカーを引いていたので、エレベーターにスムーズに乗れるルートとか頭の中で構築できてたんですが……進化の速度が早いということですよね。
工藤:昭和の頃が良かったな(笑)。東横線が好きで、僕の青春でした。あれに載って横浜までデートに行くってのが良かったですよ。
松田:でも、昭和の渋谷はおしゃれなやつなんていないし、汚かったよね。
右手:私、渋谷で初めて本物のネズミを見ました……。昔と比べると、綺麗になりましたよね。
――そんな今の渋谷では、どんな物語が描けると思いますか。
工藤:想像もつかないですね。イシイさんや北島さんも日々発想が進化していらっしゃいますし、そこからアウトプットされたものを我々はいかに魅力的に演じられるか、これがすべてだと思います。
右手:私は先ほど仰っていたような、渋谷の複雑さを利用した物語がいいかもと思いました。「自分はどこにいるんだろう……」みたいな。
工藤:まさに「スクランブルストーリー」だ(笑)。
右手:確かに!(笑) 渋谷っていろんな顔があるじゃないですか。松濤とスクランブル交差点を見比べたら全然雰囲気が違いますし、私さっき道を間違えて、まったく人通りのない薄暗い通りに入っちゃったんですよ(笑)。そういった異世界感みたいなものが渋谷にはありますよね。
松田:『街』撮影時、渋谷を歩いているのは若者より年配が多かったんですよ。でも最近、ハリウッド映画などで渋谷が出てくるときは近代的な都市として描かれますし、外国人も多い国際的な街ですよね。なので、国際的ないろいろな国の悪いやつが集まっている街にする……というような設定を入れれば面白いかもしれません。
――最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします。
工藤:ついこの間、中国のファンの方がわざわざイラストにしてメッセージを送ってくれたんです。こうして世界に広がっていけるのであれば、こんなに世界が1つになれるものはないのかなと思います。ぜひ期待してください。
右手:長い間忘れずにいてくださるファンがいるからこそ、本作は動き出したんだとクラウドファンディングの数字を見て実感しました。キャストやスタッフを含めて、全員がワクワクして取り組める熱量の高い作品になると思うので、ぜひ期待して待っていてください。
松田:長い年月を超え応援してくれているファンの皆さんの、熱い想いと夢が動き出しました!本作も間違いなく何十年経っても色褪せない最高の作品になるに違いない。その夢を担う一端として、誠心誠意演じさせて頂きます!楽しみにしてて下さい。
――ありがとうございました!
『シブヤスクランブルストーリーズ』は、2028年の発売を目指して鋭意制作中です。うぶごえでのクラウドファンディング7月25日23時59分までと締切が間近に迫っているため、この夢のようなプロジェクトをいま支援してみてはいかがでしょうか。