「女子高生が他人とばったり出会うという意味で"エンカする"という言葉を使っていて驚いた」―そんなゲーマーの投稿がSNSを騒がせています。実際、X(旧Twitter)を"エンカする"で検索すると、多くの若者が「人と会う」という意味で"エンカする"という単語を使っていることがわかります。
この「エンカ」は「エンカウント」の略ですが、「エンカウント」という単語はそもそも辞書には存在しない和製英語という事をご存じでしょうか?
いつしか生まれたゲーム俗語から、そして若者言葉へ……
まずは世界で最も権威ある英語辞典であるオックスフォード英語辞典のサイトから、「encount」を引いてみると……検索結果、0件!
「エンカウント」は、「encounter」の略と言われています。オックスフォード英語辞典で「encounter」を引いてみましょう。すると「誰かと会う」という動詞としての使用法、「遭遇」という名詞としての使用法など、3件の検索結果が見つかります。
とは言え、ゲーム用語としては「encounter」はほとんど使われず、皆様「エンカウント」という響きの方が聞き覚えがあるのではないでしょうか?(実際、「エンカウンター」って言いにくいもんね)
ゲームの俗語としては、RPGにおいてダンジョンを歩いているとランダムで発生する戦闘を「ランダムエンカウント」、敵のシンボルがマップ上に表示されていてシンボルに接触すると戦闘が発生する形式を「シンボルエンカウント」という事も多いです。


ではなぜ、「エンカウント」がゲームの用語として定着したのでしょうか。これには諸説ありますが、1つには『ウィザードリィ』第1作で戦闘が始まるたびに「An Encounter」と表示されていたのが大きいのではないのでしょうか。

このゲームの表記こそ「An Encounter」で「エンカウント」ではありませんが、この表記は戦闘の度に表示られるために黎明期のゲーマーたちの印象に残り、そしてその黎明期のゲーマーたちは言いづらい「Encounter」を略して「エンカウント」と呼び、それが次第に定着していったのではないか……と筆者は推測しています。
本来の英語から見ると「エンカウント」は誤用ですが、時代と共に言葉は移り変わっていくもの。ゲームの俗語として「エンカウント」が定着するのも、そして若者言葉の一部として「エンカする」が使われるようになるのも、日本語の変遷としては自然なものかもしれません。