名作アドベンチャーゲームを多数手掛けたゲームデザイナー・イシイジロウ氏が、新たに『街 ~運命の交差点~』や『428 ~封鎖された渋谷で~』の遺伝子を継ぐ渋谷を舞台にした新作アドベンチャーゲームを制作します。過去作とは一切のつながりがない、あくまで完全新作として開発される本作ですが、『街』で雨宮桂馬を演じたあらい正和さん、『428』で御法川実を演じた北上史欧さんの主演が明らかになっています。そしてこの度、『428』で遠藤亜智を演じた中村悠斗さん、加納慎也を演じた天野浩成さんの出演も発表されました。
その情報をいち早く聞きつけたGame*Sparkは、イシイジロウ氏にお願いして出演者4名での座談会を実施!中村さんは遠方につきリモート参加でしたが、過去作当時のエピソードを多めに交えながら、新作に向けたお話をたくさん聞かせていただきました。
対談メンバー

『街 ~運命の交差点~』雨宮桂馬役:あらい正和さん(画像左から2番目 以下、あらい)
『428 ~封鎖された渋谷で~』御法川実役:北上史欧さん(画像最右 以下、北上)
『428 ~封鎖された渋谷で~』遠藤亜智役:中村悠斗さん(画像右から2番目 以下、中村)
『428 ~封鎖された渋谷で~』加納慎也役:天野浩成さん(画像最左 以下、天野)
『428』10周年イベントに呼ばれなかった天野さん、念願の復帰
――新作に出演されるということで、いちファンとしても非常に感激しています。皆さんいまの心境はいかがですか。
天野:やはり嬉しいですよ。僕、『428』の座組にこれまで呼ばれたことなくて、10周年記念感謝祭の時もあとから記事を見てみんなが集まってたのを知ったんですよ(笑)。
北上:事務所の関係で参加できなかったとかじゃないんですか?(笑)
天野:いや、実はそのあとイシイさんに「なんで!?」って聞いたんですよ。そしたら「天野さんSNSやってなかったので」……って。いや、SNSしか連絡方法知らないの!?もっと色々アプローチの仕方あるでしょ!!(笑)

あらい:イシイさんは直接伝えたかったんじゃないですか。
天野:そうなんですかね。だから今回僕が出演できることになったのも、きっと2年前にSNS始めたおかげですね。やっててよかったな(笑)。だからこれまですごく羨ましくて、この座組に戻ってこれたのは念願でした。
あらい:僕ももういい歳ですけど……燃えてますよね。イシイさんの情熱が燃え移ってます。
中村:僕もまたイシイさんの作品に出られるように、髪伸ばしつづけていた甲斐がありました。10周年の時はヒゲを伸ばして髪も短くしていたので、「お父さん来ちゃった?」なんて言われましたから……(笑)。リベンジです。

北上:それトラウマになってるんだ(笑)。
天野:いやいや、呼ばれないほうがトラウマだよ!(笑) 北上さんはどうでした?
北上:僕はここ最近ずっとバーの経営に専念していたので、できるかな……という不安はありましたね。でも、『428』は僕の中でもすごく大きなものだし、イシイさんにまたお声がけいただけたのが本当に光栄でしたから、きっちり務めさせていただこうかな!と出演を決めました。
――『街』からも『428』からも、もうかなり時間が経ちましたよね。
あらい:ですね。『街』はもう27年前です。
北上:『428』も2008年リリースだからもう17年ですね。撮影はその2年前くらいにやってたから、世に出るまで結構かかったね。天野くんは当時いくつだったっけ。
天野:僕は20代半ばくらいでしたね。
中村:僕も撮影当時は21歳でした。
セリフを覚える大変さ

あらい:そういえば小耳に挟んだんだけど、『428』って演者は全員セリフを覚えてたの?
天野:覚えてました……よね?
北上:いや、天野くんはあんまり覚えてなかった(笑)。とんでもない量のテキストを全部入れてくんだけど、天野くんは3行くらいだったよ(笑)。
天野:えぇ、そうでしたっけ(笑)。でも、加納は喋っても1行2行だったけど、御法川は一番喋るキャラだったから大変だったんだと思いますよ。
北上:そうだったっけねぇ……。撮影の時は、家帰って朝まで覚えて、次の日に現場行って演じるってのを繰り返してたな。台本も5冊か6冊ぐらいありましたよ。
天野:えっ、台本って全部貰えました?あの頃って、僕は自分の台本しか読んでなくて、他の人の展開を知らなかったんですよ。だから、急に別の人入ってきたな……みたいな(笑)。本当に加納の目線で演じてました。

中村:僕も5,6冊いただいて、ただでさえセリフ覚えてないのに、死にそうになってました(笑)。
北上:僕は全部もらってましたよ。物語の展開も全部知ってた。てか中村くんはプロデューサーに騙されてたんだもんね?(笑)
中村:そう(笑)。衣装合わせでセリフ覚えなくていいですよって言われていったら、他の人はペラペラセリフ喋ってるしショックだった。大変で、1週間で5kgくらい痩せました。裸で撮るシーンがあったから仕上げたのに、そのシーンは背中しか映らないし……(笑)。
――『街』のセリフはどうだったんですか?
あらい:『街』も台本をもらいましたよ。とんでもない量だったけど、俳優としては「セリフを覚えるのは当たり前」だからしょうがないと思ってました。で、現場に行ってみたら、喋らずにスチールだけ撮るんですよ!「これいいの!?」ってショックでしたよ(笑)。

天野:表情作るだけってことですか?
あらい:そう。それが大変なんですよ。喋ったほうが楽じゃないですか。
天野:そうですね。『428』は俳優たちが喋りながら、ずーっと写真撮ってましたもんね。何枚撮ったんでしだっけ?
――12万枚以上と言われてますね。新品のシャッターは10万枚越えたらメンテナンスが必要で、それを『428』の撮影だけで使い潰したと聞いています。
天野:すごいな。……いま話してて思い出したけど、俺、撮影のときはちょっと手抜いてセリフ覚えしてたかもしれない(笑)。ムービーのときはちゃんとセリフ覚えてたんだけど。
北上:やっぱり(笑)。

当時の現場の雰囲気
あらい:当時はFAXだったから、帰ったら香盤表を印刷した紙が大量に床に散らばっていて、ほぼ毎日FAX用紙を入れ替えるような状態でした。今はPDFのデジタルデータでもらえるから楽ですよね。
天野:僕は撮影が終わったときに明日のことを口頭で言われてた気がするなぁ。
北上:そんな事ある!?僕らのときもギリFAX文化で、データと共に貰ってた覚えがありますけどね。
中村:僕は「全部埋まってる感じで」としか言われてなかった気がしますね。スケジュールも口頭でした。

あらい:『428』の撮影現場ってどんな雰囲気だったんですか?
北上:なごやかでしたよ。
中村:僕は近野成美さん(※)とずっといたのもあってずっと緊張したり何が動いているかわかんなかったりしたんですが、天野さんとは1週間に1,2回くらい撮影現場でお会いした際はすごくリラックスして臨まれていて、オン・オフを切り替えられるプロだなと思ってましたね。
※近野成美さん:『428』亜智編のヒロイン的キャラ・大沢ひとみを演じた俳優。
北上:手抜いてたってこと?(笑)
中村:いやいや、現場慣れしてるなって意味です!(笑)
天野:中村くんとは仲良かった覚えがめっちゃある。中村くんは作中の亜智そのもので、渋谷を知り尽くしてて……なんか美味しいハンバーガー屋さんに食べに行ったよね。逆に北上さんとはあんまり接点なかったかな。
北上:そうね。でも終わってからは何回か一緒に飲んだし、喫茶店のシーンでは天野さんもいたから、終わってから牡蠣食べにいった覚えがある。こんな毎日現場続いてるのに、誰か当たるんじゃないかなと思いながら食べてたけど……(笑)。
天野:北上さんは当時からすごく落ち着いてて、めっちゃ大人な雰囲気ありましたよ。
北上:いやいや……僕は逆に天野さんに現場のルールや若い人への気の使い方を教えてもらいましたから。
――『街』の現場はどうだったんでしょうか。
あらい:めちゃくちゃ忙しかったですね。『街』は撮影部隊が3チームあって同時進行だったので、撮ってたらすぐそこで別チームが撮影やってる、なんてことはありました。
天野:あ、それ『428』でも同じで、結構気を使いました。一回、原付で帰ろうとして道玄坂走ってたらめっちゃ映り込んじゃって、上から「撮ってるよ!!」って言われました(笑)。
――撮影の合間とかはどうされてたんですか?
天野:俺はずっと漫画喫茶で寝てましたね。
あらい:僕は結構出っぱなしだったんですよ。朝から晩まで撮影して、翌日また朝から晩まで撮影して……って感じで。ほかの俳優さんはわからないけど、1ヶ月~1ヶ月半くらいその状態だったと思う。
『街』は3班に分かれて1ヶ月半で撮りきっちゃったから、とにかく休めなかった。1時間くらい休み取れることもあったけど、桂馬はトレンチコートだから脱いで着てが大変で……。トイレの時間とか考えると、もうこのままでいいやって桂馬の格好のままで渋谷でお茶しに行ったりしてましたよ。だから「なんか変なやつ来たな」って思われてたと思う。
天野:『428』は基本的に現場はひとつで、2ヶ月ごとに交代してたから休みは結構あったんですよね。衣装も普通にスーツだったし。

北上:僕はトレンチコートだったな。綺麗な状態のときはいいんだけど、物語的に爆発後の煤けたバージョンのトレンチコートもあって、さすがにその状態では歩けなかったな。
――人の多い都市で撮影するということで、苦労も多かったのでは。
天野:なにか揉め事が起きたら「自主制作映画の撮影です!」で押し切って、所定の場所まで逃げろって言われてましたね。

中村:僕の場合は「雑誌撮影って言え」と教わりましたね。で、近くに車があるからそこに逃げてって言われた。
北上:衣装の見た目に合わせて言い訳違ったんや(笑)。

――当時のことを考えると、まだ町中をパシャパシャ撮るみたいな文化が珍しかったですもんね。
あらい:そう、だから今は逆に、撮影してたらそれを撮られちゃうってリスクもかなり上がりましたね。TikTokとかに上げられるかもしれないし……(笑)。
天野:じゃあ今回は渋谷じゃ撮れないんですか!?
北上:なるべく小さいチームで、どれだけ「撮影っぽさ」を消せるのかが大事になってくるのかもね。
新作の出演を決めた理由、演じたい役
――新作につながるお話が出たところで、まだみなさん撮影には入ってないと思いますが、どんな役を演じたいですか。
北上:もしできるのだったら、御法川的な雰囲気の役は僕もやりたいですし、ファンの皆さんもどこか香りが残っていたほうが嬉しいですよね。

あらい:北上さんがおっしゃる通りかなと思いますね。僕、桂馬が人生初の刑事役だったんですよ。それまでは現代劇なら犯人、時代劇なら下手人とかなので、刑事はまたやりたいですね。
――天野さんも刑事を演じたいですか。
天野:加納を演じた当時は自分の年齢的にも新米刑事が似合ってましたが、さすがに今この年齢でそれをやるとヤバい奴なので(笑)。40代後半という年齢に似合う役をやりたいですね。
北上:昔は真っ直ぐな刑事だったけど、今は闇に触れて悪堕ちしてる……とかね。
天野:あ、それ嫌いじゃないな……。一直線なキャラじゃなくて、幅のあるキャラになりたいですね。
あらい:僕の部下になってこき使われる役で、裏では僕のことをくそみそに悪口言いながら働いてるとかどうだろう(笑)。
天野:その絡みいいですね!やってみたい。 中村くんはもう髪も伸ばしてるし、亜智みたいなキャラを演じる気満々だもんね?(笑)

中村:そうですね……あの感じの延長線上で成長したのもいいけど、やっぱり僕も悪堕ちしても面白いかも。どのキャラも悪堕ちしても面白いと思うんですよね。救いようのない世界みたいな。
北上:令和の渋谷で救いようのない話……どうやって終わるんだろ(笑)。
――皆さんゲームへの出演はあまりされてこなかったと思いますが、新作への出演を決めた理由は何だったんでしょうか。
あらい:断る理由がなかったですよね。イシイさんとお話した途端、もう選択肢はひとつしかないなと。
天野:僕もそうですね。イシイさんの熱量がすさまじかったですし、もちろんこれまで応援してくださったファンの方々の熱量もすごいですし、あと単純に僕が「楽しそうだな」って思ったのが大きいですね。楽しそうなことやれそうなら乗っかるしかない!って感じでした。
北上:僕はしばらく芝居から離れていたんですけど、イシイさんだったら多少グダグダでも許してくれるかなって……(笑)。というのは冗談ですけど、『428』は僕の中でも大きな役でしたし、イシイさんから声をかけてもらったのが嬉しかったんです。いまちょうど時間も空いているし、参加させていただこうかなと決意しました。

中村:僕は実は『428』以降の期間にいろいろあって、YouTubeで顔出しせずに活動していたら、10万人まで行けたことがあるんですよ。そちらはマネタイズできずにやめちゃいましたが……。
そこから、某海外大作「〇〇〇〇」のオーディションのオファーとかもあったんですけど、なんか自分が今更そうじゃないかもな~って思っちゃって。
天野:えっちょっと待って。「〇〇〇〇」断ってるの!? もう今からでもいいから出なさいよ!!

中村:(笑)。でも、そのお話の内容が4番手か5番手のオーディションに推薦しますよ~って感じだったんですよね。その作品のメインキャストの中に親友がいて、『428』の台本読みも手伝ってくれたんですよ。で、そんなことを思い出しながら、イシイさんから声がかかって、もうとにかく嬉しかったし、「絶対出たい!」って気持ちになれたんですよね。

あらい:やっぱみんな愛があるんだなぁ(笑)。
――『街』『428』のときはどういった経緯で出演されたんでしょう。
天野:僕はオーディション?オファー?からでしたかね。なんか、気づいたら加納になってました(笑)。最初ゲームへの出演って聞いても全然イメージついてないし、衣装合わせして話聞いてもピンとこないし、現場行ったらめっちゃスチール撮られるし、ずっとどうなるかわからなかったですよ(笑)。
あらい:僕は事務所から提案があって、一度制作陣とお話することになったんです。そのときに聞かれたことがあって、「コーヒー牛乳ってどう思う?」だったんですよ。で、「毎日飲みますよ!美味しいし!毎日飲めたら幸せだなぁ!」って言ったら、それが決め手になって桂馬役になれたという……。
でも桂馬というキャラにとって、大事だったんでしょうね、コーヒー牛乳は。正直、撮影中は「毎日飲めたら幸せ」って言ったことを後悔しましたけど(笑)。
――CMのオーディションみたいな決まり方ですね(笑)。北上さんと中村さんはどうでしょう。
北上:オーディションでしたね。面接に行ってイシイさんとお話させてもらって。当時僕はモデル事務所にいて、舞台やドラマも少しやるといった感じだったので、スチール撮影もムービー撮影もちょうど良いポジションだったのかもしれないですね。
中村:僕はオーディションでした。ただ、当時事務所の中で一回落とされてたんですよ……。でもマネージャーが諦めきれずに書類を勝手に出して、カチコミみたいな感じになるってことがありました(笑)。
――そんなヘヴィなエピソードがあったんですね……!
撮影環境、渋谷という街…イマと昔
――当時と比べると、撮影は本当に手軽になったと思います。演じる側としては、楽になった部分や、逆に苦労する部分はあるんでしょうか。
天野:僕は特撮をやらせていただいてたんですけど、一番最初がもう20年以上前なんですよ。当時は爆発はちゃんとやるし、「CG」よりも「合成」の時代だったんです。
あらい:ガソリンを爆発させてるんですよね。すごい迫力なんですけど、スタッフのテンションは「こんなもんでいいかな」みたいな感じで、「マジかよ!?」って衝撃でした。

天野:そうそう(笑)。変身シーンとかも一番最初に撮ったものをずっと使ってたみたいです。で、7年後にまた同じシリーズにお邪魔することがあったんですけど、その時はもうCG文化が入ってきていて、丸い球を「これが〇〇になります」みたいな感じで説明されて。
さらに、2年前頃にまた特撮にお邪魔したんですけど、その際はさらに進んで、もう完全にグリーンバック。でもリアルタイム合成の技術が発展してて、モニターには完全にできた画が映し出されてるっていう……。だから、今回別に渋谷で撮らなくていいんじゃないですか?(笑)。
北上:中村くんもそっちで撮れるよ(笑)。
中村:いや、近々東京に引っ越しますから!(笑)。
天野:(笑)。だから今は消したいものがあったら消せるし、爆発を足すこともできるし、なんなら渋谷が壊滅した絵とかも作れちゃうじゃないですか。本当にすごいスピードで進化してますよね。
中村:僕は技術的な面は全然わかりませんが、YouTubeをやっていたときに自分で台本を書いてみたり、動画の出す計画を立てたりとか、そういったバックヤード側の作業について学びがありました。それを表現者として使えるところがあれば、うまくフュージョンさせたいですね。
北上:「撮影隊」みたいな規模じゃなくても撮影できる環境下になっていると思うので、現場感がどうなるかは想像できないし、ちょっと楽しみですね。現場で生まれた発想がそのまま活かされていくような仕組みができたら楽しいですね。
――『街』の時とはさらに違いますよね。
あらい:『街』のときはデジタルじゃなくて、アナログのフィルムカメラだったんですよ。表情が鮮明に出過ぎるわけじゃないという利点はあったけど、やっぱり撮影にとんでもない時間がかかりましたから。ただ、今は今で俳優さんたちがより気持ちや表情を作り込むのに魂を込めないとだめですよね。
天野:思うんですけど、街ゆく皆さんはもう「撮影」というものに慣れてますよね。それほど珍しいものでもないから、あまり見向きされないかもしれない。

あらい:僕の経験では、地方のほうが撮影してても「なんかやってるわ」って感じでほとんど見向きもしてくれないんですよ。都心のほうが逆に、「撮影してる!写真撮ろう!」って人が多い。
天野:動きがあるシーンは怖いですよね。走ったりとか、大声だしたりとか、今の時代どうなるんだろう。
あらい:場所によっては結構問題になりそうだよね。
北上:いまは犯人を車で追いかけるときにちゃんとシートベルトしますもんね(笑)。
あらい:そうそう、タバコ吸うシーンがNGだったりするしね。
北上:まぁでも……なんだかんだ今回もスクランブル交差点走るんでしょうね!(笑)。
天野:またヒリヒリする数ヶ月間が始まるんだな……。
あらい:みなさん身体には気を付けておきましょうね!
天野:そうですね。もう肉離れも起こす歳ですからね。
北上:いやでも、僕らそんなに過激なシーンはないでしょう!(笑) ここにいる人全員40歳越えてるし。
――イシイさんに聞いたところによると、クラウドファンディングは若い人や女性も多く、おじさんたちと若い人たちの世代交代みたいな話を候補のひとつとして考えているそうです。
天野:なるほど、じゃあ若い子たちに任せよう。
あらい:でも、今の若い子たちは男の子も女の子も「おじさん」好きな人多いですよ。
天野:じゃあおっさんも頑張る系か……。もうこの座組だもんな、しょうがない(笑)。なんか久しぶりだけど楽しいな。この感覚で喋れるの20年ぶりくらいだよ。
出演俳優たちのゲーム事情
――少し話はそれるのですが、皆さんは普段ゲームは遊ばれるのでしょうか。
天野:複雑なゲームが苦手で、普段は簡単なパズルゲームみたいなのしかやらないですね。『テトリス』みたいな。
北上:僕は『428』をクリアまでプレイしました。それほどゲームと距離が近いわけではないのですが、コロナ禍でバーを閉めて家にいた時期があって、その時は娘の『どうぶつの森』を一緒に死ぬほどやってました。島の中に飲食店みたいなところを7軒くらい建てて。
天野:プライベートでも飲食店経営してたんですね。
あらい:僕もほとんどやらないですね。昔『バイオハザード』と『街』はやってましたが、『428』は傍観する立場でした。
中村:僕は高校が全寮制だったので、初めてゲームに触れたのが20歳くらいでした。といっても『ウイニングイレブン』や『メタルギアソリッド』を少しやってたくらいでモデルの仕事が忙しくなったので、ゲームとは縁遠いですね。『428』のスマホ版も消えちゃったし。
天野:えっ、スマホ版なんてあったの?知らなかった。
中村:一時期ランキング1位もとってましたよ。
過去作キャラへの思い入れ、新作に求めるもの
――皆さん、やはり過去作で演じたキャラへの思い入れはあるのでしょうか。
あらい:僕はありますねぇ。桂馬を演じた後に事務所のライブに出演したんですけど、思い切って桂馬の格好で出たら『街』ファンも来てくれましたし、いまラジオ番組で「教えて桂馬! お便り紹介」ってコーナーもあったりして、もう「桂馬」として喋ってることもあるんですよ(笑)。
北上:僕は御法川という男は個人的に好きですし、自分にない部分を持っているので、演じてて気持ちが良かったです。20年近く経ってもまだ御法川のことを好きでいてくれる人たちがいらっしゃるのも嬉しいですね。

中村:僕はそれほどたくさんのキャラクターを演じたわけではないですが、やはり亜智はいちばん熱量が高いですよね。僕、「天空の城ラピュタ」が好きだったんですよ。だから、いつかパズーみたいな役を演じてみたいと思っていたところ、「まさに」な亜智を演じられて、僕自身も好きなキャラでした。
天野:僕も加納好きですよ。建野との関係性もいいですし
――皆さんはこれからゲームを作り出す側になると思いますが、現段階で新作に求めているものは何でしょうか。
天野:いまこうして『428』メンバー3人と『街』の1人で集まっていますが、「同窓会」にはなりたくないなと思ってます。イシイさんはきっと新しいファンの方に向けても作っていくと思うので、このメンバーで新しいものを作っていきたい。
北上:おじさんが久々にあってワチャワチャしてるだけじゃなくて、「アベンジャーズ」みたいに素敵にやれたら最高ですね。
あらい:イシイさんとお話したときに、『街』と『428』の良い部分を融合したいとお話されて、それはすごく楽しいなと思ったんですよ。俳優さんも含めて、2つの作品を組み合わせてどういったものになるのかすごくワクワクしています。
中村:僕は昨日たまたま箕星(太朗)さんとお話をしたんです。今回アートディレクターで参加されている方なんですが、箕星さんは『428』が大好きだったそうです。2008年当時はクリエイターとしてはまだまだだったと仰られていたんですけれど、今見てみるとすごいクリエイターになられているんです。
クリエイターの方の中には、『428』を見て大きく成長した方がいて、イシイさんのところに集っているような雰囲気をすごく感じて、僕が演じるのならただ再出演するだけじゃなく、しっかり演者として勝負をつけなきゃいけないなと思っています。

2025年の「渋谷」とは
――2025年の「渋谷」はどういった街だと思いますか。
あらい:最先端を行ってますよね。こんな風になると思ってました?
北上:思ってなかったですね。僕は娘とよく109とかに行くんですが、毎回出口が複雑で「はよ完成せえや」と思ってます(笑)。
あらい:道玄坂の古い建物はなくなってますし、桜ヶ丘の方もだいぶ変わりましたね。唯一、センター街はなんとなく面影はありますかね。
天野:「バスケットボールストリート」!
北上:誰もその名前で言わんて(笑)。
天野:(笑)。渋谷は変わって、もう知らない街と化しつつありますね。でもその一方で、昔行っていた古いお店もあったりして。なんかより混沌としてるのかなと思いますね。
あらい:ちょっと行かないと出口わかんなくなりますからね(笑)。あと昔に比べたらキレイになりましたよね。僕が学生の頃―いわゆる「チーマー時代」の頃は結構汚かったですから。今は海外の方も来られるのもあってか、きれいになったなと。

天野:そういう街ってあまりないですよね。変わるとなったら六本木や新宿みたいに一回ドンと大きく変わることはありますけど、渋谷はずっと変わり続けている街だなぁ。
北上:あと、どんどん広くなってますよね。奥渋谷のあたりとか昔は何もなかったけど、今はすごいたくさんお店あるし。いつか肥大化して代々木上原も食べるんちゃうかな(笑)。
中村:僕の知り合いの外国人の友達は、東京の中で特に渋谷はバツグンにテーマパークに行くような感覚だと言ってました。あそこでご飯食べて、あそこでショッピングして、丸1日使うみたいな。
――私も10年ほど前に『街』と『428』の聖地巡礼に行ったんですが、この10年ですごく変わりましたね。
あらい:いろいろなところが無くなってますよねぇ。
天野:でも恵比寿の喫茶店(『428』作中では「ロートレック」)はまだありますよね。
北上:ちょいちょいドラマでも使われてますよね。
――現代の渋谷ではどのような物語が描けると思いますか?
あらい:例えばですが……いまはAIの勢いがすごいから、AIが支配して暴走している渋谷をアナログな我々が止めるって感じのお話はどうだろう。
北上:若者に助けてもらいながらとかね。

あらい:で、誰かが敵側のスパイだったりするんだ(笑)。
天野:若い子が出てくるんだったら、全力で若い子たちを盛り上げたくないですか?若者の活躍を、おじさんたちがサポートするみたいな。
昔はやはり自分が出ることを第一に考えていたけど、47歳になった今、もちろん自分も輝けるよう精一杯やるんだけど、若い世代のことを考えることも多いんですよね。
中村:渋谷はずっと色が変わり続けているじゃないですか。そこで、もう1回作品を描く時点でもう「勝ち」だと思ってて。映像として残っていくのにも意義がありますし、渋谷でこの30年もこうしてアドベンチャーゲームを作り続けている人たちがいたんだと後世に残っていくのも、歴史的にすごいことなんじゃないかと思いますね。
――では最後に、新作に出演する意気込みと、ファンに向けたメッセージをお願いします。
天野:今から皆さんのお手元に届くのは2年か3年先のことになるとは思うんですが、その分待った甲斐があったな、これが見たかったんだと言ってもらえるようなものを実現できるよう頑張ります。それをイシイさんが頑張りますので(笑)、自分はその一部として尽力できればいいなと思います。
あらい:『街』から30年近く、『428』から20年近く経ってもいまだにファンの方がこうして熱くなってくれるのは嬉しい限りです。やはり、どちらの作品も名作で、これだけ愛される作品でしたから、次の作品は「名作」を越えて「伝説」の作品になれたらいいなと思います。
中村:皆さんが求められている世界観は、もはや僕がやりたいだけのものではないんだろうなと思います。17年間愛を送ってくれたファンの方に向けて新しいキャラクターを作れると良いですね。いまから2年、3年は確かに長いとは思いますが、その価値は絶対あるということを今日お話して確信しました。
北上:本当に今回出演させてもらえるのは光栄ですし、もう50半ばでこれだけの大役をいただけるのはありがたいことです。ベストを尽くして皆様の期待に応えられるように挑みます。
ゲームファンがすごいなと思うのは、20年前の作品をいまだに愛を持って愛し続けてくれていることです。そんな方々を裏切らないような状態で臨みたいと思います。
――ありがとうございました!

『街』からは27年、『428』からは17年という長い年月が経っても、この4名の中にはいまだファンと同じくらいの愛があることがわかりました。「同窓会にはしたくない」という言葉がどのように新作に活かされていくのか、今から楽しみです。
「渋谷実写アドベンチャープロジェクト」始動のクラウドファンディングは、うぶごえにて7月25日(土)23時59分まで支援を受け付けています。今後どんどん大きくなっていくであろう本作をいち早く支援してみてはいかがでしょうか。