己の武芸一つで世を渡り、弱きを助け強きを挫く。その武技は水の如く流麗に、岩の如く剛健に、風の如く疾く駆け、鳥の如く宙を舞う。中国が誇るアクションヒーロー「武侠」の世界をNetEase Games/Zhurong StudioがカジュアルなオンラインRPGとして表現した『逆水寒(Sword Of Justice)』が、このたびグローバル展開を発表し、2025年内に日本でもPC/モバイル向けにリリースされることが明らかになりました。

本作は日本に先行して中国でサービスを展開しており、現地での反響は「正式サービス開始10分で同時アクセス数100万以上」「iOS/Android双方のアプリストア総合ランキングで1位を獲得」など、枚挙に暇がありません。「武侠」という中国文化を選んだポイントも相まってか、NetEaseとしても内部記録を立て続けに更新しています。
『逆水寒』の魅力はオーセンティックな古典芸術のエッセンスを注ぎ込んだ世界です。本作は1986年の武侠小説「四大名捕逆水寒」に基づいたタイトルで、Zhurong Studioによって1000人体制で4年間に渡り開発され、7億元(約140億円)もの資金が投じられたという大作です。またNPCにはAIのディープラーニング技術を活用し、町などにいるキャラクター達がプレイヤーの選択や行動を学習。生活の営みに個性が反映され、自律性の高い振る舞いや反応を見せてくれます。

本作の舞台は、芸術文化が花開いた北宋末期。美術や工芸だけでなく「大道芸」や「茶屋」「屋台」「遊覧船」といったアクティビティ&スポットのほか、当時の文人たちが足繁く通い様々な創作を生み出したという「遊郭」など、歴史を追体験できる様々な要素が広大なオープンワールドの中で描かれています。

その世界の中で語られるのは、復讐のため仇敵を探し出す壮大な物語。それを彩る音楽やアクションは伝統芸能アーティストを招いて収録したという本格的な演出も『逆水寒(Sword Of Justice)』ならではの特長です。
中でもゲームに登場する琴のモデル及び演奏は、国賓歓待に使われたほどの名琴「九霄環佩(きょうしょうかんばい)」を使用(奏者は金润一氏)。唐代作で1000年越えの国宝そのもので、文字通り天下一品の音色が聴けるだけでも結構凄いことですよ。ゲーム内のイベントにはこの琴にまつわるエピソードもあるとか。
『逆水寒(Sword Of Justice)』 公式サイト


ストーリーには古典故事からの引用も随所に登場し、「三国志」だけでもそこそこの量が台詞に入っていました。文官同士の会話だとこれらの教養が特に多いので、こちらの知識まで試されているようで、知っている故事が話題に出るだけでも歴史好きには結構面白いのではないでしょうか。

『逆水寒(Sword Of Justice)』で描かれる北宋末期は「水滸伝」をはじめとする武侠小説で人気の舞台です。日本ではあまり馴染みのないこの「武侠」の世界に飛び込む前に、たっぷりとゲームの魅力を味わうための中国時代劇の入門として、北宋末期の時代背景を簡単にご説明しましょう。
『逆水寒(Sword Of Justice)』がベースにしている「北宋末期」とは?
『逆水寒』の世界を描写するにあたって参考にされたのが、故宮博物院の秘宝「清明上河図(せいめいじょうがず)」です。北宋時代の首都・開封(汴京)の賑わいを長さ5メートルにわたって描写し、700人以上に及ぶ民衆の暮らしが細密に写し取られています。百聞は一見に如かず、故宮博物院のデジタルアーカイブに高精細画像が掲載されているので、まずはこちらからご覧ください。縦幅は24センチなので、22インチのモニターで写すとほぼ原寸大になります。

『逆水寒(Sword Of Justice)』の主人公が修行を積んだ奇岩地帯の三清山は、道教において仙人が住まう地とされ、古くから山水画のモチーフとして好まれました。そうした名画に描かれてきた世界に飛び込んで遊べるという点は、『逆水寒』の魅力の一つと言えるでしょう。

「清明上河図」が描かれたのは北宋末期の皇帝「徽宗(きそう)」の時代で、その治世は武侠小説の成立に大きく関わりました。この作品は皇帝自ら整備を手掛けた組織「翰林図画院(かんりんとがいん)」で制作され、徽宗は文化振興の業績で優れた文人として評価される一方、芸術にかまけて政治をおろそかにし、北宋を滅ぼした愚かな皇帝とも言われています。

宋の時代は北側に「西夏」「遼」という異民族の敵国が二つあり、軍事力が弱い宋は都度金銭を渡すことで戦を収めてきました。遼の東側の女真族が独立して「金」を起こすと、宋は金と海上の盟を結び、共闘して遼を潰そうと動いていました。この対外政治に失敗したことが北宋崩壊の主な原因です。

徽宗を取り巻く官僚達は権力や私欲のために媚び諂い、政治の腐敗は極まって、絵に描いたような私欲の悪政で民衆を苦しめました。「水滸伝」でも扱われるほど有名なのが、宰相の蔡京が指示した「花石綱」というもので、皇帝の庭園造営のために全国から珍しい花や石を集めさせました。誰かの所有物であれば強奪同然に買い上げたり、巨大な岩を運ぶのに邪魔な民家や橋は壊したりと、人の命よりも芸術優先と言われても仕方が無いようなことが行なわれました。
この花石綱をきっかけに始まった民衆蜂起が「方臘(ほうろう)の乱」で、この内乱鎮圧に兵を取られて金と交わした同盟戦争に出遅れてしまいます。その後も続く反乱で宋は同盟の履行ができず、業を煮やした金は逆に宋に攻め入り、首都を陥落して皇帝を含む朝廷関係者をまとめて虜囚にしました。この「靖康の変」によって北宋は滅亡し、遷都した「南宋」へ時代が移ります。

武に心得のある者達はそうした官憲の悪政が及ばない辺境の地に拠点を構え、朝廷から独立した勢力を起こします。
『逆水寒(Sword Of Justice)』のプレイヤーもいずれかに所属することになるそれぞれの派閥ごとに信条が異なり、抗争も繰り返されるような武がものを言う世界です。武侠ジャンルではそうしたアウトローの界隈を「江湖」と呼び、己の信条に従って生きる武芸者達を活躍させます。権力を笠に着た悪党達を懲らしめる。言わば痛快娯楽時代劇でぶん殴ってやりたい官憲共の筆頭が、この北宋末期には勢揃いしているという訳です。武侠が活躍するにはもってこいですね。

政治を官僚に丸投げして遊興三昧の日々を過ごした徽宗は、時に「無能」と評されるほど散々な言われようですが、風流天子とも呼ばれるほど絵画や書画の腕は別格で、宮廷御用達の陶器窯、いわゆる「官窯(かんよう)」も徽宗が設置しました。これらの業績から徽宗は中国文化史の重要人物として挙げられます。前述の翰林図画院で洗練されたリアルタッチは「院体画」と呼ばれ、宋時代の絵画は伝来した日本の水墨画にも影響を及ぼしました。徽宗筆の「桃鳩図(ももはとず、とうきゅうず)」は日本の国宝に指定されています。
宋の時代は徽宗だけで無く、磁器の窯元である景徳鎮の設置など、様々な文化の発展が起こった時期で、これは宋を起こした初代皇帝・趙匡胤(ちょう きょういん)の意向であると言われています。印刷技術や火薬の発展もこの頃で、それらが後に欧州に伝来してルネサンスの変革を起こします。
交易で栄えた開封は、当時の世界で最も繁栄した都市になりました。豪華絢爛な都会の文化と蔓延する政治腐敗。この清濁併せ持つ「北宋末期」という時代は、エンタメに都合が良かったと言えます。
『逆水寒(Sword Of Justice)』 公式サイト『逆水寒(Sword Of Justice)』のゲームプレイ
中国美術×現代のゲーム開発技術で描かれるリアルな世界


「清明上河図」で描かれた人々の営みをベースにしている本作では、レイトレーシング技術を用いた表現や天候システムで、世界の広大さを感じ取れます。イベントやハウジング、農業や経営など、その広さに相応しいコンテンツも取り揃えています。


上述した「清明上河図」のイメージと比べながら、街中にある茶屋や窯元といったスポットを眺めると、その賑いをより深く体験できるかもしれません。今後のアップデートでは「杭州」の街並みも再現されるとのことで、「西湖」を中心として寺院や様々なランドマーク、地方の伝統舞踊や民芸など様々な文化要素の追加が控えているそうです。

MMORPG初心者も玄人も楽しめるゲームプレイ

『逆水寒(Sword Of Justice)』のゲームプレイはかなりカジュアルに作られており、クエスト目標への移動もワンタップ。最小限の操作でテンポ良く物語を進められます。パーティ編成が必須のマルチプレイコンテンツも、ソロを選択すれば自動操作キャラクターを加えてすぐにプレイが始まります。
システムの特徴は「執る手段は違っても辿り着く地点は同じ」を意味する「殊塗同帰」を標榜しており、メインストーリーを最優先しても、サブコンテンツを満喫しても、どのようなプレイスタイルでも格差が生まれない育成になっています。また、課金アイテムはコスメティックに限定し、いわゆるPay to Winはありません。
武術や舞踏ももちろん本格派。専門家監修のアクションを軽快に楽しめる

武侠の華はなんと言ってもスピードと迫力があるアクションです。ストーリー上のイベントではたくさんの殺陣シーンが盛り込まれていますが、モーションキャプチャーで武術家の動きを収録しているとのことで、どれもテンポ良く動きのキレは抜群です。油断できないQTEもあり、決して「ぼーっと聞き流す」だけの時間にはならないと保障しましょう。


いくらかフィックスがあるものの、バトルアクションやゲーム内で見られる舞踊も専門家監修によるモーションキャプチャーの動きをベースに作られていて、ポージングのあちこちに「らしさ」が備わっていました。


習得したアクションスキルは最大8種装備でき、選択した流派を問わず自在に組み合わせたコンボをセットします。弱い敵なら連打でガンガン蹴散らす爽快感がありつつも、強敵相手では大技回避やQTEがスパイスに加わります。天候などに応じた燃焼や水濡れ、ステージ弾き出しで一発KOといった環境の要素もあり、手軽に戦いつつも活用できればロマン的な活躍も出来るかも知れません。

AIエンジンを搭載。活き活きとした感情共有型NPCが街を彩る
本作の大きな目玉の一つが「AIによるNPCの挙動制御」です。オンラインゲームでどうしても避けて通れないのが、何時も同じ事しか話さないNPCで、一通り内容を確認してしまえば、再び話しかける動機もなかなか生まれません。『逆水寒(Sword Of Justice)』ではNPCの挙動や会話にAI機能を加え、江湖の情勢やプレイヤーの功績を反映した内容を常に話し続けられるようになりました。
通行人の会話で得られた情報は「風聞」として記録され、特定の主要NPCのおつかいクエストだけで無く、街中を歩き回って噂話からクエストを見つける場合もあります。さらにキャラクターとは顔見知りになって、文字や音声の入力で対話することも可能です。残念ながら試遊の時点では中国語のみの対応で、いずれ日本語会話の実装を期待します。


オンラインRPGには珍しくシナリオ分岐も備えています。町の噂話を耳にしているか、特定のアクションを実行していたかなどで選択肢が増え、メインクエスト一つだけでも結構な量の展開違いが用意されています。後からやり直しできるので、最初は自分の好きなように選んでも充分に楽しめます。

基本無料でありながら物語を進めるのに一切の制約がなく「金にものを言わせない」遊びを提供する『逆水寒』は、気の向くまま江湖を駆け回る自由闊達な武侠を誰でも手軽に演じることができます。なにかとしがらみが多いこの世の中、モバイルから時代を超えてあなたも痛快時代劇の主人公になってみませんか?

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