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日本が一番クレイジーだった時代―『龍が如く0 誓いの場所 Director's Cut』から見えてくる、「バブルの光景」を観察してみよう

『龍が如く0』から見る、日本のバブル時代!

ゲーム Nintendo Switch 2
日本が一番クレイジーだった時代―『龍が如く0 誓いの場所 Director's Cut』から見えてくる、「バブルの光景」を観察してみよう
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ニンテンドースイッチ2のローンチタイトルとして発売された『龍が如く0 誓いの場所 Director's Cut』。2015年3月にPS3/PS4用ソフトとして登場した『0』の物語が、ニンテンドースイッチ2の画面で躍動的に展開されます!

時代は1988年、いわゆる「バブル景気」の真っ只中。高価な服を身にまとった人が万札を振り回し、タクシーを停めていた時代です。神室町も実体のない好景気の只中に飲み込まれ、振り向けば露出度の高い服を着たお姉さんがあちこちに立っています。

カネが物を言う狂乱の時代、我らが桐生一馬は若手の任侠として借金取りの仕事を請け負っていました。そんなある日、神室町にあるコートヤード(乱立した建物の中にある僅かな空き地。作中では「カラの一坪」と呼ばれます)を巡る陰謀に巻き込まれてしまいます――。

この記事では、『龍が如く0』をプレイしながら「狂乱の時代の光景」を振り返っていきたいと思います。

◆公衆電話は貴重な通信手段

我々現代人は、スマートフォンと呼ばれるガジェットに毎日触れています。

しかし、1988年にはそのようなものはもちろんありません。あるのは「ショルダーフォン」と呼ばれる車載・車外兼用携帯電話とポケットベルです。そして、この時代の桐生はポケベルを所持しています。

これより少し前に通信事業の自由化が国の施策として行われ、直後にモバイル機器が一気に普及し出しました。ですが、当時のポケベルの通信料は個人が気軽に利用できるほど安くはなく、桐生もあくまで「仕事に必要だから」という理由でこれを持っていた(持たされていた?)のではないでしょうか。

そんな通信環境ですから、一般人が連絡のために利用するのは専ら公衆電話です。

『龍が如く0』でも、電話ボックスが重要な連絡手段として登場します。何しろそれしか連絡手段がなかったため、当時の人々は常に電話をかけるための小銭か、テレホンカードを常備しておく必要がありました。中には使用済みテレホンカードのパンチ穴をフィルムで覆って、再び使えるようにする人も。もちろん、これは犯罪です!

◆男女の出会いツール「テレクラ」

電話といえば、テレフォンクラブを忘れるわけにはいきません。

テレクラは、携帯電話が普及する以前は唯一無二といっていいくらいのマッチングツールでした。個室に電話機が置かれ、男性がその中で着信を待ちます。女性と電話を通じて会話し、話がまとまれば店外へ出てデート……ということもあります。

筆者の記憶では、西暦2000年を少し過ぎたあたりまで都内の駅付近にテレクラがありました。『龍が如く0』で描かれている1988年は、まさに「テレクラ全盛期」。出会いを求める男性が足しげく通っていました。中学高校時代(90年代後半から2000年代前半)の筆者が目にしていたテレクラの派手な看板は、今考えればバブルの残光のようなものだったのかもしれません。

◆街のあちこちにタバコ自販機が!

また、この時代の神室町には至るところにタバコの自販機が設置されています。

昭和のタバコ自販機にはtaspoのような成人認識機能がまだなく、またタバコ屋でもお客さんの年齢をわざわざ聞くことはしませんでした。子供が親のお遣いとしてタバコを購入することができたほどで、筆者も物心ついた頃からタバコ自販機を操作していました。

厚生労働省が2023年に実施した「国民健康・栄養調査」の結果によると、喫煙率は男性25.6%、女性6.9%。しかし、1988年のそれは厚労省の資料では男性56.1%,女性9.4%とあります。今よりも遥かに喫煙率が高かった時代、飲み屋でも職場でも路上でも、誰しもがタバコを遠慮なく吸っていました。したがって、タバコ自販機はなくてはならない生活インフラのようなものでもあったのです。

◆バブル期は「コンビニ黎明期」

『龍が如く』シリーズにお馴染みのコンビニ、ポッポとMストア。『0』でもこれらのお店は健在ですが、しかしこの当時のコンビニは「確立して間もない店舗形態」でもありました。

80年代までは、まだ町の随所にフランチャイズチェーンではない個人商店が数多くありました。それらの店舗が90年代に入るとより強い競争力を求めて、大手コンビニのフランチャイズに加盟した……という流れが存在します。

ただ、繁華街や商店街によってはコンビニの進出を警戒する場合もありました。これはアメリカの地方都市で地元住民がウォルマートの出店に大反対していたのと同じ理屈で、コンビニがその地域の伝統的な商業形態を根こそぎ破壊してしまうと思われていたからです。

1988年の神室町にコンビニがあるのは、もしかしたらこの繁華街が先進的な目を持っている証かもしれません。

◆誇張された「バブル期のディスコ」

『龍が如く0』の神室町には、マハラジャというディスコが存在します。

そこではやたらと短い丈のタイトミニワンピース(いわゆるボディコン)を着た女性が、お立ち台の上で踊っています。目のやり場に困るくらいの露出度の女性を目当てにやって来る男性も多く、バブル期のディスコはまさに「現代の不夜城」として繫華街に君臨していた……と言いたいのですが、実のところ『龍が如く0』のディスコはいささか脚色されているきらいがあります。

というのも、「扇子を持ったボディコンのお姉さんがお立ち台の上で踊るディスコ」はバブル期のものではなく、バブル期が終わった時代のものだからです。

「お立ち台の聖地」ジュリアナ東京の開店は、1991年5月15日。この頃、既にバブル株価は崩壊していました。ジュリアナ東京の全盛期だった92年と93年は、いよいよ不景気が一般庶民の実感として及んだ時期です。

これに関して、TBS NEWS DIGが素晴らしい記事を配信しています。

しかし、ちょっとおかしなことがあります。

ジュリアナスタートの91年、すでに株価においても地価においてもバブルは崩壊していました。

ジュリアナ全盛期の92年から93年にかけては、不動産や金融関係でなくとも不景気の波をかぶっていた頃で、すべての人にとって、仕事でもうまくカネがまわらず、就職も厳しくなり「なんだかおかしいな」と思い始めていた頃でした。

その憂さを晴らすように、人びとは「ウォーターフロント」に集い、踊り狂いました。

バブルの象徴どころではありません、バブル崩壊後のヤケクソ踊り、あるいはバブルの残り火ダンス、それがジュリアナの実体だったのです。

だから当時それを分かっていた(一部の)人は、ジュリアナのことを、我を忘れるための「仮面舞踏会」、あるいは「ええじゃないか」になぞらえました。

あれから、30年が過ぎ、そのあたりのディテールを忘れてしまったメディアが、絵柄の派手さゆえに「ジュリアナ=バブルの象徴」としたのでしょう。

『ジュリアナ最後の日、「バブルの象徴」ではない、という事実』-TBS NEWS DIG 太字は筆者)

幕末期に発生した「ええじゃないか」騒動は、物価が高くなり治安もめっきり悪くなった時代に「もうこうなったらどうとでもなれ!」という庶民のヤケクソ精神から発生した出来事です。徳川幕府に対する庶民の不信感が視覚化された騒動でもありました。

ここでは、「バブル期を生きた人は“今はバブルだ”という実感は全くなかった」ことに注目する必要があります。

◆「今がバブル」だと思っていなかった!

『龍が如く0』のオープニングムービーには、1万円札を振り回しながらタクシーを呼び止めようとする人たちが描写されています。

バブル時代の繫華街は、常にタクシー不足。そのため、メーター料金ではなく1万円をお釣りなしでポンと払ってでもタクシーを利用したいという人が常にいました(メーターは回しておくけれど、お釣りは受け取らずチップとして運転手に渡す考え方)。ですが、当の本人たちは「自分たちが金持ちだからこのような乗り方ができる」と思っていたわけではないはずです。むしろ「自分たちは貧乏で、タクシーに払えるのは1万円だけ。一乗りで10万円も払える金持ちには勝てない」と思っていた可能性があります。

ですから、『龍が如く0』の登場人物も「今はバブルで景気がいい」などとは言いません。「今現在はバブルなのか?」というのは、経済学者でもなかなか分からないこと。そうしたことは脇に置いて、どんな状況下でも自分自身の信念を貫き通した人がその後の「失われた30年」を力強く生き抜きました。そう、桐生一馬のように――。

そんな『龍が如く0』は、我々が困難な時代を生き抜く上でのヒントを内包した熱いタイトルです!

【参考】

令和5年「国民健康・栄養調査」の結果-厚生労働省

国民栄養の現状(昭和63年)-厚生労働省

『ジュリアナ最後の日、「バブルの象徴」ではない、という事実』-TBS NEWS DIG


龍が如く0 誓いの場所 Director's Cut -Switch2
¥4,855
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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