■RPGの面白さを掘り下げた『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』

初代『ドラクエ』は、1作目ということもあり、この作品にしかない特徴が数多くありました。一方、ファミコン版『ドラクエII』の場合は、独自要素もあるものの、後のシリーズ作に繋がった「この作品から始まった要素」が多数存在しています。
本作にしかない特徴や新要素などが合わさって、『ドラクエII』の“個性”が形成されました。
■シリーズ初のパーティ編成

『ドラクエII』では、ふたりの王子と王女による編成で冒険が進みます。前作が勇者の一人旅だったため、パーティーを組むのは本作がシリーズで初となりました。
キャラごとに得意な分野や使えるじゅもんが異なっており、それぞれの長所をどのように活かし、互いの弱点をどうやって補うか。戦略性が一気に広がります。
ただし、仲間になるキャラクターや職業は決まっており、自由な編成はできません。これも、まだRPGに慣れていないプレイヤーに向けた段階的な配慮でしょう。ちなみに自由なパーティ編成は、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』で実現します。
味方が3人に増えて頼もしくなりましたが、この変化に合わせ、敵も複数登場するようになりました。多数対多数による乱戦は当時のプレイヤーたちに新たな刺激を与え、RPGの面白さが一段と深まったと言えます。
■使い勝手がちょっと良くなった「ルーラ」
『ドラクエII』でも重要な「ルーラ」ですが、本作でも「ルーラ」の目的地を自由に選ぶことはできません。しかし、初代『ドラクエ』と比べると、使い勝手は一段階あがっています。
当時はゲームデータをセーブする手段がなく、ゲームデータを暗号化した「ふっかつのじゅもん」をメモし、プレイ再開時に入力することで継続的にプレイできます。そして、この「ふっかつのじゅもん」を最後に聞いた場所が、『ドラクエII』における「ルーラ」の行き先となったのです。
初代『ドラクエ』の場合、「ふっかつのじゅもん」が聞けるのは「ラダトームの城」のみ。しかし『ドラクエII』では、「ふっかつのじゅもん」を聞ける場所が複数あるため、「ルーラ」による帰還先はひとつに限定されていません。
「ここに戻りたい」という場所で「ふっかつのじゅもん」をあらかじめ聞いておけば、「ルーラ」の行き先を任意で指定することが可能に。コマンドひとつで自由に選択できない不自由さはあるものの、初代『ドラクエ』よりは便利になり、後の作品よりも不便な「ルーラ」も、『ドラクエII』が持つ“個性”と言えるでしょう。
■「船」で広がる冒険感

初代『ドラクエ』の移動は、徒歩と「ルーラ」による帰還のみでしたが、『ドラクエII』では新たに「船」という移動手段が増えました。
大海原を行き来し、新たな大陸に乗り込むこともあれば、川を遡上して秘境を目指すこともあり、冒険の幅が一気に広がります。船の登場により、世界をより広く描くことができるようになりました。
しかし、船の移動はロマンだけではありません。航海中も敵と遭遇するため、戦いの舞台も海にまで広がっています。初めての“船上の戦い”に、テンションが上がったプレイヤーも多いはず。
また船だけでなく、「旅の扉」という移動手段も増えました。ふたつの地点を繋ぐ特別なゲートのようなもので、行先は決まっているものの、これも冒険の幅を広げてくれる存在です。
■冒険のアクセントになった「ふくびき」
もうひとつ忘れられない“個性”といえば、『ドラクエII』の「ふくびき」です。実際はスロットのようなミニゲームになりますが、3つの絵柄を揃えることでその柄に応じた景品をもらうことができます。
いい景品になるほど有用性も高く、厳しい冒険の助けになります。また単純に、当たること自体がちょっと嬉しく、長い旅路のちょっとしたアクセントと言えるでしょう。
「ふくびき」を楽しむには「ふくびきけん」が必要です。買い物をすればランダムでもらえるほか、宝箱に入っていることもあり、冒険を続けていくと自然と手に入ります。王子王女の旅にちょっとした“嬉しい”を足してくれる「ふくびき」も、『ドラクエII』らしい遊び心のひとつです。

HD-2D版『ドラクエI&II』に先駆けて登場したHD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』では、「とくぎ」や新職業の導入といった新要素が盛り込まれ、『ドラクエIII』の“個性”のひとつとなった「自由なパーティ編成」の楽しさがより膨らみました。
HD-2D版『ドラクエI&II』が見せてくれるであろう進化と“個性”を心待ちにしながら、遊べるその日をゆっくりとお待ちください。