日本から世界に広がったコスプレは、各地でそれぞれの文化と混じり合い、独自の発展を遂げました。そのなかでも今回は、台湾の「カウントマン」にフォーカス。コスプレイベントで活躍するカウントマンたちの役割に迫りながら、特徴のあるコスプレ文化について紹介します。
2025年2月7日~9日の3日間、台湾台北市の花博公園争艶館にて、台湾最大規模の同人誌即売会「Fancy Frontier 開拓動漫祭44(通称、台湾FF)」が開催されました。台湾では日本以上に同人イベントの中心はコスプレイヤーです。広場は大勢のコスプレイヤーとカメラマンの姿で埋め尽くされるほどで、そこでは日本のイベントとは違った撮影風景を見ることができます。

日本ではコスプレイヤー1人に対し、カメラマンが列を作って順番に撮影するケースが多く見受けられます。しかし、台湾は並んで撮影することがほとんどありません。1人のコスプレイヤーを多勢のカメラマンが囲んで撮影。日本では混雑回避のために、あまり見られなくなった囲み撮影が台湾の主流なのです。
そして、「台湾FF44」ではサークル参加する日本人コスプレイヤーが増えたことで、広場でも囲み撮影される日本人コスプレイヤーが多く存在しました。しかし、初めて参加した場合、言葉の壁に加えて現地の撮影ルールの違いに戸惑うでしょう。一度始まった撮影を中止したくても、言葉でうまく伝えられません。そうした際、台湾カメラマンが囲み撮影のカウントダウンをしてくれることがあります。そんな「カウント」というサポートに特化したカメラマンを会場で見つけました。
台湾出身で、現在は日本在住のカメラマンの「じゅりあん・しょう」さんは、会場で困っている日本人コスプレイヤーがいると積極的に声をかけて、囲み撮影の仕切りをしています。事前に台湾でのアテンドを依頼されることもあるとのこと。
今回も、日本の人気コスプレイヤーを複数人サポートしていました。彼のすごいところはカウントをエンタメにまで昇華させたことです。彼ほど日本語が堪能な台湾カメラマンは会場で見かけないですし、普段は日本に住んでいてイベントに参加しているため、日本人コスプレイヤーとの繋がりもあります。

囲み撮影となると、コスプレイヤーとしてもできるだけ多勢のカメラマンに撮って欲しいと願うでしょう。どの子を撮ろうかと会場を歩いているフリーのカメラマンが自然と集まってくることはありますが、離脱も多いのが現実です。基本的に一般参加のコスプレイヤーでも、アシスタントしてくれる人が付いていることが多く、囲み撮影の仕切りはしてくれます。しかし、カメラマンの満足度を高め、楽しかったと思ってもらえなければ、新規のファン獲得は難しい側面もあります。有名コスプレイヤーであればあるほど、混乱も発生してしまうので、コントロールしてくれるカウントマンの力量も重要になります。

「じゅりあん・しょう」さんは、まず声が大きく、はっきりと響き渡ります。その上で、前列のカメラマンにはしゃがんで、後列のカメラマンが撮影できるように配慮できます。筆者も現地でカウントを試したことがあるのですが、この前列と後列の仕分けをお願いするのも相当難易度が高いと感じました。しかし彼は、1分~3分ごとに前列と後列を入れ替え、それと同時にチームメンバーには「今は誰々がここにいるよ!撮影しませんか?」と呼び込みをさせます。会場で見かけるカウントマンの中でも、本当にスムーズな仕切りでした。何よりもリーダーシップがあります。


今回参加した日本のコスプレイヤーの「猫田あしゅ」さんも、「仕切ってくれて心強かった」と感謝を伝えています。また、台湾でも非常に人気が高い「月海つくね」さんは、広場の外に出ての大型囲み撮影が定番になっていますが、ここでも多勢のカメラマンを誘導できるリーダーシップがあるのが「じゅりあん・しょう」さん。台湾最大級の囲み撮影は、あれだけの人数がいるのに全員が楽しい時間を共有し、撮影の合間も歓声を送ったり、笑いがあふれたり、コスプレイヤーが最も活きるエンタメに昇華されていました。


コスプレ界隈はカメラマンの競争も激しく、撮影が上手いだけでは差別化が難しくなっています。彼のように、一芸を高めること、自分の強みをアピールすることは、日本のカメラマンも参考にできることが多いのではないでしょうか。

じゅりあん・しょう(X:@Shao_88129)