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「MSX」が42年の時を越え生まれ変わる!「MSX3」とは何か

「MSX DEVCON TOKYO 1」が2022年9月3日土曜日に東京大学工学部の講義室で開催されました。

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「MSX」が42年の時を越え生まれ変わる!「MSX3」とは何か
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  • 熱弁を振るう西和彦氏。話の面白さは相変わらず。
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かつてホビーパソコンとして愛された「MSX」。その新たな展開を告げる「MSX DEVCON TOKYO 1」が2022年9月3日土曜日に東京大学工学部の講義室で開催されました。

MSXの生みの親・西和彦氏によって、32年ぶりに新規格「MSX3」が発表されましたが、講演会の内容自体は秘密保持契約によって明かせません。

しかし、西和彦氏は2022年に入ってからTwitterで来たる「MSX3」について積極的にセルフリークを行ってきています。

本記事では、講演会に参加した筆者が公開済みの既知の情報を元に「MSX3」の姿を解き明かしていきましょう。

■世界初の家庭用パソコンの統一規格だった「MSX」

「MSX」は1980年代にソニーや松下電器(現・パナソニック)など国内外の電機メーカーが参加した家庭用パソコンの共通規格です。

当時は、各メーカーが互換性のない独自のパソコンを発売してシェアを争っていました。

それでは「パソコンの普及などあり得ない」と考え、当時アスキーとマイクロソフトの副社長を兼務していた西氏が1983年に提案したのが共通規格「MSX」です。この規格には日本メーカーを中心に全世界の26社が参加。

MSXはその後、独自開発したカスタムチップによって高性能化を図ったMSX2(1985年)、MSX2+(1988年)、MSXturboR(1990年)と発展しました。MSXは商業的には失敗だったとされていますが、MSXをきっかけにコンピュータでプログラミングを覚えた人、いまでもMSXを愛する人達が世界中におり、今日にも連なるゲーム文化の礎ともなりました。

なお、2006年にはFPGAを使ってMSX2の全機能を1チップで再現した「1チップMSX」がD4エンタープライズ社から限定5000個で販売されました。

■MSX3の全貌を探る

これからは「MSX3」の姿に迫っていきます。2022年1月13日に西和彦氏が複数の写真をTwitterで投稿しました。(すべて原文ママ)

(以下、筆者翻訳)
2022年に少なくとも3つの製品をAmazonで販売する予定です。
1 OEMやホビーのシステムビルダー向けのMSXエンジン 3。
2 キーボードタイプMSX3 (Pro型とライト型)
3 MSX1、MSX2のスロットに挿すかスタンドアロンで使用できるMSX3 IoTカートリッジ。
(以下、筆者翻訳)
MSXエンジン3のARM32 CPU上でLinuxのCGIモード(おそらくコマンドラインモードのこと)
が稼動しています。
次はV9958、V9990 を MSXエンジン3 に乗せ、MSX-DOS, MSX BASIC を Linux に乗せる予定です。
これは素晴らしい進歩で、潜在的なユーザーのみなさんに共有します。

「MSX3」で蘇る、楽しいパーソナルコンピューティング

西和彦氏のツイートからMSX3の姿が浮かび上がってきます。

  • CPUは32ビットのARM。64ビットもありそう。

  • GPUはNVIDIA。⇒(9/6 11:51訂正)MSX3 とは別の「MSX Video Engine」だそうです。

  • OSはLinuxも動く。

  • 過去のMSX/2/2+/turboRとソフトウェア的には互換性を保つ。

  • 過去のMSX/2/2+/turboRにMSX3のカートリッジを挿すことでMSX3になる。

  • MSX3単体製品も発売される。

  • IoT、スパコン、ホビーコンピューティングが3つの柱。

  • MSX3で個人がスパコンを持てるようにする。

MSXはそもそも個人や家庭にコンピューティングを普及させることを目的としていました。西和彦氏は学生時代から、コンピュータとアートの可能性に熱い想いを抱き、1977年7月の月刊アスキー創刊号の巻頭で「コンピューターはメディアになる」と未来を予見しています。

西和彦氏の考えるパーソナルコンピュータとはクリエイティブなツールやメディアであったようです。その思想は「Dynabook」(1972年)を提唱したアラン・ケイに通じるところがあり、西氏は世界初のハンドヘルドPC「HC-20」(1982年)や「PC-8201」(1983年)、世界初のIBM PC互換ラップトップ「Zenith Z-171」(1985年)などを企画・開発しています。マウスとカラーGUIを備えたPC-100(1983年)も西氏の仕事です。

残念ながら1980年代は個人用パソコンはゲーム機として見なされることが多く、同時期に発売された安価なゲーム機である任天堂の「ファミリーコンピュータ」と市場で比較されてしまったことがMSXの悲劇でした。

若き日の西氏は天才的でしたがあまりに直情径行が激しくさまざまな場所で衝突し、また当時は経営者としての知識がなかったために経営危機を招き、その結果マイクロソフトもアスキーも追われました。

その後は博士号を取得して大学教員の道を歩みましたが、60歳を機にエンジニアに戻ることを決意し、東京大学でIoT(Internet Of Things:モノのインターネット。世の中のさまざまなモノをインターネットに接続し通信しあう)をテーマにラボを運営したようです。

今回の「MSX3」は、その経験を元に、過去のMSXゲームとの互換性を維持しつつも、IoTやスパコンというコンピュータの最新トレンドを、個人が遊べ楽しめることを目指しているのでしょう。

1980年代から1990年代のパソコンは新しい技術を弄って楽しめる「最高のオモチャ」でした。しかし、オフィスや家庭に普及が進んだ結果、パソコンは仕事や生活のための単なる道具になってしまいました。

東大を定年退職し66歳になった西氏がチャレンジするMSX3は、あの頃の楽しかったパソコンを今の時代にフィットした形で蘇らせてくれるかもしれません。

参考文献:『反省期』西和彦 著

※ UPDATE(2022/9/5 21:25):本文中の松下電器の現名称を修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。

《根岸智幸》
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