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「シンプルに、楽しいゲームを作っていく」ネクソン代表オーウェン・マホニーが語るゲーム業界の未来とは

G-STAR 2016会期中に同社の代表取締役社長オーウェン・マホニー氏にインタビューを行い、今後のNexonの戦略、日本を含めたゲーム業界の未来をどう見ているのかを語ってもらいました。

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PCオンラインゲームにとどまらず、近年では『HIDE AND FIRE』や『HIT』などスマートフォンデバイスへのゲームタイトル投入を積極的に行っている韓国創業の大手ゲーム企業ネクソン(Nexon)。11月に韓国・釜山で行われたゲームショウG-STAR 2016でも、大規模なブースを出展し韓国国内での人気度を改めて示すとともに、同社最多となる計35作品の展示を行いました。今回、G-STAR 2016会期中に同社の代表取締役社長オーウェン・マホニー氏にインタビューを行い、今後のNexonの戦略、日本を含めたゲーム業界の未来をどう見ているのかを語ってもらいました。


――まずは、改めてオーウェンさんの自己紹介をお願いできますか?

オーウェン・マホニー(以下マホニー):2014年3月にネクソンのCEOに就任しましたが、その前はネクソンのCFO(Chief Financial Officer、最高財務責任者)に就いていました。2010年の夏にネクソンに入社したので、6年半ぐらい経っているという状況です。その前は、Electronic Arts(EA)で10年程、コーポレートデべロップメント(経営企画)のシニア・ヴァイス・プレジデントを務めていました。当時EAは、オンラインゲームビジネスにどう参入していくかというところに注力しており、予算もつぎ込んだものの、上手くいかない状況でした。EAがどうやって効率よくオンラインゲームの領域に入っていくかという過程のなかで、実はネクソンを3度買収しようとしたことがあります。創業者と会って話をした際に、毎回「うちに来ないか」とオファーはもらっていました。最終的に2010年に私がオファーを受諾するまでずっとお誘いは続いていました。


まず私がネクソンに対して感銘を受けた点をお話させてください。2000年後半~2001年初頭に、EAの代表として初めてネクソンに行きました。その当時EAはかなり予算を注ぎ込んで、オンラインゲームビジネスに参入しようとしたり、ゲームをその他のビジネスと繋げようと努力していましたが上手くはいっていませんでした。そのような中、ネクソンはオンラインゲームビジネスの領域において、かなりクリエイティブかつ実用的なアプローチをしていたところに感銘を受けました。具体的には、「面白さとは何か」を追求していた点が挙げられます。ユーザーにとって何が楽しいゲームか、どういったゲームならプレイしたいと思えるかという部分に焦点を当てて事業を行っていた点に感動しました。

当時ネクソンは『風の王国』というオンライングラフィックMMORPGを開発しており、その後に出てきた『ウルティマオンライン』などの先駆けとも言える世界初のグラフィックMMORPGでした。ちょうどその時期はF2P(Free to Play)ビジネスモデルの夜明けの時期でもあり、ネクソンが色々試行錯誤していた時期でもあります。それが功を奏して、F2Pのゲームは今の主力ビジネスであり、かつネクソンがパイオニアと言われている領域となりました。

その当時(1996~2002年あたり)は、ネクソンにとってとても興味深い期間だったと考えています。なぜならその時期は、ネクソンがクリエイティブなイノベーションを起こした時期だからです。一方、同期間は、他の会社は革新的なアプローチや新たな試みを起こせていなかったという背景もあるため、その時代のネクソンの動きには特に感動しました。

今ご紹介したのがネクソンの初期のルーツにあたる部分です。私がCEOになった後は主に3つのポイントを重視しています。1つ目が「Playful」、2つ目が「Creative」、そして「Innovative」の3点をテーマとしており、これらを念頭に置きながら、常に試行錯誤しつつ日々前進していきたいと考えています。最近では、大体2年半ぐらい前から開発チームが熱心に取り組んできた結果がようやく見えてきているところで、新作ゲームのラッシュになってきている状況です。

――毎年G-STARに出展されていますが、オーウェンさんから見て今年の雰囲気はどうですか?

マホニー:当社の出展内容に関して言うと、数多くのタイトルを出展していて、大きな新作ゲームの波が来ているというのが大きく挙げられます。韓国での配信はもちろん、日本や中国、北米、ヨーロッパなど世界各地で展開していきたいと思っているタイトルもありますので、是非楽しみにしていただきたいと思っています。



個人的に、ゲーム業界において成功を収めるには、楽しくて差別化されたゲームが必要だと考えています。自分たちがプレイしたいと思えるゲームかつユーザーがプレイしたいと思えるゲームが必要だと考えており、そういったゲームを提供することができれば成功はついてくると思っています。業界全体に関して言うと、差別化されたゲームを作って革新を起こそうと考えている企業は今現在、少ないのでは?と感じています。

このインタビューの前に当社の開発トップと2人で「昨今はネクソンにとって、エキサイティングな時期だね」、と話していました。彼が率いる開発チームをはじめとする社員の努力のお陰で、私達が実現しようとしていたビジョンが実現し始めています。実際にこれまで配信を開始してきたゲームの中には、初動が好調なタイトルが多くあります。

――差別化されているゲームとは、オーウェンさんはどのようなものだと考えていますか?

マホニー:まず「新ジャンルを作れるかどうか」が、差別化要素のひとつであると考えています。新しいジャンルのゲームは、「0から何かを作り出す」という意味で差別化されていると言えますが、最近では「新ジャンルの創出」というものは少なくなってきていると感じています。

面白いゲームというのは、突発的にぱっと出てくることもあり、インディーゲームでは頻出しているという印象を持っています。個人的に感じる差別化されたゲームの例を挙げると『Pokemon GO』や『Minecraft』『Grand Theft Auto 3』ではないかと思います。新しいジャンルだけでなく、多数のプラットフォームで展開されているのも新しく差別化されたゲームだと言えます。新ジャンルの創出以外にも、頑張り次第では多数のイノベーションを起こせると考えています。

ネクソンのゲームではないのですが、例を挙げさせていただくと、『Overwatch』と『League of Legends』は、MOBAというジャンルの中でも非常に差別化されたゲームタイトルです。ネクソンに関して言うと、他の会社と異なる方向を向いているゲームの例は『野生の地:Durango』が挙げられます。ちょっとと言うよりは既存のゲームとは全然違いますね(笑)。

――筆者も発表された時からずっと気になっているタイトルです。

マホニー:正直なところ、このゲームが確実に成功するかどうかはまだ分からない部分が多いです。どう面白い要素を付け加えられるかという点もキモとなってくるとは思いますが、鍵になるのは「どう既存のモバイルゲームとの差別化を図るか」だと考えています。私達がいつも念頭に置いているのは、これまでやってきた何かを改めてやるのではなく、新しいことに取り組もうということを常に意識しています。

――スマートフォンタイトルがネクソンさんを含めて非常に増えていますが、PCオンラインゲームは今どうなっているのか、これからどうなっていくのかを教えてください。

マホニー:日本は特別なケースで、PCオンラインゲームの市場自体が小さいという背景があります。日本以外の国では、PCオンラインゲームの市場が大きな割合を占めています。しかし、一定の市場規模を持つ海外においても、過去7~10年の間で、PCオンラインゲームに従事している会社は少なくなっていて、その中でPCオンラインゲームの開発・運用を行っていたネクソンが批判されることもありました。その時に他社が何をしていたかというと、市場の動向に合わせてFacebookゲームやモバイルゲームにシフトしていました。批判されても、当社はPCオンラインゲーム事業を続けてきており、日本以外の地域では今でも一定のPCオンラインゲーム市場が存在しているだけでなく、近年は復活の動きも生まれてきています。

また、PCオンラインゲームとモバイルゲームをプラットフォーム別に分けて考えるのはあまり重要ではないと考えています。その理由としては、デバイス間の差が縮まっており、性能に関してはPS3と最新のiPhone(iPhone 7)はほぼ同等ですし、数年前のノートPCと現在のスマートフォンもほぼ同等の性能を持っているという状況です。以前にも増してパワフルな端末が増えており違いがなくなっているため、プラットフォームごとに分けて考えるのは重要ではないと考えています。

――日本国内ではスマートフォンは受け入れられやすい状況だとは思いますが、今後の展開はどのように考えていますか?

マホニー:極端にゲームをやる時とやらない時の「波」があると、多くの人が言っています。私は多くの時間を仕事に費やしていますが、どうしてもやりたいゲームがいくつかあります。大前提として、「ゲームはアート作品」だと私は思っていますが、ゲームをプレイしない人たちは素晴らしいアート作品(ゲーム)にまだ出会えてないのだけでは?と感じています。そういったところを考えると、日本におけるモバイルゲームで必要になるのはシンプルで、彼らをいかに楽しませられるかという点と、チャレンジ要素という点が重要だと思います。これらを実現できれば、より多くのユーザーにゲームを楽しんでもらえるのではないかと考えています。


私自身ゲームが大好きですが、もっと面白いゲームがあればもっとゲームをプレイするのにと、現在の業界の状況に苛立ちを覚えることがあります。残念なことに、現在の業界においては、ゲーム会社は楽しさだけを追求するべきではない、と考えている企業がかなり多い状況です。ただ、個人的には自分を楽しませてくれるゲームに出会いたいと思っており、いちユーザーとしてもCEOとしても、人々を楽しませられるゲームは重要だと思います。

《森 元行》

森 元行

海外のゲームショウにてeスポーツの大会に出会い衝撃を受け、自身の連載「eスポーツの裏側」を企画・担当。プロプレイヤーはもちろん、制作会社や大会運営責任者、施設運営担当者など「eスポーツ」に携わるキーマンに多くのインタビューを実施。 2022年3月 立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科 博士課程前期課程(修士/MBA)修了。

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