話題を呼んでいるのは、平成28年度から使用が開始された中学英語用教科書「NEW HORIZON English Course(ニューホライズン イングリッシュコース)」。イラストを手がけた電柱棒(でんちゅうぼう)氏によるキャラクターが「かわいい」と評判で、教科書を利用する生徒以外のネットユーザーも「この教科書で勉強したい」「エレン先生が魅力的」などと沸き立った。
◆教科書作成に込めた思い、イラストを起用した理由とは…東京書籍
東京書籍は「『NEW HORIZON English Course』に掲載されたキャラクターがネット上で思わぬ反響を呼んでおります」とコメント。中学校における英語学習はますます重要になってきているが、生徒の中には「なぜ英語を勉強しなければならないのか」と思う生徒もいるだろう。だからこそ、東京書籍はできるだけ多くの中学生が意欲を持って英語学習に取り組めるよう、親しみやすいストーリーと絵柄のイラストを起用したという。
教科書の価値は、学習にふさわしい内容であるかで決まる。加えて、東京書籍はイラストの起用には正しい学習内容の理解を補助しつつ、学習を妨げることがないという点も重要としていた。「電柱棒さんのイラストは、各単元で表したいことを正しく表してくれるだけでなく、こちらが気づかないような詳細な設定やこだわりも盛り込んでくれた。」(東京書籍編集部)
教科書に出てくるキャラクターのひとり、「アレックス」の設定は、日本文化に興味があり、日本に留学してきたというもの。このキャラクター設定から、電柱棒氏はアレックスのTシャツに漢字を2文字、「元気」と添えた。インドからきた「ディーパ」はバンド活動に興味があることから、エレキギターを背負っているデザインにしたのも電柱棒氏が起案。さらに、作中で登場人物がサーフィンを行うシーンで着用しているウェットスーツは、電柱棒氏が実際に存在するモデルを参考に書き込んだこともわかっている。
◆幼さの残るエレン先生の秘密…電柱棒氏に聞くキャラクター誕生秘話
電柱棒氏によると、キャラクターを作成する際には東京書籍から「生徒たちが興味を持つようなキャラクターにしたい」との話を受けていた。しかし、あくまで教材にふさわしい範囲内で、という要望があったため、電柱棒氏は「いろいろと苦労した点」もあったと語る。たとえば、例のディーパは、「バンドをやっているということで初期段階ではもっとませた感じのデザインでしたが、刺激が強過ぎるということでNGになったり(笑)」したそうだ。
また、ネットユーザの注目を引いた「エレン先生」についても試行錯誤のあとが見え、「ちょっと幼めなのは、この方が教師然とした感じよりも親しみがわくかな」という思いが込められており、「教師というよりは友達のお姉さんみたいな感覚を意識」して描いたという。
◆学習に引き込む工夫
肝心のストーリーにも、ひと工夫が施された。1年生から3年生までの教科書を一連のシリーズとみなし、ストーリーに一貫性を持たせ、1年生で登場したキャラクターに関連する新登場人物が2、3年生の教科書で活躍するような展開を用いた。また、各単元のテーマには東京オリンピック・パラリンピックやハリー・ポッター、Skypeなども登場し、より現代の生徒になじみ深い話題が選ばれた。過去の登場人物の縁戚にあたる十余年ほど教壇に立つ教師の中には「あのキャラの親戚ではないのか」と懐かしくなるような仕掛けもあるという。
◆ストーリーとキャラでグローバル社会に興味を
「NEW HORIZON English Course」の利用はまだ始まったばかり。話題の教科書が現場でどのように受け入れられているかを把握するため、東京書籍は今後、採用校の教員を対象に使い勝手や意見を聞くフィードバックの場を設ける予定。生徒の反応については、「中学生の皆さんが、教科書の紙面の中で生き生きとしたキャラクターが活躍するのを見て、もっともっと英語を学びたいという気持ちになり、またグローバル社会に生きる日本人として、日本の伝統・文化を世界に発信し、異文化への理解を深めていただけることを願っております」(東京書籍)とコメント。電柱棒氏も、「まだ実際に使われ始めたばかりなので現場での反応はどうなのかわからず不安ですが、このキャラクターを通じて子どもたちが英語に親しみを持ってくれればなと願っています」と期待を述べた。
どういった教科書なのか気になる保護者も多いことだろう。もし、子どもが「NEW HORIZON」を利用しているのなら、一度一緒に見てみてはいかがだろうか。
「エレン先生」誕生秘話や教科書に込めた思い…東京書籍・電柱棒氏インタビュー
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