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【hideのゲーム音楽伝道記】第17回:『天地創造』の音楽 ― 地球創生の物語を壮大なスケールで演出

インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽好きライターのhideです。ゲーム音楽の連載記事「hideのゲーム音楽伝道記」第17回目となる今回は、『天地創造』についてご紹介します。

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インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽好きライターのhideです。ゲーム音楽の連載記事「hideのゲーム音楽伝道記」第17回目となる今回は、『天地創造』についてご紹介します。

『天地創造』は、1995年10月20日にエニックス(現スクウェア・エニックス)からスーパーファミコンで発売されたアクションRPG作品です。開発は、当時活躍していたゲーム開発会社・クインテットが担当。キャラクターデザインは藤原カムイ氏が手掛けました。


本作は、“天地創造”というタイトルが表す通り、非常に壮大なスケールの作品です。ひょんなことから、世界を蘇らせるという使命を背負う主人公の少年・アーク。何もない海に5つの大陸を作り、植物や鳥類、動物、そして人間を復活させてゆき、さらには電気や電話、飛行機などを人間に発明させ、文明を発展させてゆく……という、まさに“天地創造”の名にふさわしい作品になっています。

人類や文明の発展は一見素晴らしいことのように思えますが、それは本当に良いことなのか――。しだいに傲慢になってゆく人間の業の深さなど、深く考えさせられるテーマを描いた、じつに奥深い物語なのです。

◆穏やかで安らげる旋律「帰るべき所」


そして、『天地創造』の魅力を語るうえで絶対に外すことのできないのが音楽面です。この作品、音楽が本当に素晴らしいですよ! 本作の作曲を担当したのは、小林美代子氏(現・高岡美代子氏)と曳地正則氏。2人の紡ぐ楽曲群が、この地球創生の物語をじつに鮮烈に美しく彩ってくれます。

僕がゲームをプレイし始めて、まずはじめに印象に残ったのはタイトル画面で流れる「光と闇」という楽曲ですね。タイトルロゴが表示されると同時に流れだす、非常に壮大かつ勇壮な旋律がしびれるほど格好よくて、『天地創造』の世界にグイグイと引き込んでくれました。

もうひとつ印象に残っているのが、「帰るべき所」という楽曲ですね。『天地創造』の世界には、地球の表側の世界「地表」と、裏側の世界「地裏」が存在します。この物語は、地裏に存在するただひとつの村・クリスタルホルムから始まるのですが、この村で流れる楽曲が「帰るべき所」になります。とても穏やかかつ安らげる1曲で、のどかな村の雰囲気を、あたたかい旋律で素敵に演出してくれますよ。この村で見ることができる、シャボン玉のような美しい球体「クリスタルブルー」が舞う幻想的な風景と、心地よく響く「帰るべき所」の旋律は、僕の中でとても印象深く残っています。

◆地裏の世界を鮮烈に演出する「旅立ち」


その後アークは、とある出来事をきっかけに氷漬けになってしまった村の人々を救うため、地裏に存在する5つの塔を巡ってゆくことになります。同時にアークは、地表の大陸を復活させてゆくことになるのです。

僕が『天地創造』の音楽の中でもっとも衝撃を受けたのが、地裏のフィールドマップで流れる「旅立ち」という楽曲です。村を出た瞬間に流れ出す、重厚な鐘の音で始まるイントロ。オーケストラかと思うほどの荘厳なサウンド。情感豊かかつ物悲しく展開する旋律に、寒気がするくらい心が震え、全身に鳥肌が立ちました。虚無感と狭苦しさのある地裏の世界の雰囲気、そして旅立つアークの複雑な心境を演出するその音楽の凄さに、僕は強烈に心打たれました。「地球の裏側」を歩くという、斬新なビジュアル表現も印象的でしたね。ゲームをプレイしていて、こんなに心が震えたのは、本当に久しぶりでしたよ。

また、アークが大陸を復活させる際の音楽「大地の目覚め」も、神秘的で美しく、素晴らしい出来ばえになっています。ビジュアルも当時のスーファミ作品としては非常にリアルで、見ごたえがありました。本作は、序盤から「大陸を復活させていく」という壮大なスケールの物語が展開されるのですが、音楽の力が、その壮大さを何倍にも大きくさせてくれて、強烈なゲーム体験が味わえました。

その後、アークは故郷のクリスタルホルムを離れ、地表に向かうことになるのですが、とある人物との別れのイベントの際に流れる「祈り」という楽曲が、とてもせつなくて印象的でしたね。心をかきむしられるほどの、物悲しげな旋律が胸に響きました。

◆そして地表へ……「さらなる広い世界へ」


そして、地表を訪れたアーク。地表で流れるフィールド曲の「さらなる広い世界へ」がまた素晴らしくて、世界の雄大さと美しさを余すところなく表現しています。この楽曲は、ただ美しいだけでなく、全体にせつなさが漂っているのがたまらないですね! たったひとりで世界を旅するアークの孤独感と使命感を鮮烈に描いています。この楽曲はあまりにも美しすぎて、僕はコントローラを操作する手が止まり、手を軽く震わせながら音楽に聴き入ってしまったこともしばしばありました。心に沁みわたる名曲だと思います。

アークは世界中をめぐりながら、植物や鳥、動物、そして人間を復活させ、さらには人間の文明を発展させてゆくことになります。その旅路の中では、さまざまな出会いや敵キャラとの戦闘などが待っているわけですが、たくさんの楽曲がそれを彩ってくれます。緑あふれるイメージの、さわやかな美しい旋律が魅力的な「エバーグリーン」、パーカッションと変拍子が印象的な「ZOO」、ライオンとともに山肌を進んでいく際に流れるコミカルな「わがままライオン」、ボス戦の勇壮な楽曲「立ちはだかるもの」などなど、たくさんの素晴らしい楽曲群がアークの冒険を盛り上げてくれて、『天地創造』の世界を存分に堪能させてくれます。ラスボス戦で流れる楽曲「すべてを乗り越えて」では、ゲーム序盤に流れるとある楽曲のメロディが顔を出すのですが、これがまた熱いですよ!

◆せつなくも美しいエンディング曲「帰路」


ゲーム終盤には、とある衝撃的な真実がアークに突きつけられます。その後、ラスボスとの戦いに勝利したのち、アークは少しの時間、クリスタルホルムの村を自由にめぐることができるのですが、ここで流れる楽曲(曲名は不明。後述するサントラにこの楽曲が未収録なのが惜しいです…)が本当に素敵ですね。あたたかい旋律なんですけど、せつなすぎて泣けてきます。胸をぎゅっと締めつけられます。ネタバレになってしまうので詳細は伏せますが、ゲームを最初から通してプレイしてきてこの楽曲を聴くと、きっと胸に来るものがあるはずですよ。

そして僕が『天地創造』の音楽の中で一番おすすめしたいのが、スタッフロールの楽曲「帰路」です。伸びやかで美しくも、せつなさを帯びたメロディが本当に絶品で、魂を浄化されるほどの美しさですよ。僕はスーファミ時代に生まれた数ある名曲群の中でも、五本指に入るほどの名曲だと思っています! ご存知なかった方は、ぜひ聴いてみていただきたいです。

これから本作をプレイされる方もいらっしゃるかと思うので、ネタバレを避けて書くと、エンディングでは、“人間とは何なのか?” “本当の幸せとは何か?”ということを考えさせられました。せつない終わり方ではあるのですが、最後の最後で救われる(ように思える)表現があるのがいいですね。スタッフロールで流れる「帰路」と、最後の最後に流れる「帰るべき所」は、若干放心状態になりながらも聴き入っていましたよ。その美しくて心地よい旋律は、じんわりと僕の心に沁み入ってきて、ゲームのさまざまな思い出とともに深く刻み込まれました。

◆生きることについて考えさせられる名作です


『天地創造』は発売後20年間、移植もリメイクも、バーチャルコンソールでの配信すらも一切されていません。そのため正規にプレイする手段はスーファミの実機しかないのですが、スーファミをお持ちの方はぜひプレイしてみてください。というか、今からスーファミ本体とソフトを買ってプレイしてもきっと損はしないはずです。そのくらい魅力あふれる作品だと僕は思っています。


なお、本作のサントラは『天地創造 クリエイティヴサウンドトラックス』という名でかつて発売されていたのですが、残念ながら現在は廃盤でプレミア化しており、数万円ほどの価格で取引されています。ちなみにこのサントラは、未収録曲が非常に多く、その点も含めて残念ですね。ぜひ全曲を収録した完全版サントラのリリースを希望したいです……!

『天地創造』は、発売から20年経っても、色あせることのない輝きを放っている、すばらしい作品だと思います。テレビゲームという枠に収まらない、深いテーマとメッセージ性を持った作品です。

今回、僕が『天地創造』をご紹介したのは、「この作品を埋もれさせてしまうのはもったいない!」「この作品の灯を絶やしたくない!」と思ったからです。本作で描かれる物語はじつに奥深いもので、プレイを終えたあとは、人間という存在について、そして生きることについて考えさせてくれると思います。僕にとっては、生涯忘れることのない、一生心に残る作品になりました。ご興味をお持ちの方は、ぜひ『天地創造』の世界を体験してみてください! きっと、あなたの心に何かを残してくれると思います。

個人的には、ぜひ『天地創造』がバーチャルコンソール化され、今の時代に復活してほしいと願っています。残念ながら、本作の開発を担当したクインテットが現存していないため、権利関係などで配信は難しいかもしれません。でもこの作品はもっと多くの方に知っていただきたいし、プレイしてみてもらいたいです。

もし今後、この作品がまた世に出る機会に恵まれなかったとしても、「こういう素敵な名作があったんだ」と、これからもずっと伝えていきたいなと僕は思っています。

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬


ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、主にゲーム音楽関係の記事を執筆しています。『カタチ新発見! 立体ピクロス2』が面白すぎて睡眠不足気味です(笑)。

[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden
《hide/永芳英敬》
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