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【インタビュー】『MTG』『ハースストーン』のトップレイヤー浅原晃に、アナログTCGとデジタルTCGの違いを訊いた

22年前にWizards of the Coast社が生み出した世界初のトレーディングカードゲーム(TCG)『マジック:ザ・ギャザリング(MTG)』。同ジャンルの元祖として国内でも根強い人気があり、プロとして活動する人も少なくありません。

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◆仕事としていろんなゲームをプレイする


――浅原さんはBlizzardのデジタルカードゲーム『Hearthstone』もプレイしていますよね。何がきっかけで始められたのでしょうか?

浅原晃: 会社で対面の人がやっていたんです。Blizzard信者みたいな人で…まあ、やったことある人ならわかると思うんですけど、「ヤバイヤバイ」「クソゲークソゲー」って言いながら同じゲームをずっとやってるんですよ(笑)。

それが『Hearthstone』のクローズドβ(2013年8~12月)の頃でしょうか。「一体何なんだろう」と思って、僕もオープンβ開始時(2014年1月)に始めました。

――かなり初期の頃からプレイされているんですね。

浅原晃: 「いろんなゲームをとりあえずやる」というのが自分の主義なんですよ。『ドミニオン』や『三国志大戦』、そのほか格闘ゲームなどもやりました。『MTG』みたいに「極端に面白いゲームはずっとやっている」という感じですね。

――毎日どのぐらいゲームをプレイされているんでしょうか?

浅原晃: 一体どのぐらいやってるんでしょう(笑)。空いた時間は大体ゲームをやってますね。今はHobby JapanでTCG『ラストクロニクル』を作っているので、アイデアを得るために「仕事としていろいろなゲームをやっている」面もあります。

――浅原さんは『Hearthstone』で4月末にアメリカサーバー10位以内を達成し、世界大会出場の条件となるポイント(WCSポイント)を40ポイント獲得されていますね。

浅原晃: 以前も何度か2位や3位に上がったことはあるんですが、月末には落ちてしまいました。今年の4月は友人にTwitterで教えてもらったデッキがめちゃくちゃ強かったので月末の10位以内に残れた、という具合です。とはいえ、WCSポイントの制度自体は複雑なのでよく理解してなかったりしますが(笑)。


◆『MTG』では相手の手札を読むこと、『Hearthstone』では自分の隙を減らすことが重要


――同じカードゲームである『MTG』と『Hearthstone』の大きな違いは何でしょうか?

浅原晃: どちらかというと「アナログとデジタルの違い」が大きいですね。たとえば表示です。『MTG』だと「パワー3、タフネス3(3/3)のクリーチャーが強化を受けて6/6になっていた」ということも多いんですが、『Hearthstone』では補正後の数値がそのまま表示されるのでわかりやすいですね。

――やっぱりプロの方でも数値を間違えたりするものなんですか。

浅原晃: ミスやルールの間違いはよくありますね。カードを触りながらプレイできるのはアナログにしかない楽しさですけど。

――『MTG』で上手い人はカードを触る手つきがまず違いますよね(笑)。

浅原晃: 手つきを見れば『MTG』の熟練度がわかりますね(笑)。人によって癖もありますし。

――戦術面ではいかがでしょう?

浅原晃: プレイ中に考えることはそこまで変わらないと思いますが、『Hearthstone』だと「相手に理想のカードを引かれているものとして動いたほうがいい」、というのはありますね。『MTG』だと「土地」という「マナを増やすだけのカード」を引く可能性がある、つまりドローが無駄になることも多いんですが、『Hearthstone』は土地がないので無駄なドローが少ないんです。結果的に「理想のカードを引かれる可能性」も増えますね。

――有効な手札が多いのが『Hearthstone』、反対に手札が制限されるのが『MTG』と。

浅原晃: その分『MTG』だと「相手の行動から手札を読む」という技術が重要で、『Hearthstone』では「“これをされたら終わり”みたいな隙を作らないように動く」のが大事だと思います。

――「手札を読む技術」の習得には時間がかかりますよね。逆に言えば、「ゲームを始めたばかり」の人が浅原さんと対戦した場合、「『MTG』では『Hearthstone』ほど簡単には勝てない」ということですか。

浅原晃: そう言えるかもしれません。『Hearthstone』だと一部のデッキでは極端な話、ひたすら相手のヒーローを攻撃するだけでも「60点のプレイ」ができるんですよ。「100点のプレイ」は難しいとしても、プレイの平均値が高いんです。

この部分は「考えて作られているな」と思いましたね。カードゲームをやったことがない人でも、簡単な動きを理解しておけば勝ちやすい。デジタルというのも相まって、遊びやすいゲームだと思います。

――『Hearthstone』は手軽さを意識して作られていますよね。浅原さんから見て、「これは面白い」と思ったカードはありますか?

浅原晃: Warlockの専用カード「Lord Jaraxxus」がすごく好きです。「登場時に自分のヒーローと入れ替わる」という効果なんですが、これ、アナログだと絶対再現できないですよね。面白いデザインのカードだな、と思っています。


◆運と実力


――カードゲームの実力はどの辺で現れるんでしょう?

浅原晃: まずはダメージやマナ等の「計算力」ですね。『Hearthstone』だと時間切れもよくありますし。

次に相手が「何を持っていたらこっちが困るか」という想像力の部分ですね。顕著な例が7マナ全体4点ダメージの「Flamestrike」でしょうか。「相手が7マナになるまでは自由に動いていいが、7マナになるタイミングでは全体ダメージを警戒して盤面をいったん清算したほうがいい」という具合です。

――運要素はどちらが高いでしょうか?

浅原晃: 難しいですね……。『Hearthstone』にはカードにランダム効果が多いですけど、『MTG』にもまた「マナを増やす土地を引けるかどうか」という要素がありますから。

ただ、『Hearhtstone』には「有利なヒーローと対戦できるか」という「当たり運」もあるかなと思います。組めるデッキがある程度決められていることのもあって、一部のヒーロー同士は有利不利がはっきりしてますよね。

そのせいか大会のフォーマットも違いますね。『MTG』だと使えるのは1つのデッキで、デッキ相性等を補うために試合と試合の合間に自分のデッキを調整(サイドボード)できるのが普通なんですが、『Hearthstone』だとサイドボード無しで複数のヒーロー(デッキ)を使うじゃないですか。

――大会の傾向にも違いは見られますか?

浅原晃: 『MTG』だと「新しい要素」を持ち込んだ人が勝つ傾向にありますね。新セットで追加されたキーワードを使ったりとか、今までにないアプローチをしてみたりとか。

逆に『Hearthstone』でそういうのは少ないと思います。ヒーローごとに使えるカードが決められているじゃないですか。そういう意味で「格闘ゲームっぽいな」と思いましたね。キャラクターを選んだら戦い方(デッキ)がある程度決まってしまう。何種類かバリエーションはあるんですけど、「まったく新しいもの」は出てこないのかな、と思います。『MTG』だと「赤」や「青」といった勢力(色)ごとに特徴はありますけど、色同士は自由に組み合わせてデッキを作れますから。

新カードの追加速度も関係してますね。『MTG』は3ヶ月に1回150枚ですが、『Hearthstone』は6ヶ月に1回で約120枚のペースなので変化は生まれにくいでしょう。これには「デジタルだから演出面の作り込みが必要で時間がかかる」という点もあるんだと思います。リリースされたばかりの頃なんか、ほとんどカード追加がなかったですよね。

――8月には『Hearthstone』の新セット「The Grand Tournament」が発売されますね。

浅原晃: 『MTG』には「Hero Power」のように最初から使える能力はないので、それをクローズアップした「Inspire」という新要素は面白いな、と思います。ただ、新カードはあまりチェックしてないですね。Hero Powerが変わる「Justicar Trueheart」は見ましたけど…。Shamanはネタですね。ほかのヒーローパワーが全部強化されている中、なんでShamanだけ「出せるトーテムを選択できるようになる」なのか(笑)。

――不遇のヒーローですね(笑)。インタビューの終わりに、浅原さんの今後の抱負についても教えていただけますか?

浅原晃: 『Hearthstone』ではどこかのタイミングで一回、集中して世界大会を目指してみたいですね。そういう性分なので(笑)。ほかの方面では「カードゲーム業界全体を盛り上げたい」というふうに考えています。自分が好きなジャンルですし、遊ぶ人が増えれば面白くなりますからね。

――本日はどうもありがとうございました。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

気さくな人柄の浅原晃さん。根っこにある「ゲームを楽しもう」という思いが言葉の端々から感じられ、私も取材後ついゲームをしたくなってしまいました。浅原さんは『MTG』や『Hearthstone』でこれからどんな活躍を見せるのでしょうか。

記事提供元: Game*Spark
《Game*Spark》
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