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【ありブラ vol.04】タネもシカケもございます(新作デモのお披露目)

インサイド(または GameBusiness.jp)をご覧のみなさま、こんにちは!GW休暇、楽しんでますか~っ!?お休み中なのに記事を読んで頂いてありがとうございます。お仕事中という方もちょっと息抜きしながらお読み頂ければと思います。

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インサイド(または GameBusiness.jp)をご覧のみなさま、こんにちは!

GW休暇、楽しんでますか~っ!?お休み中なのに記事を読んで頂いてありがとうございます。お仕事中という方もちょっと息抜きしながらお読み頂ければと思います。

今回は「デモ」についてご紹介したいと思います。CRIがミドルウェアをお客様にご紹介するとき、実はいちばん大事なツールと言ってもよいのが「(技術)デモ」なんです。営業マンやエヴァンジェリストによるどんなに手練れた華麗な営業トークよりも、実機上で動作する「デモ」がもっとも雄弁にミドルウェアの魅力や導入効果を伝えてくれるのです。

CRIにはいろいろなデモがありますが、今回はGW記念号(?)ということで、まだ誰にもお見せしていない新作デモをお披露目しちゃいます。先日のUNITEに参加された方は当社セッションやブース展示でご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、今回の新作デモには「とある秘密」が隠されていますので、その点についてもこっそり(?)教えちゃいます。すでにデモをご覧の方も必見です。

それでは「ありがとう、ブラックボックス」略して「ありブラ」、今週もスタートです!ぜひリラックスしてお楽しみ頂ければと思います。

新デモお披露目「りんごウォーズ」



まずは、なにはともあれ、出来たてホヤホヤのCRIWARE新作デモ『りんごウォーズ』をご覧ください!

iOS上でリアルタイムに操作できるインタラクティブなアプリになっているので、本当は皆さんに触っていただきたいのですが、技術デモを目的とするアプリのiTunesでの配信は禁止されているので、残念ではありますがまずは動画でお届けしたいと思います。



ぜひ、音声を「ON」にしてご覧くださいね。音の演出デモなので。

すぐに動画で観られない方のために、スクリーンショットでどんなデモなのか少しご紹介しておこうと思います。

まず、デモが起動すると、こんな画面が表示されます。


レッドチーム(左)とブルーチーム(右)が、なにやら群集戦闘を繰り広げています。

そして、レッド側には「太鼓」のボタン、ブルー側には「ラッパ」のボタン。これをタップすると、そのチームの攻撃が行われるようになっています。では、さっそくブルー側のラッパを何回かタップしてみましょう。

攻撃ボタンを押していくと、敵チーム側にどんどん攻め込んでいきます。


と同時に、BGMがリアルタイムに変化!

戦況の変化を、視覚情報だけでなく、聴覚からも感じ取ることができます。

では、このままではレッドチームが可哀想なので(笑)、こんどは太鼓ボタンをタップしましょう。

いきなりレッドチーム優勢に!


戦況に合わせて、BGMもどんどん変化していきます。

ブルーチームのときとは、ぜんぜん違う雰囲気の音楽です。

さぁ、このままレッドチームは勝利をおさめられるのか!?

奇跡の大逆転!


レッドチーム勝利です。

勝利の瞬間、「WIN」文字の表示演出と同時に、ジングル(尺のみじかいテーマ音楽演出)が再生されます。

ジングル再生時は演出をわかりやすくするために、BGMは自動的に音量が抑えられています。

このような演出を「ダッキング」と呼びます。


では、次の章で、このデモの「タネとシカケ」をご紹介していきます。


サウンドクリエイターとプログラマの関係



新デモ「りんごウォーズ」には、ADX2というミドルウェア技術が使われています。

ミドルウェアには、実は2つの側面があります。ひとつは「出来なかったことが出来るようになる」こと、もうひとつは「大変なことがラクになる」ことです。今回のデモは、後者にあてはまります。

「りんごウォーズ」では、戦況に応じてBGMが変化するインタラクティブサウンド演出と、勝利ジングル時のダッキング演出(特定のサウンドを目立たせるために他の音楽ボリュームを下げる手法)の2つの手法が使われています。

インタラクティブサウンド演出は、実は従来、非常に複雑なプログラム実装が必要になります。あらかじめ「どのような状況でどのように変化するか」をデザインし、それをもとに「どのゲームパラメータに連動してサウンドを変化させるか」といった技術設計を行います。「サウンドの変化」とひとことで言っても、単に異なるBGMをクロスフェードさせていくものから、マルチトラックのサウンドをリアルタイムに制御して個別に音の要素を調整していくもの、ピッチシフトやリバーブなどのリアルタイム系エフェクトを使うものなど、さまざまな手法があります。

でも、いちばん大変なのはここからで、上記のような仕様が固まったら、次は実際にアプリに実装しながら試行錯誤していくことになります。社内にこうしたインタラクティブサウンドを実現するための仕組みが用意されていれば良いのですが、現在普及しているゲームエンジンにもこうした機能が搭載されていることは稀です。

インタラクティブサウンドは、サウンド担当だけで実現できないのが最大の課題。というのも、通常のサウンド演出であれば、サウンド担当はBGMやSEを作曲するだけで良く、音素材をもらったプログラマはそれをエンコード(圧縮)してアプリに組み込むだけで良かったわけです。でも、インタラクティブサウンドは違います。リアルタイムに音が変化することを実現するために、プログラマの協力が必須です。

もっとナマナマしい表現を敢えてしてみます。サウンドクリエイターとプログラマというのは、かなり異なる職種です。ぶっちゃけ、ビジネスコミュニケーション上もいわゆる「共通言語」を持たない関係とも言えます。CRIもさまざまなゲーム企業のサポートをしてきましたが、インタラクティブサウンドを実現しようとして、サウンドクリエイターとプログラマが大喧嘩してしまい頓挫してしまった、なんて話は実はよく耳にします(汗)。マスターアップ寸前になるとプログラマはバグ潰しに忙殺され、サウンド調整に時間を割くことも難しくなります。また、内部にサウンド部門を持っているというSAPさんはまだまだ少なく、外注に頼っている企業が多いため、プログラマとのきめ細やかな連携プレイができないという事情もあるようです。

こんな背景があるため(実は意外と知られていなかったりします)、世の中のゲームには、まだあまりインタラクティブサウンドの手法を採り入れたものが多くありません。この状況をなんとかしたい!という思いを胸に、CRIでは15年以上も前から、このインタラクティブサウンドを「カンタンに実現する手法」を研究開発してきました。

ADX2では、サウンドクリエイターとプログラマが良好な関係を保てるような仕組みが搭載されています。詳細は省きますが、ひとことで言うと、従来プログラマに依存していたリアルタイム制御系の部分をミドルウェア技術で吸収し、オーサリングツール(ADX2の場合はAtomCraft)側=つまりサウンドクリエイター側で大半の演出設計を行えるようになっています。アプリに組み込む際は、プログラマがゲーム状況パラメータとあらかじめサウンド担当がADX2上で設定した演出をマッピングする作業だけ行えば良い、という感じになります。

つまり、サウンドクリエイターもプログラマも、笑顔でお仕事ができるようになる技術、というわけです。

MT車とAT車は大違い!?



ダッキング演出に関しても、実はインタラクティブサウンドと同じようなことが起こります。

すでに説明したとおり、ダッキング演出とは、特定のサウンドを目立たせるために他の音のボリュームをグッと下げる手法です。りんごウォーズのように勝利ジングルを目立たせるために使われたり、必殺技の発動時にキャラクターのセリフを目立たせるために使われたり(ボイスハイライト)、ガチャ演出で激レアが当たったときのファンファーレが鳴る時(笑)などに使われたりします。

説明はカンタンなんですが、これをゲームで実現しようとすると、けっこう大変。

ボリューム制御はプログラミングの役割なので、そういうコードを都度書く必要があります。ある程度、自動的にダッキングを行う仕組みを用意することは腕に覚えのあるプログラマの方なら可能ですし、最近では、ゲームエンジンにも基本的なダッキング機能をサポートしたものも増えてきています。

ただ、ちょっと心配なのは、最近のスマホゲームは「音の要素が非常に増えて複雑になってきている」ということです。

少し専門的な話になるので詳細は割愛しますが、簡単に言うと、同時に鳴る音の数が、ものすごい勢いで増えてきているということです。インタラクティブサウンドのようなマルチトラックのBGMを使っているところはまだまだ少ないと思いますが、ゲームに豪華さを出すために、膨大な数のセリフを用意したり、全キャラが喋りまくるフルボイス仕様になっていたり、SEもいろいろな音が鳴りまくったり、耳慣れによる”飽き”を防ぐためにランダマイズ要素を入れたりと、とにかく凄い数の音がゲーム上で鳴るようになってきています。すでに、家庭用ゲーム機レベルの音数に到達しているリッチゲームも少なくありません。

音数が増えると、ダッキング演出の際に制御すべき対象も増えます。単純な排他処理でやってしまえれば良いのですが、ゲームには「消えても良い音」と「絶対に消えてはいけない音」が存在します。メモリ領域やCPU負荷のマネジメントという頭の痛い問題もあり(音数が増えれば増えるほど、当然メモリやCPU負荷は逼迫していきます)、ゲームサウンドを豪華にしようとすればするほど、制御系が複雑化していってしまいます。

ADX2では、「グループ」「プライオリティ」といった機能によって、ダッキングなどのリアルタイム系の制御がとても簡単に行えるようになっています。制御しやすいように膨大な数のサウンドを任意のグループにまとめておくことで、ダッキングの対象となるサウンドを簡単に指定できます。またそれぞれのサウンドにプライオリティを設定できるので、先述の「消えて欲しくない音、消えてもよい音」の制御も容易です。また、ブラックボックス的な部分にはなりますが、音数がどんどん増えてもCPU負荷があまり高くならない独自開発の特殊な音声コーデックが採用されていたり、ストリーミングとオンメモリを自在に使い分けてメモリ領域の有効活用ができる設計になっていたり、とゲームに最適なチューニングがすでになされているわけです。

ある有名なゲームクリエイターさんがおっしゃっていた言葉なのですが、「ADX2を使うか使わないかは、自動車のMT(マニュアル)車とAT(オートマ)車くらいの違いがある」のだそうです。

ボクも運転免許はいちおうMTですが、MT車に乗ったのは教習所の敷地内だけ(笑)。生涯3台ほど今までに車を買ったことがありますが、どれもAT車でした。不器用なボクなので、シフトチェンジは自動車のAT機能という「ブラックボックス」にお任せして、その分、同乗者との会話やコミュニケーションを楽しみたいと思っています。きっとゲーム開発もおんなじなのかも!?

photo by aimhelix (CC BY 2.0)


というわけで、ダッキングは、CRIWAREのブラックボックスにお任せあれ!(笑)

次回予告:りんごウォーズに隠された「秘密」



今回もけっこう長文になってしまったので(汗)、続きは次回にまわしたいと思います。というわけで、次回予告!

次回の「ありブラ」は、

・りんごウォーズに隠された「秘密」
・出来なかったことが出来るようになる「技術」
・ミドルウェアにとって「デモ」が大切な理由(ワケ)
・CRI社員は「コントローラの持ち方」が違う!?

といったテーマでお届けしたいと思います。

この2つのボタンの謎が、次回明らかに!?


…あ、UNITEでも質問されたんですけど、今回ご紹介したデモの名前がなんで「りんごウォーズ」なのか?という点について、最後にお答えしておきますね。

それは、デモに登場するキャラクターの名前が「りんご」だからです(笑)。iPhoneだから、りんご、というわけではないんです。

この「りんご」、CRIのマスコットキャラクターになったのは意外と古くて、実はいまのCRIの前身であるCSK総合研究所の時代に、ゲームプランナーの女の子が描いたものなんです。頭上にある「りんご」の部分は実はポシェットで、中には飴などのスイーツがいっぱい入っているという設定だそうです(笑)。

…というわけで、今週の「ありブラ」はここまで。
それでは、また次回の更新でお会いしましょう!

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幅朝徳(はば とものり)

株式会社CRI・ミドルウェア 商品戦略室 室長、CRIWAREエヴァンジェリスト。学習院大学卒業後、CRIの前身である株式会社CSK総合研究所に入社。ゲームプランニングやマーケティング業務を経て、現CRIのミドルウェア事業立ち上げに創業期から参画。セガサターンやドリームキャストをきっかけに産声を上げたミドルウェア技術を、任天堂・ソニー・マイクロソフトが展開するすべての家庭用ゲーム機に展開。その後、モバイル事業の責任者として初代iPhone発売当時からミドルウェアのスマートフォン対応を積極推進。ゲーム企業とのコラボでミドルウェアの特性を活かしたアプリのプロデュース等も行う。近年は、ゲームで培った技術やノウハウの異業種展開として、メガファーマと呼ばれる大手製薬会社のMR(医療情報担当者)向けのiPadを使ったSFAシステムを開発、製薬業界シェアNo.1を獲得しゲーミフィケーションやゲームニクスの事業化を手掛ける。ますます本格化するスマホゲームのリッチ化を支援するためにモバイルゲーム開発者におけるミドルウェア技術の認知向上のためエヴァンジェリストとしての活動に注力中。最近は、ウェアラブルやIoTといった領域での新規の事業開拓や未来のサービス開発を担当、業界の枠組みを超えた協業、世の中にとって全く新しい付加価値の実現のために日々奮闘中。

趣味は、クロースアップマジックと陶芸、映画鑑賞とドライブ、鳥類/フクロモモンガ/爬虫類の飼育、そしてもちろん、ゲーム。デジタルガジェット大好きなギーク。

幅朝徳Facebook
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CRI・ミドルウェア ウェブサイト
http://www.cri-mw.co.jp
《幅朝徳》
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