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【オールゲームニッポン】日本人の短所は「おだてに弱い」?(第13回)

毎週土曜日0時からお届けしている「安田善巳と平林久和のオールゲームニッポン」。ソニーは先日、PS4の販売台数が2000万台に到達したことを明らかにしました。今週はそんな話題からスタートし、日本人の弱さについて話が展開していきます。

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毎週土曜日0時からお届けしている「安田善巳と平林久和のオールゲームニッポン」。ソニーは先日、PS4の販売台数が2000万台に到達したことを明らかにしました。今週はそんな話題からスタートし、日本人の弱さについて話が展開していきます。



平林
 
プレイステーション4が史上最速で2000万台突破したそうですね。「日本にいると実感がない」という声をよく聞きます。


過去最速で2000万台を突破したPS4

安田
 
最近、世界と日本ではゲームの様子が違ってきています。そこで改めて「日本って何だろう?」を考えてみましょう。そんな目的でこの対談をはじめました。

土本
 
そうですね。

安田
 
この対談で浮かび上がらせたいのは勝ち負けではありません。それぞれの違いですよね。日本は、他の国とどこが、どうして違うのか。ですが「プレイステーション4が史上最速で2000万台」のようなニュースがあると、またぞろ「日本は遅れている」論調が出てくるんじゃないか。ちょっとヒヤヒヤしたというのが正直な印象でした。とはいえ、そんなに焦ることはないとも思っています。世界で成功していることは、日本市場にとって何のマイナス要素ではないじゃないですか。当然ですが、これはいいニュースです。時が経てば日本でも売れると思います。

平林
 
ところで、他の国の人との違いを明らかにするために……この対談では日本人の……どちらかといえば長所について触れてきましたが、逆に短所はどこだと思いますか?

安田
 
エズラ・ヴォーゲルが言ったことを真に受けてしまうこと、じゃないですかね。

平林
 
エズラ・ヴォーゲル! エズラ・ヴォーゲルって『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を書いた人ですよね。日本は世界一という、今、考えるとすごい題名の本です。発行された当時、私は高校生でした。


日本人を有頂天にさせた『ジャパン・アズ・ナンバーワン』

安田
 
そうです。高度経済成長をとげた日本を分析した本です。副題は「アメリカへの教訓」でした。日本人の平均読書時間はアメリカ人の2倍。数学や科学の知識も世界トップクラス。とても勤勉な国民性などと持ち上げられ、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』は79年のベストセラー本になりました。

平林
 
『ジャパン・アズ・ナンバーワン』は真に受けてはいけないような内容でしたか?

安田
 
本の内容に問題があったわけではないのですが、当時の日本のビジネスマンは自分たちを過大評価しました。日本は世界一だ、製品をつくって売りまくるぞと。やり過ぎたと思うんです。つくったモノの売り先は最大の貿易相手国であるアメリカです。すると何が起きるのか。アメリカ側から見ると市場開放しているのをいいことに、日本製品があふれて自国の企業は圧迫されます。日本に対する貿易赤字も膨らみます。そんな流れから、今度はジャパン・バッシング(日本叩き)が起きてしまいます。

平林
 
日米貿易摩擦とも言われましたよね。日本の自動車がバットのような棒でボコボコに壊される映像を見た記憶があります。

安田
 
さらに時が進むと日本経済はアメリカからの逆襲にあうわけですが、この話は専門的になるので置いておいて……つまり当時から学べる教訓は日本人の短所そのものでして。おだてられると弱いんです。

平林
 
おだてに弱い!(笑)。

安田
 
当時を振り返ると『ジャパン・アズ・ナンバーワン』ブームのあとから、歯止めがきかなくなったと思うんですね。日本人の基本的な気質はマジメですし、正義感も強い。こうした長所があるものの、おだてられると必要以上に突っ走ってしまう。そういう傾向、あるんじゃないですかね。

平林
 
おだて、ですか。確かに明治以降の近代史を「おだて」で見直してみると、いくつもの「やり過ぎ」をしているかもしれません。たとえば戦争に勝ったあとを、おだてられた状態に置き換えてみましょうか。日清戦争に勝ったあとの下関条約で、日本は遼東半島を割譲されました。ところが、ロシア、フランス、ドイツから三国干渉を受けることになります。日露戦争に勝ったあと、日本国内では帝国国防方針というプランが練られるのですが、陸軍は仮想敵をロシア、海軍は仮想敵をアメリカにしてしまって、のちに日本軍は陸に行くのか海に行くのか、戦略がバラバラになってしまいました。

安田
 
いろいろな事例があてはまりそうですね。

平林
 
ところで他の国の人、たとえばアメリカ人は、おだてに弱いなんてことは……いかにもなさそうですね(笑)。

安田
 
おだてに弱いアメリカ人というイメージはないですね(笑)。英語でディシプリン(discipline)という単語がありますよね。日本語では「統制」などと訳されます。コードオブコンダクト(CODE OF CONDUCT)、これは「行動規範」などと訳されますが、英語文化圏の人の思考はこうした定まったルールが優先されて、おだてのような感情に流されにくいように思います。

平林
 
おだてられると弱い。こう言ってしまうとネガティブに聞こえますが、他者がいることをいつも意識して、他者の評価を重んじる、これは日本人らしい特性ともいえませんか?

安田
 
もちろん、そうですね。日本人は常に自分と他者の関係を大事にします。自分の家族は元気だという話をするときに、わざわざ「おかげさまで」と挨拶をして、相手に気配りするのが日本人ですから。

平林
 
メールでは「いつもお世話になります」と相手に書かないと、なんか落ち着かないですしね(笑)。



(つづく)


■パーソナリティの紹介


安田善巳 (やすだ よしみ)
角川ゲームス代表取締役社長、フロム・ソフトウェア代表取締役会長。日本興業銀行、テクモを経て、2009年に角川ゲームスの設立に参画。経営者でありながら、現役のゲームプロデューサーとして『ロリポップチェーンソー』『デモンゲイズ』などを手掛け、現在は『Projectcode -堕 天-』『Projectcode -月 読-』の開発に取り組む。



平林久和(ひらばやし ひさかず)
インターラクト代表取締役社長。ゲーム黎明期の頃から専門誌編集者として従事。日本で唯一のゲームアナリストとしてゲーム評論、ゲーム産業分析、商品企画などの多方面で活躍してきた。著書に『ゲームの時事問題』『ゲームの大學』(共著)など。「今のゲームを知るためには、まず日本を知ることから」が最近の持論。

《平林久和》
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