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【CEDEC 2014】Oculusで優れたコンテンツを作るための現実的な解とは?先達たちが議論

ゲームのR&Dは一般に大手ゲーム会社で実施されます。しかし、ことバーチャルリアリティ(VR)の分野ではコミュニティが先行するという、これまでのゲームの歴史にはない、逆転現象がおきています。

ゲームビジネス 開発
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ゲームのR&Dは一般に大手ゲーム会社で実施されます。しかし、ことバーチャルリアリティ(VR)の分野ではコミュニティが先行するという、これまでのゲームの歴史にはない、逆転現象がおきています。

理由は簡単でオキュラスリフト(Oculus Rift)やプロジェクトモーフィアス(Project Morpheus)といったデバイスに注目が集まっても、市場が存在せず、マネタイズができないからです。いわば今のVRは無線技術の創世記にアマチュア無線家が技術を開拓したように、コミュニティによる知見蓄積が先行している希有な分野だといえるでしょう。

CEDECで実施されたパネルディスカッション「オキュラスパネル・ディスカッション ~オキュラスリフトを用いたゲーム開発~」は、こうしたコミュニティの知見がプロのゲーム開発者に対して共有された好機となりました。

左から石井勇一氏(Seeding Sofech代表取締役)、伊藤周氏(ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン)、近藤義仁氏(XVI Inc.代表取締役)、井口健治氏(Oculas Festival In Japan)。桜花一門氏(Ocufes代表)


モデレータはセガ第一研究開発部の渡邊成紀氏。パネリストはSeeding Sofech代表取締役の石井勇一氏、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの伊藤周氏、XVI Inc.代表取締役の近藤義仁氏。Oculas Festival In Japanの井口健治氏。Ocufes代表の桜花一門氏です。オキュラスリフトのクラスターで、その名を知られたエンジニアが集結しました。

パネルディスカッションは大きく「考慮すべきデザインポリシー」「ベスト入力インターフェース」「オキュラスあるある大辞典」の3パートで行われました。まずデザインポリシーでは「フレームレートは75FPSを死守」「3D酔いの対策にはフレームレートを上げる」「プレイヤーの視覚や体験とカメラの向きや移動を一致させる」「立体音響は効果的」「HUD類の表示ではダイエジェティックUI(ゲーム内のオブジェクトにHUD類を埋め込む方式)を活用するなどして、世界観を損なわないように気をつける」などの発言が飛び出しました。

特にフレームレートは高ければ高いほどよく、「DK2では72FPS以上でなければ残像感を抑えるモードが働かないため、違いがはっきりわかる。製品版ではさらにFPSを上げることが求められる可能性もあるため、開発時は可変フレームレートで組んでおく方が良い」(井口氏)といいます。また音響デザインについて近藤氏が「背後からヒロインが声を出しながら駆け寄ってくると、ほとんどの体験者は後ろをふりむく。立体音響で視線の誘導ができる」と指摘すると、伊藤氏も「バイノーラル録音を使用して、耳元から囁くような声を発するのも効果的」と補足していました。

またベスト入力インターフェースでは、両手の動きを検出するリープモーションの効用が話されました。近藤氏はアタッチメントを使ってオキュラスリフトにリープモーションを装着し、ゴーグルの前で手を出して操作するデモを作ったところ、予想以上に自然な操作ができたとコメント。同時に画面上に仮想の腕を表示させ、実際の手の動きにあわせて移動させれば、自然なUIが作れると話しました。伊藤氏も「画面に手が出ると安心感が高まる。何らかのゼスチャーを指先で行うことで入力もさせられる」と、リープモーションの可能性を示唆しました。

一方で「VR空間上のモノに触れない」など、入力デバイスにはさまざまな課題が存在します。全身にフォースフィードバック機能が付いたスーツなどが理想ですが、コスト面などで現実的ではありません。そのため現実世界にある要素をうまく活用して、擬似的な触覚体験を提供することが求められるとのことです。感触インターフェースで初音ミクと握手できる「Miku Miku Akushu」を開発した近藤氏は「人は目の前にキャラクターが表示されると、必ず触りたがる。ここで実際に触覚を感じられれば、一気に実在感が高まる」とコメント。井口氏は自分の腕や机の上にボタンの位置を設定して、これらを押すことで操作するなどのアイディアを語りました。

「オキュラスあるある大辞典」では、これ以外の雑多なトピックが議論されました。「開発環境」についてはユニティが圧倒的で、近藤氏もダイレクトXでC++による開発を行ったことがあるものの、手間を考えてユニティに完全移行したと解答。また井口氏はオキュラスリストの開発にはユニティのプロ版が必要になるため、ぜひフリー版でも開発ができるようにして欲しいと要望を出しました。これに対して伊藤氏は「本社には要請を伝えてあります」と解答し、可能性について示唆しました。

高速化については桜花氏が「ドローコールを減らす、LODやカリングを活用する。CPUよりGPUの高速化をめざす」など、PS2時代のノウハウが有効だと指摘。井口氏は「GPUの高速化のためにグラフィックカードの二枚差しをすると同期の問題などで遅延が発生することがあるため、割けた方が無難」と補足しました。

他に座るよりも立って体験する方がコンテンツの自由度が増すが、その場合は補助員が後ろにつくことが必須だとしました。実際に石井氏があるコミュニティでスキージャンプのデモを体験してもらったところ、ほとんどの人が後ろにジャンプしてしまい、背中から倒れた人も出たため、必ず後ろで支えるようにしたそうです。

最後に「企業でプロジェクトとして通すには?」という質問には、近藤氏が「マネタイズが困難なため、まずは既存のアセットを使ってVR空間に入っていくデモを社内プレゼン用に作ると良いのでは?」とコメント。そのうえで格闘ゲームにVRを使った「観戦モード」をつけるなど、オプション機能から進めていくと企画が通りやすいのでは、と語られました。
《小野憲史》
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