天津さんはオリジナルブランドA DEGREE FAHRENHEIT (エー・ディグリー・ファーレンハイト)を手がける、ニューヨーク在住のデザイナー。その天津さんが今回手がけることになったのが、2012年に発売されたi-style Project「VOCALOID3library」の蒼姫ラピス(以下、ラピス)です。蒼姫ラピスはさまざまなクロスメディア化を視野に入れて作られたキャラクターで、「記憶を失った身長15cmの妖精族の少女。控え目で健気な性格だが芯は強い。生粋の天然ボケだが、本人には自覚はなく、常にマイペース。歌声には「命を吹き込む力」を秘めている」という個性的な特徴を持っています。
そんな蒼姫ラピスが現実世界のファッションと出会うとはどういうことなのか。
天津さんはアニメーションも含め、バーチャルの服飾を手がけたと言います。もともとファッションショーにいろんなコンテンツを使いたいと考えていたところにYAMAHAからのコラボでスピーカーをショーに採用したのがはじまり。そういったなかで、バーチャルで蒼姫ラピスのようなものがあるという話から、まずARの部分からコラボを始めていったそうです。
ショーにおいては服自体が主役という場面が多いものですが、今回はキャラクターありきで服飾を制作していくため天津さんは「人間とは違うファッションを表現したい」と、このプロジェクトを進めてきたと語ります。制作方法としては、まずラピスの楽曲を聴きそこからデザインを始め、そのデザインをまた楽曲制作を行ったクリエイターが見て楽曲をよりフィットするものに作るというサンドイッチ方式をとったとのこと。
そうして出来上がった服はドレープがたやゆらめく女性的な印象が強く、これは天津氏が得意とするA DEGREE FAHRENHEITでのエレガントな女性像が表現されたデザイン。靴やヘッドドレスもデザインから制作を行い、ラピスのヘッドドレスは特徴として残っています。
今回特徴的な試みとして、天津氏はラピスがちゃんと服を着ている感じを演出するために、洋服のパターンを引いてからラピスに着せ付けています。洋服は現在も設計を引いてそれを生地におこして裁断していくというアナログな形がとられていますが、ラピスのようなデジタル上のキャラクターに関しては画面のなかでどんな洋服でもデジタルで着せることが可能。そのため、これまでコスプレイヤーは面で作られているキャラクターの衣装を再現することに苦労していていましたが、天津氏のような手法をとれば実際に服を制作しても違和感なく着ることができ、さらには型紙販売などのビジネスも広がってきます。現にラピスは設定上身長15cmですが、174mの女性を想定してデザインがされています。
この手法を利用するファッションデザイナーが多くなってくれば、バーチャルのファッションデザイナーを目指すような、ボカロPならぬファッションPが出てくる可能性も多いにある可能性が語られトークは終了しました。
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