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【gamescom 2011】開発スタッフが語る『The Elder Scrolls V: Skyrim』誕生秘話

大盛況となっているgamescom2011。その中でも特に話題となっている作品のひとつが『The Elders Scrolls』シリーズ最新作の『The Elder Scrolls V: Skyrim(以下、Skyrim)』です。

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インタビューに快く対応してくれたPete Hine氏
  • インタビューに快く対応してくれたPete Hine氏
大盛況となっているgamescom2011。その中でも特に話題となっている作品のひとつが『The Elders Scrolls』シリーズ最新作の『The Elder Scrolls V: Skyrim(以下、Skyrim)』です。

前作はオープンワールド型RPGを日本国内で広めた『オブリビオン』です。今回は、「The Elders Scrolls」シリーズに、長きに渡って携わってきたBethesda Software Public Relations and MarketingのVice PresidentであるPete Hine氏にお話を伺いました。

幾人かは『オブリビオン』の開発直後である06年から携わり、『フォールアウト3』終了後の08年から本格的な開発がスタートしたこのプロジェクトは、現在100人もの開発スタッフと、40-50人のQAスタッフとで開発の真最中。では早速ゲーム内容について聞いていきましょう。

―――トレイラーを見る限りドラゴンが重要な役割を果たすようも見えますが
Pete Hine氏(以下、Pete): その通り。本作のテーマが「ドラゴンの帰還」になるんだ。長きに渡って出現しなかったドラゴンが突然Skyrimに現れ街や人々を攻撃する。主人公は、ドラゴンの血を受け継ぐもの-すなわち、世界を救う存在と予言されていた人物としてSkyrimの世界を探訪しなければならない。

だから、本作を開発するにあたり多くのクリーチャーを新たに追加したけど、最も重要なのがドラゴンなんだ。僕らは非常に長い時間をかけてドラゴンを作り込んだよ。コンセプトをつくりあげていった時から、チームとしてドラゴンがどんな存在になるべきかを考えた。どの程度の大きさなのか、どのように動くのか、更にドラゴンという存在がゲーム内にどのように存在することが世界観により合致するのか、という点をね。しっかりと作り込むだけでなく、従来の作品とは全く違った形で登場させようと考えたんだ。

特に事前にスクリプティングがされているのではなく、ダイナミックで、状況に応じて行動パターンを変化させ、プレイヤーが予想出来ない動きを作り上げられるようにこだわった。ドラゴンが出現した時、プレイヤーが如何に対峙するかでドラゴン側のリアクションも変わっていく。どう飛行し、相手を攻撃するかとかね。本当に大変だった。でもやって良かったって思ってるよ。ドラゴンとの戦いは、ゲーム中で特に面白くてプレイヤーにとって一つのチャレンジになる部分だね。

―――ドラゴンは多くのゲームや映画などで表現されてきましたが...
Pete:一般的なゲームのように特定の状況下でドラゴンを出現させることは容易さ。でも僕らのゲームはオープンワールドなんだ。そしてドラゴンはこのオープンワールドの中の一部にならなくちゃいけない。当然様々なメディアでドラゴンは描かれてきたから、これらから学んだ部分もあるけど、僕らのゲームにとって最もベストな形でドラゴンを作り上げることが出来たと思っているよ。

―――ドラゴンをはじめとした巨大クリーチャーの大きさはどの程度でしょう?
Pete:すごく巨大だね。ドラゴン以外にもマンモスゾウやジャイアントも出るしね。その中でもドラゴンが最も巨大だけど。ただ、彼らの上にジャンプして倒すといったことは出来ないんだ。

―――次はゲーム性についてです。前作『オブリビオン』と比較して本作はどのような違いがありますか?前作では全てをやりつくしたという感じもしますが...
Pete:もちろん。でも、チームとして改めて話し合ったとき、The Elders Scrollの世界観はまだまだ、みんなに楽しんでもらえる要素があると思ったんだ。ストーリや訪れる事が出来る場所とかね。あと、僕らはゲームを開発する度にゲームのメカニクスやダイナミック性を常にゼロから作り直すんだ。続編を開発する際はこれらをそのままに、単に新たなストーリーのみを追加、なんてことはしない。

―――では、『オブリビオン』で使用した、Gamembryoエンジンも...
Pete:全く新しいエンジンを開発したよ。Creationエンジンっていうんだ。この辺を間違って認識されてはこまるんだけど、全てのゲームエンジンは僕らが自社内で開発している。『オブリビオン』ではGamembryoを使ってレンダリングした。物理パートはHavocを使っているけどね。

『Skyrim』については、レンダリング部分を改めて開発することにした。Gamembryoを改善したのではなく全部ゼロから作り込んだんだ。巨大なオープンワールドを開発し続けてきた結果、自分たちで何をしたいかが明確になった。だからそれにあったエンジンを僕ら自身で開発することには意味があるんだよ。

これまでも今後もエンジンそのものを公開したりすることはないけど、ゲーム開発で活用してきたCreation Toolsは、その一部をユーザーに公開する予定さ。これで彼らの趣向に合わせたステージを自ら開発し他のユーザーと共有することが出来るようになるからね。これはこれまでと同じだよ。エンジンは公開する気はないけどね。

―――戦闘システムはどうでしょう?
Pete:戦闘システムも刷新したよ。両手に武器を持たせることも可能になったし、武器自体も別々に持てる。戦士専用武器と、魔導師用具の双方を持つこともね。だから前作とはゲームプレイは全く違ったものになっているよ。 

―――戦闘システム以外はどうでしょう?
Pete:もちろん変えた。料理のつくり方から武具・武器の生成、魔法の唱え方までね。

―――冒険者が体験する世界に変化はありますか?
Pete:『オブリビオン』から『Skyrim』の開発を進めるにあたってまず考えたのがそこなんだ。雪原や山岳地帯をかなり作り込んだよ。前作ではあまり入れられなかったからね。あと、森林地帯や、ツンドラ地域とかも入れた。都市の作り込みも今作と前作では全く違う。だから前作のファンも全てが新しいと実感してくれると思うな。

―――キャラクタークリエーションについてはどうでしょう?
Pete: これは前作とあまり変化はないね。プレイヤーは何時間でも費やすことが出来るよ。パラメータが数十種類あるからね。頬骨の高さから口の大きさまでカスタマイズ出来るんだ。

―――先ほど、多くのスタッフが『フォールアウト3』開発終了後にプロジェクトに参加したと言われましたが、開発経験が本作の開発に如何なる形で活かされましたか?
Pete:今回はじめて『フォールアウト』シリーズでおなじみのPerksを「The Elders Scrolls」シリーズでも導入したんだ。これで、これまで以上に能力のカスタム化が出来るようになったんだよ。Perkシステムの導入で、最初は誰もが同等の能力やスキルレベルからはじまるプレイヤーが、その後どのような武具や武器を選び、何をするかでどんどん変化する。片手武器なのか、両手持ちの武器なのか、戦士専用武器と魔導師用具を組みあわて使うのか、盾を使用するか等、如何なる組み合わせかがプレイヤーの能力を決定づけていくんだ。使用状況に応じて、Perksで変更できるスキルも変わってくる。

―――では、他のゲームのようにクラスや職業をあらかじめ選んだりすることは?
Pete:従来のRPGではそこが問題だったんだ。一度職業を選ぶともうその職業に縛られてしまう。『Skyrim』ではもし途中で、ある職業が使っている武器や、魔法がクールだなと思ったら、その場ですぐに方向転換出来る。これによってこれまでの経験を失うことなく新たな経験を追加することが出来るんだ。改めてゼロから新キャラクターを作り上げるという必要性はないんだ。

―――『ファールアウト3』では、倫理的判断を迫られるシーンなどがありますが、本作ではどうでしょうか?
Pete:『フォールアウト3』で導入したようなカルマシステムは『Skyrim』には導入していないよ。だけど、「フォールアウト」の世界に荒野の正義を守る存在がいたように、「Skyrim」にもある都市や村落に踏み込むと、そこには警察のような役割を果たすNPCが存在する。もし犯罪を犯せばそのキャラクターによって制裁が加えられることになるんだ。また、キャラクターの行動にNPCも反応する。また、プレイヤーがどのような役割を演じたいかにもよって、キャラクターも変わっていく。狡猾な暗殺者になりたいのか、高貴な勇者になりたいのか、とかね。ただ、システムとして善悪をユーザーに選択させるというものは無いよ。

―――実際Skyrimの大きさはどの位ですか?
Pete: 冗談かと思うぐらいでかいね。必要以上に大きくしてしまったかもしれないとまで思ってる。『Fall Out3』の世界と比べて数倍。大きさ自体は『オブリビオン』の世界と同等だけど、その空間の中により多くのコンテンツが詰め込まれているんだ。本当に大きな世界だよ。

―――Bethesdaとしてオープンワールドというジャンルをどう定義しますか?
Pete:少なくとも僕らは、オープンワールドゲームを開発するのであれば、プレイヤーが如何なる行動に出るのかその全てを想定しなくちゃならないと思う。これは僕らがこのようなタイプのゲームを長年開発してきて改めて実感したことさ。もし、僕らがユーザーに「君たちはこの世界でなんでも出来る」と宣言すると、ユーザーは本当になんでもやろうと試すんだ。「えーっとこいつも攻撃出来るのかな?」、「この馬を盗めるのかな?」、「この剣は持てるのかな?」とかね。・彼らが試せる事はなんでもね。だから僕らや、QAの責任は、実際に全てを試して如何なるプレイスタイルでもゲームがちゃんと成立することを確認しなくちゃいけない。だから、クエストをデザインしたり、優れたダンジョンを開発することよりも、無限大に広がる可能性の全てをしっかり実現させることを保証することが最も大変な仕事なのさ。様々なプレイヤーの考え方まで想定しなくちゃいけないからね。

―――これだけの巨大な世界を自社だけで開発したんですか?
Pete:過去の経験に基づいて、いくつかの部分ではアウトソーシングのパートナーを使ってるよ。これだけの大きなゲームとなると何十種類という皿やカップ、ボウルも作らなくちゃならない。だからこれらのタスクについてはアウトソースしている。当然カップやボウルの中でもインハウスで制作しなくちゃならないモノがある場合もあるけどね。とにかく、状況に応じてアウトソーシングはするよ。僕らの視点から見て優秀だと感じたところとはね。どの場所に開発拠点があるかはあまり関係ないんだ。ただ、アウトソーシングについては、プロジェクトチームごとに決断するべきことだと思ってる。

―――では、最後に読者のみなさんにメッセージをお願いします
Pete:日本のファンの皆さん。Bethesdaのゲームをいつもプレイしてくれてありがとう。『Skyrim』も楽しみにしていてください!

―――ありがとうございました!
《中村彰憲》
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