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【TGS2007】携帯電話ゲームセッション〜「高機能化」と「カジュアル化」のふたつのトレンドを追う〜

今年の東京ゲームショウで目立った事象として、携帯電話用タイトルの増加が挙げられます。Xbox360、プレイステーション3、Wiiに続く第4のプラットフォームになったと言えるでしょう。『携帯電話ゲームセッション』では、「高機能化」と「カジュアル化」のふたつのトレンドを追います。リレートークではNTTドコモ、スクウェア・エニックス、モバゲーのディー・エヌ・エーから代表者が登壇しました。モデレータは日経エンタテインメント! 編集長の大谷真幸氏です。

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今年の東京ゲームショウで目立った事象として、携帯電話用タイトルの増加が挙げられます。Xbox360、プレイステーション3、Wiiに続く第4のプラットフォームになったと言えるでしょう。『携帯電話ゲームセッション』では、「高機能化」と「カジュアル化」のふたつのトレンドを追います。リレートークではNTTドコモ、スクウェア・エニックス、モバゲーのディー・エヌ・エーから代表者が登壇しました。モデレータは日経エンタテインメント! 編集長の大谷真幸氏です。

日経エンタテインメント! 編集長の大谷真幸氏


■[NTTドコモ]右肩上がり、年間450億円のゲーム市場

NTTドコモからはコンテンツ&カスタマ部コンテンツ担当部長の山口善輝氏が登壇しました。「月間の売上を出したら、あまりにも数字が大きくて年間売上だと勘違いされました。だから今回は初めから年間売上の数字を大きく表示します」そこから飛び出す数字があまりにも大きく、携帯電話ゲーム市場の大きさと成長を強く印象づけました。

NTTドコモ プロダクト&サービス本部
コンテンツ&カスタマ部コンテンツ担当部長 山口善輝氏


現在のiモード市場のプロフィールは契約数4770万、コンテンツプロバイダーが2800社、サイト数は約10000に上ります。そのiモードコンテンツの市場規模、つまりドコモのiモードに関する売上は年間で約2010億円、月間で182億円です。この数字をグラフ化すると順調に右肩上がりのラインを描いています。この好調の理由は、パケホーダイ契約の増加、FOMA904シリーズで対応機種が増えたHDSPAによる端末スピードの高速化、端末の高機能化の相乗効果によるものです。端末の高機能化には今年デビューしたFOMA端末に搭載されているメガアプリ、直感アプリも貢献しているとのことです。

さて、iモードコンテンツのうち、ゲームに分類されるタイトルの市場規模は年間約450億円、月間で約40億円です。iモード市場全体の四分の一をゲームが担っていることになります。マイメニューにゲームを登録しているiモードユーザーは1122万人となっており、やはり全体の四分の一近い人数です。ユーザーの世代別分類では20代前半から30代前半が多く、次いで50代、10代という数字になっています。50代が多いことは意外ですが、山口氏は「おそらく子供の携帯電話代を親が負担している。統計ではこのグラフで正解だが、実態として50代の数字のいくらかは10代にカウントされるぶんだろう」と説明しました。

ゲームコンテンツでもっとも人気のある分野はミニゲームで、2位のロールプレイングゲームを大きく引き離しています。「誰でも楽しめるミニゲームは順調に推移している。これはマイメニューに表示される広告が貢献している。iメニューではアクセスランキング順にリストアップされるから、新規参入した場合はリストの下のほうになってしまい、どこにあるか解らない。そこで広告で目立たせる。この広告枠は月間で2000万円と高額だが、それでも採算が合うほど収益があるようだ」と分析しました。高度で嗜好性の高いRPGゲームや、アーケードやPCと連動するタイプの成長も著しいようです。

FOMAのセールスポイントになっているメガゲームはこの1年で対応端末が1100万台を突破しました。903iシリーズで採用されたメガゲームは、プログラム領域が1MBも使用でき、外部メモリーカードにもデータの移動が可能です。処理速度も高速化され、2Dグラフィックは約5倍、3Dグラフィックは約3倍の性能アップになりました。これにより、コンシューマーゲームタイトルの移植が進み、さらにユーザーを獲得する傾向にあります。

904iシリーズの一部で対応している直感ゲームは、携帯電話に内蔵されたモーションセンサーを利用し、携帯電話を傾ける、振るなどの動作で遊べます。山口氏は「Wiiがヒットしてくれたおかげでモーションコントロールの仕組みが社会に浸透した」と偶然ながら好調となった理由のひとつを明かしました。直感ゲームは現在20社が83タイトルを提供しています。対応ゲーム端末は3ヶ月間で110万台を突破し、ダウンロード数は50万を超えています。この勢いはメガゲームの3倍以上とのこと。直感ゲームは10代と20代のユーザーが多く、特に女性の支持が強いそうです。

NTTドコモではメガゲームと直感ゲームに注力としていくとのこと。これから携帯電話ゲームに参入するなら、このふたつのキーワードが重要です。余力があればマイメニューに広告を出す。これで完璧だと言えそうです。

■[スクエニ]OpenGLのフルアニメーション対応ゲームが出る!

スクウェア・エニックスは携帯電話のハイスペックを積極的に取り入れてきました。「家庭用ゲーム機では4年に一度のペースで新ハードが登場する。しかし携帯電話はこの4年間で数段階の進化を遂げた」とモバイル事業部長の原口洋一氏は語ります。

スクウェア・エニックス コーポレートエグゼクティブ
モバイル事業部長 原口洋一氏


スクウェア・エニックスの携帯電話ゲーム事業は、会社合併前のエニックスが2000年、スクウェアが2002年です。キラータイトルの「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」の移植やキャラクターを使って有利な展開をしてきました。現在は3キャリアに対して28サイト、40タイトルのコンテンツを提供しています。また、ゲームの着メロ、着うた、待ち受け画面やFLASHムービーなども扱っており、ゲームに限らずキャラクタービジネスにまで昇華しています。

続いて原口氏は、携帯端末の進化に呼応したゲームを提供した例をいくつか挙げました。例えば2002年にmova503シリーズ向けに提供した「ドラゴンクエスト モンスターズi」はアプリ容量が20KBで画面サイズは128×128ドットでした。しかし2006年にFOMA901シリーズ向けに提供した「ドラゴンクエスト モンスターズ モバイル」はアプリ容量が500KBで画面サイズは240×240ドットです。画面解像度は約4倍に、アプリ容量は25倍になりました。また、2004年には「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」それぞれの第一作を携帯電話用に完全移植しました。2005年にはそれぞれの第2作目を移植しました。「ドラゴンクエストII」は総容量が500KBを超えたため、前編と後編に分割して移植を達成しました。

携帯電話の特徴を活かし、携帯電話ならではのゲームも開発しました。「BEFORE CRISIS FINAL FANTASY VII」では、携帯電話のカメラ機能を使用しています。カメラで撮影したデータの色成分を分析し、ゲーム内アイテム「マテリア」に変換します。青い成分が多ければ氷系、赤い成分が多ければ炎系の魔法になります。また、ネットワークを使って遊ぶモードも搭載しました。さらにiエリアという位置情報サービスを利用したモードも搭載しました。プレイヤーと敵キャラクターの実位置を仲間と連携して、敵を倒すモードです。

携帯電話用ゲームの開発は、携帯電話に内蔵されたメモリ容量の戦いだったそうです。その戦いが和らぐきっかけがメガアプリです。これをきっかけに3Dゲームの進化が始まりました。現在はさらに新しい表現を求めて、OpenGL ESによるフル3Dゲームを実現させようとしています。フルボイス仕様のゲームも誕生しました。また、2007年からはアーケードゲームとも連携しています。

携帯電話の進化と共に新しい表現方法を模索するスクウェア・エニックス。今後も革新的なゲームがたくさん登場するでしょう。

■[モバゲー]ついに明かされた無料ゲーム戦略

2006年7月にスタートした『モバゲータウン』は現在会員数が700万人です。無料ゲームで集客し、SNS機能で定着を計る戦略が功を奏しました。8月のページビューは142億に達します。ディー・エヌ・エー取締役の守安功氏は「ケータイSNSではナンバーワンになった。一日あたりのページビューは大手ポータルサイトやmixiを抜いているはず」と自信を見せました。

ディー・エヌ・エー取締役
ポータルコマース事業部長 守安功氏


モバゲーはキャリアに登録していない、いわゆる「勝手サイト」です。手軽で高品質なFlashゲームとネット接続不要の単独アプリを多数用意して会員を募ります。会員は次のステップとして対戦型ゲームを体験し、他の会員と交流を始めます。そこでSNS機能が頭角を現します。アバター、チャット、掲示板、日記、サークルなどの機能を使って交流を助け、クチコミによる新規会員の獲得に繋がります。

モバゲーの特徴の第一は高品質な無料ゲームが100種類以上もあるところです。対戦ゲームで他のユーザーと交流するきっかけを作り、SNS機能へと誘導しています。しかし、対戦ではない単独のゲームにも交流の仕掛けが巧みに用意されています。例えば街でゴルフのように空き缶をショットするゲームでは、ある場所をヒットすると隠しキャラが登場し、そこにヒットさせると大量得点を獲得できます。「スコアランキングを見ると、通常の遊び方では有り得ないスコアの人がいる。その人に興味を持ってプロフィールをチェックしたり、直接コンタクトしたり、ゲーム攻略の掲示板に参加したりする」守安氏は説明しました。ゲームが楽しい、交流するともっと楽しい。そういう仕掛け作りが会員数獲得の仕掛けです。

SNS機能は携帯電話の小さな画面に様々な機能を盛り込んでいます。プロフィールのいちばん上に表示されるパーツはアバターです。まずアバターを見せる。これが課金アイテムの購入を促すきっかけになります。しかし、現金による直接的な売上だけではなく、モバゴールドというサイト内通貨を介在させることで会員数増加や広告ページビューの増加なども引き起こす仕組みです。

仮想通貨モバゴールドは、アバターやアバターのアクセサリの購入、"アバターの部屋"の家具の購入、モバガチャや合成マシーンなどイベントの代金として消費します。モバゴールドを無償で獲得する方法はSNS機能で友人を招待する、広告をクリックする、スポンサーサイトに登録するなど様々な方法が用意されています。また、ショッピングする、着うたをダウンロードする、アバターのアイテムを購入した場合などでは、支払った現金に応じてモバゴールドが還元されます。モバゴールドが流通するほど会員はアバターを楽しみ、会員数が増え、広告の価値を高め、現金収入を増やすわけです。

モバゲーはサービス開始当初から10代を中心にクチコミで会員を拡大してきました。これは大手SNSサイトmixiが18歳以上という建前だったため、結果的にスキマに入り込んだ格好になりました。現在のユーザーのうちハイティーンは人口の半分がモバゲーに参加する勢いです。ことし2月からはテレビCMや交通広告を展開し、20代以上の会員を獲得しました。現在は会員の半数が20代以上、男女比は6:4と女性が多くなっています。

モバゲータウンの収益構造は、膨大な会員数を背景としています。バナーやメルマガによる広告収入、アフィリエイト広告収入、アバター販売収入の3つの柱があり、安定的な収益構造となっています。また、若い会員数を持つことから飲料メーカーなどナショナルクライアントとのタイアップも成功しました。24時間テレビとのタイアップゲームでチャリティーに参加できるなど、企業イメージの向上も図っています。

モバゲータウンの今後の展開として、まずはアイテム課金タイプの本格的なMORPG『マスターオブファンタジア』をリリースします。また、会員がコンテンツを投稿し流通させる「クリエイターサービス」を開始し、新しい収益の柱とする計画です。現在のクリエイター登録は37万人。小説は27万タイトル、音楽は1万タイトルが公開されています。仕様説についてはコンテストを開催し、出版社と提携して書籍化する予定です。

モバゲーはゲーム→SNS→コンテンツ流通→投稿コンテンツと取り扱いテーマを拡大してきました。今後はニュースや情報系コンテンツを増やし、モバイルNo.1ポータルサイトを目指します。

『携帯電話ゲームセッション』では景気のよい話が多く、急速に拡大する市場のパワーを感じました。もはやニッチではなく、巨大なオンラインゲーム市場の一翼を担っているといえそうです。
《杉山淳一》
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